PROFESSIONAL MESSAGEプロフェッショナルメッセージ

石原 篤Atsushi Ishihara

PROFILE
ISHI inc. 代表。1977年生まれ東京都国立市出身。法政大学大学院工学研究科建設工学修了。2002年博報堂入社、博報堂ケトルを経て、2018年にISHI inc.を設立。SP 領域を起点に、リアルに人が動く統合コミュニケーションのクリエイティブディレクションを強みにしている。著書に『これからの「売れるしくみ」のつくり方~ SP 出身の僕が訪ねたつくり手と売り手と買い手がつながる現場~』がある。

仕事の原動力になる自分自身の問題意識を見つけて。

僕は広告業界で大切なことは、リアルな人の動きを感じ取るための感覚値を持つことだと思っています。自分は博報堂に入社して、希望を出して配属されたのがプロモーションの部署だったのですが、人がどうすれば動くかという感覚値は、その現場で培われました。例えば、街頭で試供品を配ると何度ももらいに来る人がいたり、アンケートでプレゼントがもらえるのを知って真剣に記入してくれたり...。ただ新商品の魅力を伝えるエモーショナルなメッセージを掲げただけでは、人は動かないんですよね。決して派手ではない部署でコツコツと仕事しながら、人が動く現実を見てきたから、企画の絶妙なさじ加減がわかるようになったのかな、と思っています。

実は、僕は大学院まで建築を学んでいて、卒業後は設計士になるつもりでいたんですよ。でもある時、設計を考えるよりも、そのストーリーやコンセプトを考える方が向いてるんじゃないかと思い始めたのです。そこで教授に進路相談をしたところ、「意外と広告会社がいいんじゃない」と助言してくれたのがきっかけで、この業界に入りました。そもそも建築を学んでいたのは、いつか建物を作っていきながら、徐々に長い時間をかけてその区域の雰囲気を作る、いわゆる「街づくり」ができたら素敵だなと、思い描いていたからなのです。プロモーションの部署に入りたいと思ったのも、人の動きが見える現場に立つという、建築出身の自分らしい選択でした。そして、今でも同じ気持ちが根底にあって、それをエネルギーにして広告の仕事をしています。単に「ものが売れるため」だけではなく、最終的にもっと原動力になる自分自身の思いがないと長続きできないのが、この仕事だと思います。そしてその自分の問題意識というのは、学校で何かを学んでいる時に思い描いたことが起源となるでしょう。学校ではその環境でしか学べないことがありますし、好きなことに没頭するのも学んでいるうちにしかできない。何か自分自身の問題意識に目覚め、後にエンジンとなり自分の思いを乗せて動いていけることを見つけてほしいと思います。