PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「明日から使える編集思考」

ISHI inc.代表/クリエイティブディレクター

石原 篤 氏Atsushi Ishihara

PROFILE
ISHI inc. 代表。1977年生まれ東京都国立市出身。法政大学大学院工学研究科建設工学修了。2002年博報堂入社、博報堂ケトルを経て、2018年にISHI inc.を設立。SP 領域を起点に、リアルに人が動く統合コミュニケーションのクリエイティブディレクションを強みにしている。著書に『これからの「売れるしくみ」のつくり方~ SP 出身の僕が訪ねたつくり手と売り手と買い手がつながる現場~』がある。

第1部:講義「明日から使える編集思考」

講義1

本日のプレックスプログラムは、クリエイティブディレクター・編集者でISHI inc代表の石原篤さんをお迎えして行います。石原さんは博報堂のクリエイティブディレクターを経て、その後ISHI incを設立。ご自身の肩書については、「クリエイティブディレクターというよりは、プランナー・編集者に近い」とおっしゃいます。その背景にはどのような思考があるのでしょうか。本日は石原さんの過去の作品やワークショップから、石原さんの「編集思考」を紐解いていきます。

講義2

まず初めに石原さんの経歴を伺います。大学時代に建築を学んでいた石原さんは、あるリノベーションプロジェクトに携わっていました。その中で、建築そのものではなくその空間のストーリーやコンセプトを考えることのほうが好きだということに気づきます。その後当時の教授のアドバイスもあり、就職活動では広告会社を目指すことに決めたそうです。博報堂入社後は、車からアパレルまで様々な広告に携わる中で、1つのものをただ作り上げるのではなく、様々なものを組み合わせて編集していく独自の「編集思考」を培っていったそうです。

講義3

「編集思考」とはどのような考え方なのでしょうか?ポイントは、2つ以上の要素の関係性を考えることで、例えば以下のようなものがあるそうです。 ・A=B…ぜんぜん違うように見える2つのことに共通点を見出すこと ・A≒B…AとBが近い関係であるもの ・A=−B…似ているようでコミュニケーションが全く違うもの ・A=B+C…要素を分解すると色々な要素が混ざっているもの 上記のポイントをどう落とし込んでいるのか、実際に石原さんが制作に携わったCMを通して解説もしていただきました。

講義4

石原さんは広告業界について、「マス広告を通したコミュニケーション」から「複雑な環境下でのコミュニケーション」に変化しているとおっしゃいます。その中で一定の志向性を持って情報を収集・整理・構成し、一定の形態にまとめあげる力「編集思考」が役に立つとおっしゃいます。「デザインやクリエイティブの仕事は自ら手を動かすイメージが強いですが、自身が手を動かさなくとも、様々な人と一緒に協同することがクリエイティブです。『設計者・計画者』という意味でプランナー・編集者として働いていくという道もあるのです。」

第2部:ワークショップ「デザインプレックスキッズを考えてみよう」

ワークショップ1

後半は、キッズが通うデザイン学校『デザインプレックスキッズ』を設立するというテーマでワークショップを行います。校長先生や講師は誰が適任か、どんな科目やコースがあると良いか、学校はどこに作るべきか…?など、石原さんの「編集思考」を体験すべく学生たちが思考を広げます。あるチームは校長先生にアーティストの草間彌生さんを指名し、草間さんの地元の長野県に学校を構えることを提案。これに対し石原さんは、「次の学校では他の人を校長とすることで横展開も可能になりそう」「都心でない学校の場合、移住は大変なのでサマースクールにしてみよう」など、発想を連想していくことが編集思考の考え方であるとおっしゃいます。

ワークショップ2

次のチームは、子供たちが好きなものは何か?という観点から、お笑い芸人のチョコレートプラネットさんを校長に選出。講師には、お笑いにも文学にも精通する又吉直樹さんなどをピックアップしました。他にも、芸人さんの発想力やコンテンツの企画力に着目し、動画や脚本などが学べるカリキュラムを考えたようです。石原さんからは、「軸になるものを強固にしていくために、『なぜそれを選んだのか』『それを構成する要素は何なのか』など深掘りしていくことが大事。連想のルールを決めていくと説得力が増すので意識してみてください」とアドバイスをいただきました。

ワークショップ3

他には、任天堂のゲームキャラクターのマリオを校長に選んだチームも。子供との接触回数が多く、親目線から見ても任天堂やキャラクターの認知力を肯定的に捉えられるというところに着目したそうです。講師は、マリオのゲームを制作しているクリエイター陣を指名。キャラクターデザインやゲームの制作方法などをカリキュラムに展開しやすいのではと考えました。学校の場所は、ゲームのイメージから逸脱しないようにオンラインで実施するそうです。石原さんからは、「任天堂のスタッフを講師陣に起用するためには、任天堂そのものの分析がよりできているとカリキュラムなど検討時に幅を広げていくことが出来るのでは」とアドバイスを受けました。

総評

石原さんから最後にメッセージをいただきました。「つながりを感じるという意味で『編集思考』を捉えると良いと思います。1つの要素だけを見て考えるのではなく、2つや3つの要素を俯瞰的に見て繋げていくとプランニングやクリエイティブが出来るようになっていきます。」今回は「編集思考」という言葉がキーワードとなり、学生が目指すクリエイティブな仕事に通ずる重要な思考や、様々な人と一緒に協同することの楽しさを学ぶことができました。石原さん、ありがとうございました!