PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「いきるアイデア」

電通 アートディレクター

えぐち りか 氏Rika Eguchi

PROFILE
アートディレクターとして働く傍ら、アーティストとして作品を発表。著書絵本「パンのおうさま」シリーズが小学館より日本と中国、台湾で発売。広告、アート、プロダクトなどの分野で活動中。主な仕事に、TOKYO2020パラリンピック閉会式、ARASHI EXHIBITION “JOURNEY”、SoftBank「5Gプロジェクト」「iPhone12 PRO」、再生素材を活用したランドセル「NuLAND」プロダクトデザイン、オルビス「DEFENCERA」、PEACH JOHN、PARCO、Laforet原宿、FUJIMI、RANDA、KOE、CHARA、木村カエラ等のアートワークなど。イギリスD&AD金賞、スパイクスアジア金賞、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞、JAGDA新人賞、JAGDA賞、ACC賞シルバー、ひとつぼ展グランプリ、岡本太郎現代芸術賞優秀賞、街の本屋が選んだ絵本大賞3位、LIBRO絵本大賞4位、受賞多数。青山学院大学総合文化政策学部えぐちりかラボ教員。多摩美術大学グラフィックデザイン学科非常勤教員。 HP: https://eguchirika.com instagram:https://www.instagram.com/eguchirika/

第1部:講義「いきるアイデア」

講義1

アートディレクター、アーティストとして多方面で活躍されているえぐちさん。今回のプレックスプログラムは、特別に2日間にわたって行われました。3/3に行われた第1回目は、これまでえぐちさんが手掛けた数多くの作品を紹介しながら、いきる「アイデア」を生み出すための方法論を解説していきます。PEACHJOHN2016Springのアートディレクション、アパレルブランド「KOE」のディレクションなど最近の作品から、大学時代の制作から生まれた「バーンブルックのたまご」の展示まで、えぐちさんが歩んできたこれまでの人生と重ねながら講義は進んでいきました。

講義2

えぐちさんが制作を進める上で、最も大切にしている「アイデア」。ただの思いつきとは違う、いいアイデアには必ず「なるほど」という、見る人の納得と常にイコールであるべきとえぐちさんは語ります。見る人を強く惹き付けるえぐちさんの作品は、その作品を語る解説一つ一つにも「なるほど」の連続。学生たちもえぐちさんのアイデアのエッセンスを得ようと、真剣な表情で講義に聞き入っていました。電通に入社してから3年間は、企画がなかなか通らず自分の作品が1度も世に出なかったそうです。

講義3

何度、挑戦しても報われない時代だったと語るその3年間は、社内のイベントポスターなど頼まれたどんなに小さな仕事でも一生懸命作り、新人でもなんとか存在感を出そうと努力をされていました。どんなに苦しい状況でもコツコツと努力を積み重ねた結果、ようやく身を結び、サントリーの企業環境広告「なっちゃんがボスになった」が初めて自身の作品として世に出たエピソードは、学生たちを勇気づける内容でした。

講義4

「アイデア出しが大好き」と公言するえぐちさんは、セルフプロデュースもアイデアだと語ります。自分が起こす行動はそのまま自分の見え方となり、同時に自分の生活に結びつく。そして今まで得てきた経験が全てアイデアにつながっていくことを、えぐちさんは優しい口調でわかりやすく伝えて下さいました。「アイデアとは、どんな仕事にも必要で、だれもが意識せずに考えていること。すべての物事をプラスに変える、いきる活力だと思います。」と締めくくり、1日目の講義は終了しました。

第2部:ワークショップ「一番嫌いなモノを一番好きなモノに変える」

ワークショップ1

講義2日目は、前回から1週間後の3/10に行われました。1日目に発表されたテーマを皆1週間の間で考えてきてもらい、この日はいよいよ発表の日。まずはチームに分かれてそれぞれ自分の作ってきた作品をチーム内のメンバーに発表し合いました。全体に向けての発表を前にウォーミングアップ、皆さんの緊張は少しはほぐれたかな?グループ内で一通り発表したら、いよいよ本番。えぐちさんや参加者の前で1人ずつ発表していきます。

ワークショップ2

人によって嫌いなもの・苦手なものは千差万別。「ゴキブリ」「脳みそ」「幼虫」などグロテスクなものや、「人混み」「タバコの煙」などの公共の場の出来事、中には「上司!」と公言する人も。発表の中で、それぞれの嫌いなものが「カフェ」「アイス」「わたあめ」などなど、好きなものに変わる瞬間に、「おぉ~」と歓声が湧いた場面も。嫌いなものとすきなものの組み合わせの妙に、笑いが絶えない発表が続きました。「すごい!これどうやってつくったの?」「とてもよくできてるね」とえぐちさんも発表・作品に興味津々。

ワークショップ3

発表した作品一つ一つに、「地元の名産でお土産にしたら良さそう」「このアイデア、CMにできそうだね」と、次の表現につながる可能性を折り混ぜながら丁寧に講評されていました。今回のワークショップの狙いとして、ネガティブなものからポジティブなものへ変えようとする時、その過程の中で思いもよらない見え方、アイデアが生まれることを体感してほしかった、とえぐちさんは語りました。数多くの発表の中からえぐちさんが第1位に選んだ作品は、苦手な「ウミウシ」を好きな「アイス」に変えた「ウミウシアイス」。発表した学生には賞品が手渡されました。

総評

「1週間で皆さん本当によく頑張ったと思います。」と労ったえぐちさん。最後にみなさんへのメッセージとして、「嫌い」から「好き」への飛躍やギャップを利用すると作品はもっと面白くなるし、ただ人を驚かせるだけでなく「本当にいいね」「聞いてよかった」と、世の中にとっていいことに落とし込めることが大切です、と締めくくりました。