PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「バースデーをデザイン」

メディアクリエイター、アーティスト

市川 健治 氏Kenji Ichikawa

PROFILE
メディアクリエイター、アーティスト。 1990年に考案した「ピクセル・モンタージュ(Pixel Montage)」という技法を用いた作品のスタイルで、日本グラフィック展、日本ビジュアル・アート展、APA日本写真ビエンナーレ、プリンツ21グランプリ展、現代日本美術展、岡本太郎現代芸術賞等、数々のコンペティションで受賞歴を持つ。 東京・横浜・名古屋・上海・ニューヨーク・ミラノ・ボローニャ・アムステルダム・ゲント・ブエノスアイレス等、国内外を問わずアートフェアや展覧会に出品。 雑誌・書籍・DVDブックレット・TV・iPhone/ iPad用アプリ等、様々なメディアやイベントでも作品を展開。 「ウタマロケンジ」としても活動中。東京デザインプレックス研究所講師。

第1部:ワークショップ「バースデーをデザイン」

ワークショップ1

今回のプレックスプログラムは、いつもとは一味違う内容です。プレックスプログラムの時間をフルに使った、ワークショップ形式で進めていきます。講師は、当校クリエイティブデザイン専攻講師の市川健治先生です。学生に絶大な支持を得ている市川先生。現在、市川先生の授業を受講中の学生はもちろん、授業を終えた修了生も今回のプログラムにたくさん参加しました。「もっと市川先生の授業を受けたい!」「授業を終えてもまた参加したい!」という声が多数寄せられた中、ワークショップは実現しました。今回、どのような内容になるのでしょうか?

ワークショップ2

今回のワークショップは、一人ひとりに作品制作をしてもらいます。作品制作のために用意されたのは、1 枚のA3 サイズの白い厚紙。白い厚紙を台紙にして、コラージュ作品を作成していきます。コラージュとは、様々な素材を組み合わせて一つの絵画のように表現する技法です。今回、コラージュ作品で表現するテーマは「誕生日」。「あなたの誕生日はいつですか?あなたのお誕生日の月日のイメージを、自由にビジュアル表現してください」と市川先生からコメントをいただきました。誕生日は人それぞれ、月日が変われば、季節も変わり、それに伴うイメージも変わります。

ワークショップ3

コラージュ作品を作るために使用する画材は、絵の具や色鉛筆、マーカーなど、自分の好きなものを使用していいと、市川先生から指示がありました。また、コラージュ表現で重要なことは、いろんな素材を組み合わせること。一つひとつは関連していなくても、組み合わせ方や配置の仕方によって、白い厚紙という台紙の上で一枚の絵になります。そのために使う素材は、基本的に紙モノであれば何でもOK。色紙や雑誌の切り抜き、写真など、学生たちが思い思いに選んだものを材料にします。普段は何気なく見ていた雑誌や写真も、作品の一部となる大切な要素。今日は普段と見る目が変わってくるのではないでしょうか。

ワークショップ4

コラージュの作品制作自体は、クリエイティブデザイン専攻の授業でも行われています。参加している学生は、その授業を受講したことのある学生もいれば、そうでない学生もいます。コラージュの作成は専攻の分野にとらわれることなく、専門的なスキルがなくてもビジュアルを作成することができます。ただし、作りたいビジュアルのイメージやテーマを描く力が必要になるため、作り始めてみると簡単には作業は進みません。

ワークショップ5

作業の工程としては、色紙にしろ、雑誌にしろ、写真にしろ、「紙」を素材にしているため、基本的には切り貼りの作業です。まずは素材の使いたい部分をカッターやはさみで切り取ります。切り取ったものに糊付けをし、台紙に貼り付けていきます。まさに“ 手作業” で一つ一つ組み立てながら一つの絵を作り上げていきます。デジタルソフトを使えばすぐにできるような配置も、すべて手作業で行うと、その倍の時間がかかります。普段デジタル操作に慣れていると、もどかしい気持ちになることもありそうですが、手作業で丁寧によく考えながら作ることが、結果的にデジタル表現にも活かすことができると、先生は話します。

ワークショップ6

限られた作業時間の中で作品を仕上げた後は、作品を展示していきます。コラージュを作成するのに時間がかかるためか、「もう終わり!?」というほど作業時間はあっという間だったようです。今回のコラージュのテーマが「誕生日」のため、1月、2月、と月ごとに並べて展示し155ていきます。12月まで並ぶと、1 年の四季の移り変わりを感じることができ、またそれぞれの個性も際立っています。自分の作品と他の作品を見比べながら、学生たちも楽しそうです。壁一面に、参加者全員のコラージュが並ぶと圧巻です。

ワークショップ7

市川先生がここで、完成した作品に講評していきます。市川先生は、一人ひとりの作品の良いところを見つけ、改善点も明確に教えてくれるので、「先生の講評が楽しみでした!」と学生が口にするほど、作品に対してのフィードバックが評判です。先生のコメントにはユーモアもあり、参加者から時折笑いが起きるなど、とても明るい和やかな雰囲気で講評が続きます。自分の作品とは別の作品の講評を聞くのも、非常に勉強になります。「もっと聞きたい!」「コメントもっとほしいです!」と惜しまれる中、終了時間となってしまいました。

総評

ワークショップを終え、「やっぱり、作ることは楽しいと再確認することができました」と学生から感想が寄せられました。デザインを行うにあたっては、仕事となれば特に、自分の好きなようにものを作るのが難しくなってきます。また、作ったものに関して論理的に説明する力もデザイナーには必要になるため、その中で苦悩する学生も中にはいます。だからこそ、今回のワークショップのように、改めて「作ることは楽しい」と感じることのできる機会はとても貴重であり、デザイン業界を目指す学生たちにとっても励みになる授業となったのではないでしょうか。今回のワークショップは、市川先生の新たなファンが生まれたとともに、学生たちが作る楽しさや喜びを感じられた回となりました。