PROFESSIONAL MESSAGEプロフェッショナルメッセージ

佐藤 夏生Natsuo Sato

PROFILE
博報堂のエグゼクティブクリエイティブディレクター、HAKUHODO THE DAYのCEOを経て、2017年、ブランドエンジニアリングスタジオEVERY DAY IS THE DAYを立ち上げる。adidas、NIKE、Mercedes-Benzといったグローバルブランドのクリエイティブディレクターを歴任。近年は、TOYOTAの事業戦略やdocomoのダイバーシティCSRの立ち上げ、霧島酒造のビール事業戦略、ZOZOアプリWEARの開発、渋谷区の都市デザイン等、クリエイティブワークを拡張している。GOOD DESIGN賞をはじめ、ACCマーケティングエフェクティブネスグランプリ等、国内外で数々の賞を受賞。2018年から、渋谷区のフューチャーデザイナー、横浜市立大学先端医科学研究センターのエグゼクティブアドバイザーを務める。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

ブランディングは、根っこやコケのようなクリエイション!

もともとは、マーケティングプランナーとして仕事をしていました。数字を見ながら「80%がYesと言っています。だからこうしましょう」というような提案をしていました。でも、統計やデータの解釈によって如何様にも説明することができることがわかって。そんな風に数字を根拠にしているのであれば、実際に自分で良いと思うものを提案していきたい、いかないと、と思うようになり、クリエイティブディレクターになりました。

しかし、数字が少ない方を信じろと言っても信じてもらえないのが現実です。なので自分が当事者としてカタチにして証明しなければいけません。クリエイティブディレクターに求められるのは、そんな場面で強烈な“価値”を創り出すこと!「新しい!」「面白い!」と言っているだけでは、価値は創れないんです。触れる人の心を動かすこと、もっと言うと、行動や生活を変えるぐらい。もちろん、豊かな、幸せな方向に。

ブランディングは、デザインの切り売りだけでは賄えません。切り花のようにスパッと切ってデザインされた時間の短いものではなく、根っこやコケのように時間のかかるもの、堆積していくクリエイションでないとブランドは創れない。そういう簡単には創れないものを創るのが自分の使命だと思っています。ですから携わる案件も、クライアントの事業開発や街のブランディングなど、時間のかかる、答えやゴールのない仕事ばかりです。

日常生活では、あらゆる感覚を敏感に研ぎ澄ませることが大切です。街や人、暮らしや生き方の変化を感じとり、その中で自分自身の「ちょっと気持ちいいな」「ちょっと気持ち悪いな」といった「感覚」を、クリエイションの礎にしています。もっと言うと、不愉快・嫉妬・怒り、そんなネガティブな感情もクリエイションの糧にしています。クラフトにこだわるのと同じくらい、自分の感覚と向き合うこと、磨くこと。それが人を動かす力になると思います。