PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「PRACTICE IN PROGRESS ―実践と判断がクリエイターをつくる―」

TRAP STUDIOS ファウンダー / アートディレクター・グラフィックデザイナー

門馬 翔 氏Sho Monma

PROFILE
1984年東京生まれ。2002年に渡米し、2008年にFashion Institute of Technologyを卒業。ニューヨークのGOTO DESIGNにて、現代アート領域のビジュアルアイデンティティや出版物のデザインを手がけ、Gagosian Galleryをはじめとする国際的なアートプロジェクトに携わる。2018年に独立。2022年にTRUE ROMANCE ART PROJECTSを設立し、現在はTRAP STUDIOSとして活動。グラフィックデザインとアートディレクションを軸に、Onitsuka Tiger、Levi Strauss & Co.、IKEA、Nike, Inc.などのグローバルブランドと協働する。INDEX GROUPの顧問クリエイティブディレクターとして、建築·都市開発·インフラ領域のプロジェクトにも携わる。近年はアーティストとしても活動し、作品制作を通じて表現の可能性を探究。東京デザインプレックス研究所「プレックスプログラム」登壇。

第1部:講義「PRACTICE IN PROGRESS - 実践と判断がクリエイターをつくる」

講義1

今回のプレックスプログラムは、初めてのご登壇のTRAPSTUDIOSファウンダー 門馬翔さんをお迎えしました。これまでニューヨークと東京という異なる現場でアートディレクションに携わってきた門馬さん。現在は建築・都市開発・インフラ領域におけるプロジェクトのクリエイティブディレクションやアーティスト活動も行い、幅広い分野で活躍されています。本日はそんな門馬さんに「PRACTICE IN PROGRESS ―実践と判断がクリエイターをつくる―」というテーマのもと、自身の歩みを共有していただきました。

講義2

門馬さんの原点は、90年代の裏原宿カルチャーへの憧れでした。最初はファッションデザイナーを志し海外の大学を目指した門馬さんでしたが、渡米先のコミュニティ・カレッジではその熱が急速に冷めてしまったと振り返ります。しかし旅先で言葉が通じない少女とコーラを分け合って飲んだ経験から、コミュニケーションデザインという学問に出会ったといいます。さらに、『VICE Magazine』を読んで衝撃を受けたことも、ビジュアルで人と人をつなぐ仕事を志す大きなきっかけになりました。

講義3

その後FITに入学した門馬さんが大切にしていたのは、「遅れより凡庸を恐れよ」という姿勢です。「とにかく人とは違うものを作る、予想外のものを作るという気概を持っていました」と話し、卒業制作ではポスターが主流の中あえてアートフィルムを選んだというエピソードが紹介されました。卒業後に入社したアルファルファ・スタジオでは、ディレクターのラファエル氏から大きな影響を受け、「Being a designer is standard 24/7」という言葉や、明確なビジョンを持つことの強さを学んだと話されました。

講義4

フリーランス時代には、未経験のメガネのデザインの依頼に「できる」と即答し、独学で3Dソフトを習得しながら形にした経験を紹介。「できるからやるのではなく、自分をその環境に飛び込ませてから考える」という姿勢を語りました。その後入社したGOTO DESIGNでは、デザインの背景や文脈を重視する上司のもとで、「文脈(コンテクスト)」の重要性を学んだそうです。「アーティストの美術史における位置づけや、影響を受けたもの、表現の方向性などを多角的に理解していなければ、デザインはできない」と痛感したと話します。

講義5

帰国後に在籍したWieden+Kennedy Tokyoでは、ナイキやIKEAの案件を通して広告特有のスピード感と、妥協しない粘り強さを学んだと振り返りました。その後、渋谷にギャラリースペースを開設し、そこで出会った仲間とともに始めた活動が、現在のTRAPSTUDIOSへとつながっていったといいます。講義の最後には、ファッションデザイナーのヴァージル・アブローの言葉「大切なのはアイデアと視点を持つことだ」を引用し、肩書きにとらわれず様々な領域に挑戦し続けてきた自身のキャリアを、過去の点と点がつながってできた道として締めくくりました。

第2部:質疑応答

質疑応答1

講義後の質疑応答では、門馬さんのクリエイティブ哲学に迫る質問が相次ぎました。「Q.たくさんのアイデアがある中で、必要なものだけを見極める方法はありますか?」「A.まずはゴミを捨てるようにアイデアを全て出し切ることが重要です。最終的な判断は直感で行います。」「Q.作品に自信が持てない時はどうしていますか?」「A.理想と現状にギャップがあるからこそ向上心が生まれると思います。とにかく人に見せて場数を踏んでみてください。」

質疑応答2

「Q. 厳しい現場での緊張感の乗り越え方は?」「A. 自分の役割を明確にして、上の人たちをどう助けるかを考えることが前提ですが、現場がピリピリした際には言葉遣いや雰囲気作りを心がけています。」「Q.時間がないなか、クオリティを限界まで上げるにはどうしたらいいですか?」「A.時間に追い詰められた極限状態でブレイクスルーが起きることがあります。異分野のリサーチから得た点と点を繋ぎ合わせることで、たとえ後付けに見えるコンセプトであっても、デザインが元々内包しているポテンシャルを引き出せることがあります。」

質疑応答4

最後に、デザインを学び始めた学生たちに向け、アドバイスをいただきました。「オリジナリティを追求しなければ、という悩みは一旦忘れていい。まずは、いいデザイナーを徹底的にリサーチし、模倣することから始めてみてください」。そのうえで、見た目だけでなく、なぜその表現に至ったのかを学び、自分なりの考え方を育てていくことが大切だと語りました。さらに、「海外で活動する際は、日本のデザインや文化をよく知っておくことが重要」と付け加えました。過去の点と点がつながって今があると語る門馬さんの言葉は、これから道を切り拓いていく学生たちにとって大きな指針となったようです。貴重なお話をありがとうございました。