PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「アイデアの発想法と思考力のメソッド」

ダイナマイトブラザーズシンジゲート代表/アートディレクター/エディトリアルデザイナー

野口 孝仁 氏Takahito Noguchi

PROFILE
1999年、株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート設立。「ELLE JAPON」「装苑」「GQ JAPAN」「Harper’s BAZAAR日本版」「東京カレンダー」「FRaU」など人気雑誌のアートディレクション、デザインを手がける。現在はエディトリアルデザインで培った思考を活かし、老舗和菓子店やホテル、企業のブランディング、コンサルティングなど積極的に事業展開している。著書「THINK EDIT 編集思考」、(日経BP)TV出演「トップランナー」(NHK)。東京デザインプレックス研究所講師。

第1部:講義「アイデアの発想法と思考力のメソッド」

講義1

本日のプレックスプログラムは、ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート代表の野口孝仁さんをお迎えします。学生時代に出会った雑誌から影響を受け、エディトリアルデザインの道に進んだという野口さん。雑誌のジャンルに縛られず、一冊を通して1つのストーリーのように作り込むことをモットーにしていたそうです。現在はエディトリアルデザインで培った思考を活かし、ブランディングやコンサルティング等までご活躍の幅を広げられています。今回はそんな野口さんに、アイデアの発想法と思考力のメソッドをご教示いただきます。

講義2

まずはアイデアの発想法について、実際に依頼があったという歯科医院のブランディングを例にお話しいただきます。クライアントから「歯科医院の開業にあたって他との差別化をはかりたい」という依頼があり、まずは「治療を怖がる子どもたちが歯科医院にポジティブな印象を持つにはどうしたら良いか」という視点でアイデアを考えたそうです。しかし、外見や雰囲気をいかに楽しい空間にしたとしても、治療に対する根本的な恐怖心は解決できないという問題がありました。

講義3

この依頼をさらに深掘りした結果、野口さんは歯科治療の先進国フィンランドに習い、予防歯科を主軸とするブランディングを実施しました。学校をイメージした治療室や、虫歯予防の知識を学べるオリジナルグッズなど、通うことが楽しくなるような仕掛けを考案。「トレンドや類似サービスなどを徹底的にリサーチすることも大事です。限られた時間でも良質なインプットをすれば、そのスピードから出るアウトプットはいいものになります」と野口さん。クライアントの要望を深く理解し、問題点を最後まで追究する大切さが伺えます。

講義4

「アイデアのバリエーションを豊富に作ることも大事です」と話してくださったのは、時計の広告撮影の体験談。バカラグラスと腕時計を一緒に撮影する予定が、実際に届いたバカラグラスが割れていたというハプニングがあったそうです。ここで野口さんは「あくまでもグラスの透明さが大事なので、壊れた感じも逆に印象的になるのでは?」と考え撮影を続行することにしました。「撮影現場ではハプニングがつきものです。きちんとしたイメージを持って撮影に臨み、さらに余分にアイデアを持っておくことも優秀なクリエイティブディレクターとしての要素の1つです。」

第2部:ワークショップ「アイデアの発想力を鍛えるワークショップ」

ワークショップ1

後半はアイデアの発想力を鍛えるコツをワークショップを通して学びます。「アイデアはクリエイティブの9割を占め、実際の現場では限られた時間でより多くの企画案を出すことが求められます。質よりも量を優先してみてください」と野口さん。まずはお題となる水平線が映る写真を見て、連想される言葉をなるべく多く書き出します。続いて同じ写真からコピーを考えていきます。「最初に出したワードを掛け合わせると文章になり、コピーのアイデアが見えてきます。このワークショップを通して、自分の常識の中にはないアイデアに出会ってみてください。」

ワークショップ2

次のワークショップでは、架空のサウナ施設「ととのうサウナ」のロゴとタグライン(商品やサービスへの思いやビジョンを身近な表現で端的に表現した「合い言葉」)を考えて発表します。「頭で考えず、ひたすら手を動かすことがポイント」と言う野口さんが絶賛したのは、言葉遊びの一種であるなぞかけをイメージした学生のアイデア。タグラインは『あなたとかけてサウナととく、その心は』、ロゴは擬人化したサウナのキャラクターがサウナ椅子の上に座布団を敷いて座っているイメージで作成していました。

ワークショップ3

最後に行ったのは、インタビュー力を鍛えるトレーニング。様々なお題に対して、学生同士でお互いになるべく多くの質問を投げかけるというものです。野口さん曰く、新しい発見をしてアイデアを生み出すためには、どんなお題に対しても瞬時に多くの質問が思い浮かぶ体質になることが求められるそうです。「ただヒアリングをするだけではなく、インタビューの質もとても大切です。このような場で他の学生の質問を聞くことも、自分には考えられない発想に触れられてそれがアイデアの発想力に繋がります。」

総評

最後に野口さんからメッセージをいただきました。「最初は実用に堪えるアイデアがなかなか出ないかもしれないのですが、失敗を恐れないでください。日頃から何を見聞きして何に興味を持つかが大事になってきます。そこから得た発見を咀嚼して、深く深く追求していく作業が実はクリエイティブな仕事で大事な部分なのです。ぜひ挑戦してみてください。」野口さん、本日はありがとうございました。