PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「いきるアイデアIV」

アートディレクター/アーティスト

えぐち りか 氏Rika Eguchi

PROFILE
アートディレクターとして働く傍ら、アーティストとして作品を発表。著書絵本「パンのおうさま」シリーズが小学館より日本と中国、台湾で発売。広告、アート、プロダクトなどの分野で活動中。主な仕事に、TOKYO2020パラリンピック閉会式、ARASHI EXHIBITION “JOURNEY”、SoftBank「5Gプロジェクト」「iPhone12 PRO」、再生素材を活用したランドセル「NuLAND」プロダクトデザイン、オルビス「DEFENCERA」、PEACH JOHN、PARCO、Laforet原宿、FUJIMI、RANDA、KOE、CHARA、木村カエラ等のアートワークなど。イギリスD&AD金賞、スパイクスアジア金賞、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞、JAGDA新人賞、JAGDA賞、ACC賞シルバー、ひとつぼ展グランプリ、岡本太郎現代芸術賞優秀賞、街の本屋が選んだ絵本大賞3位、LIBRO絵本大賞4位、受賞多数。青山学院大学総合文化政策学部えぐちりかラボ教員。多摩美術大学グラフィックデザイン学科非常勤教員。 HP: https://eguchirika.com instagram:https://www.instagram.com/eguchirika

第1部:講義「アイデアは『私』から生まれる」

講義1

今回のプレックスプログラムは、アートディレクター、さらにアーティストとしても活躍されているえぐちりかさんにお越しいただきました。広告やCM、展覧会、絵本、プロダクトデザインなど幅広い分野で活動されているえぐちさん。今回は2日間に渡ってプログラムを実施してくださいます。初日の講義では、えぐちさんが大切にしている「アイデア」をテーマに、その発想法についてお話しいただきます。「私なりのアイデアの出し方を紹介しますが、一番伝えたいのは、皆さんが自分なりのクリエーションの手法を見つけ出すことです」とえぐちさん。

講義2

講義の冒頭で語られたのは、「良いアイデア」について。えぐちさんは、「思いついたものは全てアイデアと言えてしまうかもしれません。しかし、良いアイデアには大前提として“なるほど”と思わせるものが存在する」と話します。クライアントが納得しなければアイデアを形にすることはできないため、自己満足に留まっては意味がありません。見る人が「これは何だろう?」と興味を持ち、「なるほど!」と発見ができるデザインにすること、そして人の気持ちを動かすこと、心をデザインすることを大切にしていると語られました。

講義3

続いて紹介されたのは、えぐちさんが実践しているアイデア発想法です。実際の制作事例とともにアイデア発想法の詳細を解説していただきました。ある企業の広告制作では、当時はまだグラフィックデザインの経験がなかったものの、自身が得意としていた立体表現を活かした企画を考案したと話すえぐちさん。「コンプレックスはアイデア次第で武器になる」と語り、自分の強みを活かす発想法についてもお話しいただきました。

講義4

最後に紹介されたアイデアの発想法は「IからはじまるIDEA」です。「I」は“私”であり、“愛”でもあることから、自分の好きなものや愛しているものから発想することで、アイデアはより発展していくと語ります。仕事だけでなく出産や子育て等、自分の人生すべてがアイデアの引き出しになると話されました。「自分なりのクリエーションの手法は、教えてもらうより自分で見つける方が何倍も身になると思います。トライアンドエラーを繰り返しながら、自分だけの表現を育ててほしいです」と学生たちへメッセージを送り、1日目の講義は終了しました。

第2部:ワークショップ「『つまらない』を『おもしろく』する」

ワークショップ1

2日目は「『つまらない』を『おもしろく』する」をテーマにワークショップを開催。学生たちは事前に考えてきたアイデアにタイトルを付け、1分間でプレゼンを行います。30名を超える参加者からは、はみがきや電車の乗車時間、打ち合わせ、レシートなど、日常の「つまらない」を出発点にした多彩なアイデアが発表されました。えぐちさんは一人ひとりの発表に対し、その後の展開や実現性を高めるための方法など、様々な方向からフィードバック。アイデアをより魅力的な企画へ発展させるための考え方を共有していただきました。

ワークショップ2

ある学生が着目したのは、「大人のつまらなさ」です。テーマパークの着ぐるみを見ても、子どもの頃のように純粋な気持ちで楽しめなくなったことを切り口に、『Dreams remain dreams.(夢は夢のままで)』という作品を発表。着ぐるみの頭が外れていても、その中にはさらに着ぐるみが入っているグラフィックを制作しました。えぐちさんは、「当たり前すぎて見過ごしてしまう視点によく気が付きましたね。シリーズ展開もできそうですし、名前を付けられたらさらに良くなりそうです」とフィードバックされました。

ワークショップ3

多くのアイデアの中からえぐちさんに選出されたのは、『はみがっき』です。一日に複数回行う歯みがきをもっと楽しくできないかという発想から生まれたアイデアで、歯一本一本に音階が設定されており、磨く場所に応じて音が鳴る仕組みです。えぐちさんは、「ネーミングがとても良く、タイトル自体がコンセプトになっていますね。また、歯磨きを嫌がる子どもでも、楽しみながら歯みがきをする姿が容易に想像できました」とコメント。さらに、AIなどを活用して音や映像まで制作できれば、より説得力が増すとアドバイスされました。

総評

最後にえぐちさんから総評をいただきました。「皆さんの発表を聞いていても感じましたが、やっぱりネーミングはとても大切ですね。コンセプトがそのままネーミングになっていると、説明する時間も短く済みます。今後も、アイデアができたら必ずネーミングを付けてみてください。たとえポスターの制作でも、ビジュアルだけでなくコピーも書いてみることが大切です」と語られました。2日間を通して、アイデアの発想法だけでなく、アイデアを説得力のある企画へ発展させるための考え方についても学ぶ機会となりました。えぐちさん、貴重なお話をありがとうございました。