PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザイン10のヒント」

NOSIGNER代表

太刀川 英輔 氏Eisuke Tachikawa

PROFILE
NOSIGNER 代表。デザインストラテジスト。慶應義塾大学特別招聘准教授。ソーシャルデザインで美しい未来をつくる(デザインの社会実装)発想の仕組みを解明し変革者を増やす(デザインの知の構造化)この2つの目標を実現するため、次世代エネルギー・地域活性・伝統産業・科学コミュニケーションなど、SDGsに代表される分野で多くのデザインプロジェクトをマルチセクターの共創によって実現。プロダクト・グラフィック・建築・空間・発明の領域を越境するデザイナーとして活動する。グッドデザイン賞金賞(日本)・アジアデザイン賞大賞(香港)など100以上の国際賞を受賞し、またグッドデザイン賞・ Design IntelligenceAward・WAF(世界建築フォーラム)など多くの国際賞の審査委員を歴任する。主な仕事にOLIVE・東京防災(東京都)・山本山・横浜DeNAベイスターズ・YOXO(横浜市)・MOZILLA FACTORY・aeru・越前漆(鯖江市)など。また、デザインや発明の仕組みを生物の進化から学ぶ「進化思考」を提唱し、デザイン教育者として日本の大企業・行政・社会起業家のセクターの中に変革者を育成している。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「デザイン10のヒント」

講義1

本日のプレックスプログラムは3回目のご登壇、ノザイナー太刀川英輔さんです。「ソーシャルイノーベーティブデザイン」の旗手として斬新な作品を多く世に生みだしてきた太刀川さん。昨年は内閣官房主催「クールジャパンムーブメント推進会議」コンセプトディレクターとして抜擢されるなど、デザイナーの枠を越えて大活躍中です。そして会場はそんな太刀川さんから多くを盗み取ろうと多くの受講生が集まりました。

講義2

「今日は可能な限り、皆さんの為になる話を具体的にしたいと思います。“10 のヒント” という形でまとめてきましたので、何かをつかんで行って欲しいです。いいですか!!?」と冒頭からいい緊張感でスタートです。10のヒント、いくつか抜粋してご紹介します。まずは「経験をかんがえるな。はじめてでもやってみろ」:こだわりを捨ててとにかく打席に立つことの重要性をご自身の初体験エピソードを交えながらご解説いただきます。「最初に最高のモノを学べそして越えろ」:最高のラーメンの味を知り、例えば、その具材の1つである煮卵から最高のモノにしていく。良いデザイナーで知識のない人はいないから、デザインおタクになって欲しいとメッセージがありました。

講義3

「周囲は全て学べ」:無駄な知識は一つもない。一見関係ない知識も強みになる事がある。「体験をシフトさせろ」:デザインは哲学とクオリティでできている。クオリティを向上させることは容易ではないけど、哲学は視点を変えることで大きく化けることが出来る。「多様で小さなチームを作れ」:太刀川さんの採用基準は「自分よりできるものを持っているかどうか。チームは尊敬できる要素を持つ集まりであるべき。良いデザインは強い個の集まりから生まれます」とのこと。

講義4

「問いを拡大しろ」:クライアントからの課題や要望をそのまま受けるのは当たり前、一つ越えたデザイナーになりたいなら、クライアントの要望を越えた答えをあえて出す。「自分がこうしたいとかこれを作りたい!を越えた何かがある時にプロジェクトって上手くいくんです」。そう言って説明していただいたのは「クールジャパン」の提言。「世界の課題をクリエイティブに解決する」。課題先進国日本が先んじて体験した課題をクリエイティブに提案を輸出する。とっても太刀川さんらしい提言です。

講義5

「自分自身の中に相手を見つける」:作り手としての自分と使い手としての自分を分ける訓練をする。太刀川さんもいつも自分のデザインを客観的に見るように精進してるそうです。東日本大震災発生から40時間後に開設された、災害時に有効な知識を集めて共有するwikiサイト「OLIVE」の解説秘話には会場から感嘆の声が沢山聴かれました。

第2部:ワークショップ「デザインの文法」

ワークショップ1

後半は太刀川さんが考案した「デザインの文法」の一部を体験するワークショップを行います。デザインの文法の中で、本日の授業に選んでいただいたワークショップは「分解」です。つまり、あるモノを「記号」-「意味」-「関係」に分解します。そうすると無駄な記号はないのか?足りない記号はないのか?これを分解しながら考察していきます。今回はそのワークショップとして教室にある椅子を使って「分解」を行います。

ワークショップ2

満員の教室の受講生が椅子を逆さにしながら、意味を考えポストイットをひたすら貼り付けていきます。たった5 分の作業ですが、前半の講義を受けていた受講生の様子は真剣そのもの。背もたれや足に「支え」や「強度」などを書きながらドンドン貼っていきます。そうすると分かるのは、実は「記号」としての観点よりも「関係」としての観点が重要だという事にわずかの時間で気づくことになります。「デザインの文法」恐るべしと言ったところです。

総評

いくつかの質疑応答があり、最後に太刀川さんからメッセージです。「このデザインの文法は、当初誰のためのものでもなく“ 僕” のために作りました。この難しいデザインを理解したくて考え付いたものです。なので、皆さんにもデザインって何?ということを考えて欲しいんですね。これだ!って腹落ちするまで徹底的にやって欲しいです。またこの学校には毎週のようにトップデザイナーが授業に来られるんですよね。なら彼らを分解しましょう!僕も分解してください。僕も先輩デザイナーをたくさん分解して少しでも追いつこうとやって来ました。まずは最初にお話した煮卵からですね」。