PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「雑誌ができるまで」

ダイナマイトブラザーズシンジゲート代表/アートディレクター/エディトリアルデザイナー

野口 孝仁 氏Takahito Noguchi

PROFILE
アートディレクター。マガジンハウスにて「ポパイ」のデザインを担当。その後、有限会社キャップに4年間在籍。99年、ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケートを設立。「GQ JAPAN」「リビングデザイン」などを手がける。現在は「東京カレンダー」「FRaU」「美術手帖」など多数の雑誌デザインを中心に、ファッションブランドの広告やブランディング、スマートフォン/iPad用アプリ・電子書籍やウェブサイトのデザイン・制作を手がける。2006年One Showメリットアワードを受賞。2009年NHK「トップランナー」に出演。東京デザインプレックス研究所講師。

第1部:講義「雑誌ができるまで」

講義1

今回は、プレックスプログラム登壇回数が最多の、野口孝仁さんにお越しいただきました。野口さんは当校のデザインラボの講師も担当しています。日本のエディトリアルデザインを牽引するアートディレクターとして、雑誌はもとより、エディトリアルの他にも様々な分野で活躍されています。野口さんは受講生にも大人気で、毎回野口さんのプログラムには多くの受講生さんが参加されていますが、今回もたくさんの受講生で賑わっています。アートディレクターを志す受講生の他に、雑誌編集者を目指す受講生も多くこのプログラムに参加しています。雑誌の制作現場を知りたいというみなさんも心待ちにしているようです。

講義2

教室内に期待感が高まる中、講義はスタート。野口さんより「この中で美大出身の方はいますか?」と問いかけがありました。手を挙げたのはほんの数人。ほとんどの受講生は、美大とは関係ない学校を出た人、デザインとは異なる職場で働く人ばかりです。そして、なぜ、この学校で教え始めたかを話してくださいました。美大を出て、有名な広告代理店へ就職して、といういわゆるデザイン業界のエリートコースではなく、違う方法でもデザイン業界で活躍できるということをお話したいと続けます。野口さんは美大に入学せず、自分自身を売り込むようにデザインの業界へ進んでいきました。経歴を語る野口さんの言葉は、当校の受講生にとっては、とても励みになる内容でした。

講義3

続いて、「ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート」独立後のお仕事をいくつか紹介したのち、実際の案件である雑誌「美術手帖」の特集ページができるまでの流れを、スクリーンに映しながら詳しく説明していただきました。編集者とデザイナーのやり取りを、時系列に一つ一つ丁寧にお話してくださいました。野口さんが雑誌制作の中で一番楽しいと話す、編集会議を終えたあとのデザイン考察の工程は、デザイナーとしての付加価値をいかにつけられるかの鍵を握っています。編集者からの要望をそのまま受け取り作るのではなく、「ギャフンと言わせてやらないと」と野口さんは話します。言われてばかりではなく、編集者の意図を理解し、自分の考えもしっかり伝えるコミュニケーション力も必要と話します。

講義4

また、昨今の出版業界について触れ、野口さんから「僕はコミュニケーションの仕事をしていますが、雑誌のコミュニケーションはなくなってほしくない」と、出版業界を今後も残していきたいという思いを語ってくださいました。どうすれば出版業界が生き残れるのか、これに対して野口さんは、これから出版業界が活躍するのはSNSという場なのでは?と続けます。情報に速乾性をもって発信するような、インスタグラマーやユーチューバーなどの活躍の場をもっとつくれるようなことを考えていきたいと話します。古い価値観に縛られず、新しいメディア、価値観などを取り入れる姿勢は、受講生にも大いに刺激になりました。ここで、前半の講義は終了となります。

第2部:ワークショップ「バースデーメッセージを考える」

ワークショップ1

野口さんから伝えられた、今回のワークショップは「バースデーメッセージを考える」というテーマです。ただし、そのメッセージを、「紙媒体」「SNS」「リアルな体験」の3 種類のアプローチをセットで考えてほしいと付け加えました。先ほどの講義を踏まえて、それぞれの媒体・アプローチが上手くつながるような企画を考えてほしいという狙いのワークショップです。メッセージを送る相手は、友人や恋人誰でもOK。どうすれば相手が喜ぶか?各メディアをどう活かそうか?贈り物を渡すような感覚で相手を思いながら、みなさん一生懸命考えています。

ワークショップ2

発表者が決まったところで、早速プレゼン開始!発表者がメッセージを送りたい人も、人によって様々です。仲間や友人、中には1 歳の赤ちゃんに向けて考えて発表してくれた人もいました。その人たちが喜んでくれるために、好きな物を取り上げるだけではなく、3つのアプローチから考えなければなりません。ある発表者は、ミュージシャンの仲間のためにセッション大会でお祝いするというものでした。Twitterを使い普通のセッション大会として人を募り、リアルな楽しい時間を過ごします。終わりに近づくと、サプライズで紙に書かれたハッピーバーズデーの譜面を配られ、最後にみんなでお祝いする、という一つのストーリーになって発表されていました。

ワークショップ3

ひときわ注目を浴びたのは「塩辛好きの友達」へのメッセージ。樹脂を使って本物そっくりの塩辛を作り、樹脂の塩辛を瓶詰めにしてラベルを貼ってプレゼントという企画に、思わず会場から笑いが起きました。樹脂の塩辛を作る工程を動画に収め、インスタグラムにUPしたり、大きいパネルに塩辛まみれの似顔絵を描いてプレゼントしたりなど、各アプローチからも考えられていました。その印象的な内容から、野口さんからも「ダントツでいい」とお褒めの言葉を頂けました。そんな個性あふれる発表や、相手を想うあたたかなメッセージに、発表中は和やかな雰囲気に包まれました。

総評

最後に野口さんから総評です。「アイデアはコンセプチュアルに考えれば考えるほど、人の記憶に残っていかない。アイデアを生む方法論として、全然関係ないテーマを一緒に組み合わせることがあります。その結果、人の記憶に残るいいものが作られます。そのために私たちは、普段から身の回りにある個性や面白いものに触れ、書き留めてほしい。」と話します。「今回のワークショップにおいても、友達のためならそつなくいいものをつくるのではなく、面白くやるはず。クライアントとの仕事も自分の大事な人という意識でデザインをすればちゃんとハートがこもります。この気持ちを忘れないで仕事をしてください。」と締めくくりました。