テーマ:「デザインワークについてVIII」
FLAME 代表/アートディレクター
古平 正義 氏Masayoshi Kodaira
- PROFILE
- FLAME代表。「Fender」「ラフォーレ原宿」「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」「日本ペイント AYDA Awards」などのアートディレクション&デザイン、「BAO BAO ISSEY MIYAKE」とのコラボレーション、MISIA・GLAY・INORAN(LUNA SEA)などのアートワーク他、映像・ウェブサイト・建築のサイン計画なども手がける。https://.flameinc.jp Instagram @masayoshikodaira 東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「印刷で魅せる」
講義1
本日のプレックプログラムでは、FLAME代表/アートディレクターの古平正義さんを講師にお迎えしました。今回の講義では、紙や印刷、加工といったグラフィックデザインの基礎を大切にしながらも、その時代だからこそ実現できる技術や表現を柔軟に取り入れる、古平さんならではのデザインに対する考え方や制作姿勢についてお話しいただきます。実際の制作事例の紹介や学生との質疑応答を通して、発想や表現への向き合い方を学ぶことのできる貴重な講義です。

講義2
最初に紹介されたのは、アーティストMISIAのアルバムジャケット制作事例です。限定盤用アートブックの制作では、古平さんは歌詞を主役に印刷の工夫で魅せる構成を提案しました。「厚みのあるものにしたい」という要望に応え、約200ページ、各楽曲に合わせてパールや蛍光、黒地に黒、白地に白グロスとマットのニス等に加え、コールドフォイル、LCホログラム等の特殊印刷も取り入れています。

講義3
続いて紹介されたのは、日本ペイント主催の国際学生デザインコンペティション『AYDA Awards 2024』のWebサイトとポスターの制作事例です。この年のテーマ「あいまいさの確かな形質」をもとに、古平さんは印刷のドットをモチーフとしたビジュアルを制作しました。Web上ではプログラミングによってドットを変形・崩すことで、曖昧に変化し続ける表現を実現しています。さらに、三つのレイヤーを重ねることで構成されたビジュアルには、プログラミングによる偶然性や変化が取り入れられており、新しい技術を積極的に活用しながら表現の可能性を広げる制作手法が印象に残りました。

講義4
ポスターへの展開については、「WebサイトはRGBの発色や動きが表現できますが、ポスターはそれができない。では逆に印刷でしかできないことをやろうと思い、モチーフであるドットからの発想で、ポスター自体に穴を開ける加工を施しました」と話す古平さん。「穴が開いていることが伝わるよう、白い壁ではなくガラスなどに貼ってもらいたいと考えて、両面に印刷を施すことにしました。」掲示場所まで想定したというエピソードから、媒体の特性を最大限に生かす発想がうかがえます。

第2部:課題講評&質疑応答
講義5
後半は、事前に課題として出されていた作品を古平さんに披露し、講評をいただきます。課題は自分のイニシャルを大文字と小文字で二つの異なるフォント、あるいはオリジナルの文字で表現するという内容です。「異なる要素を並べるだけでデザインを成立させられるかが、この課題のポイントです」と古平さんは解説します。講評後には提出作品の中から3作品が選ばれ、古平さんがデザインしたTシャツやバンダナが贈られる場面もあり、会場は大いに盛り上がりました。

講義6
質疑応答では、「特殊印刷や紙の加工のアイデアはどこから生まれるのか」という質問が。古平さんは、デザインコンペティションの指導経験を交えながら、「学生作品を見ていると、Illustratorで簡単に作れる表現だけで完結しているものが多いと感じます。僕がデザインを始めた頃は、グラフィックデザイナーは”印刷物をつくる仕事”だと思っていて、紙や印刷の知識は当然必要なものだと考えていました。それもあって、素材や印刷方法、加工技術もデザインの一部だと捉えています」と語られました。

講義7
さらに古平さんは、これまで数多くの優れたクリエイターや作品に触れてきたからこそ、画面上で簡単に作れる表現だけでは勝負できないと考えていると話されました。「ひとりで簡単にかっこいいものを作れるとは思っていません。自分のセンスだけを頼りにするのではなく、与えられた条件や技術を生かしながら、人がやっていない新しい方法を探しています。」他者と同じ表現にとどまらず、常に新たな表現を追求し続ける姿勢こそが、多彩なアイデアや表現を生み出すことができると教えていただきました。

総評
古平さんから学生へメッセージが送られました。「近年はAIが取り沙汰されていますが、僕はそこまで特別な事として捉えていないです。僕がデザイン業界に入った当時はまだアナログが主流で、その後Macが普及しはじめた際にも、現在のAIと似たように議論や話題になっていました。しかし今ではコンピューターを使ったデザインは当たり前のものとなっていますよね。なのでAIも同様に、いずれは特別な存在ではなくなり、自然にデザインの現場へ溶け込んでいくのではないかと考えています。だから気にしすぎず、今後も一緒に頑張っていきましょう。」古平さん貴重なお話をありがとうございました。
