PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザインワークについてⅤ」

FLAME 代表/アートディレクター

古平 正義 氏Masayoshi Kodaira

PROFILE
1970年大阪生まれ。1997年よりフリーランス、2001年FLAME設立。大阪芸術大学客員教授。主な仕事に、「ラフォーレ原宿」広告・CM、「Fender」広告・フリーペーパー、「BAO BAO ISEEY MIYAKE」とのコラボレーション「oltana」ブランディング・パッケージ、「東京サンケイビル」商業エリアサイン計画、『奇界遺産』ほかのブックデザイン、「アートフェア東京」ロゴ・広告(2005〜2017)、横浜美術館/原美術館/水戸芸術館/ポーラ美術館/福武ハウス/21_21 DESIGN SIGHTほかの展覧会ポスター・カタログ、など。

第1部:講義「デザインワークについて」

講義1

本日のプレックスプログラムの講師は、アートディレクターの古平正義さんです。ラフォーレ原宿のポスター・CMやイッセイミヤケのトートバッグとのコラボなど、タイポグラフィが印象的なクリエイティブを目にしたことがある学生も多いのではないでしょうか。古平さんは広告やパッケージだけでなく、ロゴやブックデザイン、Webサイトに至るまで、多様な領域で世界に発信する多くのアートディレクションを手がけられています。本日は古平さんのデザインワークについて、お話しいただきます。

講義2

まずはラフォーレ原宿グランバザールの広告について。毎回お祭りのように開催され広告も華やかですが、コロナ禍では外出自粛の影響により、いつもよりコンパクトな広告費で制作をしなければいけませんでした。CMが打てない中、宣伝の要となるポスタービジュアルは、インパクトのあるタイポグラフィのオブジェを屋上で撮影。セール当日にはオブジェの実物を1階エントランスに設置しました。他にも、ポスター撮影後にオブジェを施設内に保管できたのも、自粛の色が濃かった当時だからこそできたことです。ポスター撮影現場のメイキング映像やショッパーの印刷工程の映像をデジタルサイネージで流すなど、制限された状況であっても古平さんのこだわりとアイデアが投入されています。

講義3

オルタナの化粧水のパッケージデザインについてのお話も興味深いです。最初はマーケティングのプロから世界中の化粧品についてのインプットを受けたものの、最終的にはクライアントの「古平さんならではのタイポグラフィを入れてほしい」という声でデザインの方向性が決まったそうです。パッケージの追い風もありヒットしたこの商品は、雑誌広告も出すことになりました。大きな予算がつかない中でも、パッケージのタイポグラフィを背景に重ねることで、凝った撮影をせずに商品を印象に残しています。誌面ではボトル部分が原寸サイズになるように配置されていますが、それは原寸が一番納得感があるため。古平さんは、制作の中でいつも全員が納得できる答えを探すようにしているのだそうです。

講義4

古平さんはコンピュータのプログラムをデザインに取り入れた実験的なクリエイティブも多く手がけられています。国際的な建築の学生コンペティションであるAYDAのWebのビジュアルでは、写真をプログラムでリアルタイムに分解して見せる手法を使用しています。分解の見え方については、モザイクのように見えないように調整したのだそう。絶えず変化し、同じ画面が出てこない新しいグラフィックです。「僕としては新しいおもちゃを見つけた感じ。プログラムに動かしてもらうと自分の見たことのないシーンが見られるから面白い」と古平さん。

第2部:ワークショップ「キャンプ用品ブランドのロゴデザイン」

ワークショップ1

後半のワークショップの課題は、キャンプ用品ブランドのロゴデザインです。古平さんに実際に依頼されているもので、住宅会社の展開のひとつとして設立されたブランドなのだとか。学生たちはCAMPの文字でロゴを作成します。作業の前に依頼の背景について教えていただきました。「住宅会社のロゴを作った際に、文字を家の形に組んでいたので、キャンプのロゴはテントの形にしようと思ったのですが、このブランドではテントのような大きな商品は扱わないそうです。もしいい作品があれば採用しようと思います。」過去にアイデアが採用された前例がある古平さんのワークショップ。学生たちはどんなロゴをつくるのでしょうか。

ワークショップ2

それぞれが作成したCAMPのロゴは、学生たちと古平さんの投票で上位を選抜します。1位の学生のロゴは、CAMPのAを木に見立てて、住宅会社のロゴと同様に人の要素を配置したもの。紙面いっぱいに大きく描かれており、「文字を人が登っているものは他にもあるのですが、こちらは大きさの勝利です」と古平さん。2位の焚き火と組み合わせたロゴには、「ビジュアルが説明的すぎると絵になってしまうので、位置を気にせずもっとシンプルにしてもいいかも」とアドバイスが。上位の2人には古平さんデザインのTシャツが贈られました。

ワークショップ3

次点の学生たちのロゴも続けて講評していただきます。古平さんがオリジナリティを強く感じたのは炭をモチーフにしたロゴのアイデアです。「これは他にはなかったアイデア。僕がやるとしたら、リアルな感じではなくシルエットで炭っぽくする仕上がりまで見えました」とコメントをいただきました。他にもランタンや旗、山のモチーフを学生なりに組み込んだロゴが発表され、「このままだと惜しいけどアイデアがいい!」「実際の仕事だとCAMPと読めるかどうかが重要」など、学生一人ひとりに向けてたくさんのアドバイスをいただきました。

総評

最後に講評をいただきます。「今の時代はすごい勢いで我々デザイナーの仕事の周り方が変わってきていると感じます。僕も含めてグラフィックの人はトラディショナルな形に引っ張られる傾向があると感じていますが、決まった枠でつくるよりも、より自由にそれを超えていくことが重要になってきています。ちょうどその流れが始まってきたところなので、動くロゴや、制作プロセスを見せるような提案をしてみると、とても喜ばれます。そういうところまでを含めてデザインですので、自由に考えていくといいのかなと思います。」古平さん、ありがとうございました!