PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「編集思考について」

ISHI inc.代表/クリエイティブディレクター

石原 篤 氏Atsushi Ishihara

PROFILE
ISHI inc. 代表。1977年生まれ東京都国立市出身。法政大学大学院工学研究科建設工学修了。2002年博報堂入社、博報堂ケトルを経て、2018年にISHI inc.を設立。SP 領域を起点に、リアルに人が動く統合コミュニケーションのクリエイティブディレクションを強みにしている。著書に『これからの「売れるしくみ」のつくり方~ SP 出身の僕が訪ねたつくり手と売り手と買い手がつながる現場~』がある。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「編集思考ついて」

講義1

本日は4回目のご登壇となる、クリエイティブディレクターの石原篤さんにお越しいただきました。石原さんは、以前は博報堂ケトルにて統合型コミュニケーションの仕事に多く携わり、ご活躍されてきました。そして昨年に独立され、現在は、ISHI inc 代表と、その兄弟会社であるHASHI inc 取締役兼マネージャーを務めています。会社名である、ISHI =14、HASHI =84のように、背番号を会社名として展開しているという発想からも、もの凄いクリエイティビティを感じます。本日は一体どのようなことを お話ししてくださるのでしょうか。

講義2

講義の序盤では、学生たちにどのような仕事をしているか、始めようとしているかを問いかけながら、石原さんご自身は85歳まで現場で長く働きたいと語っていました。そのため、ISHI incでは「ながく はたらける 世の中に。」をテーマにしており、その実現には「まず健康でいること、そして“ 学び続ける”しかない」と石原さんは言います。上記のテーマを掲げている石原さんは、どのような仕事に取り組んできたのでしょうか。実際に石原さん取り組んだ、ダイハツの「タント」や、機能性が高い雑貨やアパレルを扱っている、新ブランド「LAKOLE」のブランディングなどの事例をご紹介いただきました。

講義3

複数の事例のご紹介後、本日の講義の核心となる思考についてお話しいただきました。まず、コミュニケーションに関わる会社にとって、広告は情報を作るための1つの方法と捉えられており、更に「広告とは=自己紹介」であるという認識があるそうです。例えば、自己紹介をする時、些細な個人の情報に関心を持ってもらうため、自分と相手との接点を探すように、「対象物と世の中の接点を探す」という考え方が、広告に組み込む要素に似ていると語ります。世の中との接点の例としては、社会の関心、社会の潮流、象徴的な人、目の前にいる人物、国民的キャラクターなどの種類があり、これらと自分との関係性を紐解き構成していく力こそが、本日のテーマである“ 編集思考”だと続けます。

講義4

では、“ 編集思考”に必要な自分と世の中との関係性を、どのように捉えていけば良いのでしょうか。石原さんは、フレミングの法則のような図式を例にとり、3つの角度で考えられると良いと説明します。その3つの視点こそが、順目(対象物と近い関係の見方)、逆目(対象物から遠い関係にあるものを探して捉えていく見方)、斜目(一見対象物とは関係のないものとの関係を探していく見方)です。各視点を取り入れたいくつかの事例をご紹介していただき、前半の講義は終了しました。

ワークショップ:「キッズデザインプレックスを考えてみよう」

ワークショップ1

後半は、ワークショップに取り組んでいきます。現在、習い事をしている小学生が約85%いるという社会状況がある中で、東京デザインプレックス研究所が新たに開校する、小学生の子どもを対象にした学校、「キッズデザインプレックス」の内容を提案してもらいます。学生は学校の理事長という設定で、校長や校舎立地、科目などを検討していきます。今回のワークショップは、先ほどの講義で学んだ編集思考において重要な視点(対象物と世の中との関係を捉えること)をトレーニングしていきます。議論を開始する前に、石原さんに改めて思考のプロセスを教わりました。

ワークショップ2

企画を考える手順としては、世の中のトレンドや関心などの潮流を捉えていき、その上で、それらをいかに「キッズデザインプレックス」に組み込むことができるかを考えていきます。この編集視点で、学生たちはどのような企画を提案することができるのでしょうか。実際の発表では、自己発信力をつけることを目的としたオンライン上の10代のタレントが校長の学校や、生徒の親の相談相手となるオネエカウンセラーがいる新宿2丁目の学校、親と子供が両方で通う学校などが提案されました。石原さんは、各グループに対して良かった視点と改善点を伝えながら、学生たちの発表を熱心に聞いてくださいました。

ワークショップ3

発表の中でも、石原さんが特に「編集の視点を取り入れ、そして実現できそうだ」と口にしていた企画を紹介していきます。YouTube の再生回数が資金として経営されている学校で、YouTuber が人気職業であることや、高齢社会、自然災害が多いことなどを社会の潮流として挙げていました。この学校では、被災地や老人ホームなどにも拠点を持ち、生徒は自分の足で出かけて様々な人とコミュニケーションを築くことができます。その学んでいる姿をYouTube にアップして発信力と、広告費を稼 ぐなどのビジネス力を身につけることができるそうです。この発表に対して、石原さんはキッズチャンネルを作っている感覚に近いと好評しつつ、学校に題名をつけると企画の枠がハッキリするとアドバイスしていました。

総評

最後に石原さんからアドバイスです。まず、石原さんは知り合いの建築家から「石原くん、建築出身を意識して、クリエイティブをやってみたら?」と言われたことを例に、ルーツの大切さを学生たちに伝えます。そして下記のように続けます。「今日皆さんには、色々と自分自身をアップデートしていくことが大切だという話をしました。それと同時に、自分の出身地や前職などのルーツを見つめ直してオリジナリティを出していくことも、とても重要だと独立して改めて思います。最後に、今日覚えていただ きたいことは、世の中のことから考え、対象物との関係性を編集していくことです。」