テーマ:「往復するデザイン」
アートディレクター / プロダクトデザイナー
佐々木 拓 氏Taku Sasaki
- PROFILE
- 2008年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業後、コクヨ入社。現在、コクヨYOHAK DESIGN STUDIOに所属しながら、KANAISASAKIとしても様々なデザインに取り組む。 受賞歴にJAGDA新人賞2022、ADC賞2020-2021、Good design award金賞/ベスト100、Reddot design award、メディア芸術祭審査員推薦作品選出、Kokuyo design award 2005優秀賞、同2014社内特別賞など。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「往復するデザイン」
講義1
今回のプレックスプログラムは、アートディレクター/プロダクトデザイナーの佐々木拓さんをお迎えします。コクヨのクリエイティブチーム「YOHAK DESIGN STUDIO」に所属し、グラフィックやプロダクトなど、領域を横断しながら活動されている佐々木さん。今回は、自身にとって大切なテーマだという「往復するデザイン」を軸に、デザインの考え方や組織づくり、企業ブランディングの事例についてお話しいただきます。「右往左往しながらデザインしていくことで、どんなデザインが出来上がるのかを紹介できたらと思います。」

講義2
佐々木さんが考える「往復」とは、プロダクトデザインとグラフィックデザインなど、異なる分野を横断すること。また、会社と個人といった異なる立場を行き来しながら考えることも「往復」の一つだといいます。実際に、金井あきさんとのユニット活動では、それぞれが制作した案を見せ合い、データを往復させながら制作を進めています。「これはいいね」「これは既視感があるからやめよう」と意見を交わしながら進めることで、自分一人では気づけなかった視点を取り入れられるだけでなく、自身のデザインを判断することにも迷いがなくなったと佐々木さんは話します。

講義3
YOHAK DESIGN STUDIOには、空間・プロダクト・グラフィックなど異なる領域のデザイナーが集まっており、すべての制作物には誰が携わったのかが分かるようにクレジットが明示されています。これは、企業に属しながらも個人として責任を持つ姿勢を大切にし、インハウスの組織でありながら、社外ともつながりを持てる環境を目指しているためだといいます。「会社の中に隠れた組織ではなく、社会とどう接点を置くかを考え、会社と社会の両方とのつながりを大切にしています。」

講義4
続いての話題は、コクヨ創業120周年を機に行ったCIリニューアルの事例についてです。この背景には、顧客にコクヨに対する認識を変えてもらう「パーセプションチェンジ」という狙いがありました。「ロゴデザインは、コクヨという人格を保ちながら、“少し新しくすること”を重視しました。過去の要素を見直しながら、頭文字のKKYの等間隔な構造やパターン展開の考え方を取り入れ、それらを活かすようにデザインしました」と佐々木さん。また、シンプルでありながら多様な展開ができることも意識し、「コクヨらしさ」と「新しさ」を往復しながら、デザインを形にしていったと話されました。

講義5
CIリニューアルでは、ロゴそのものだけでなく、その決め方や伝え方についても設計した佐々木さん。社内だけで判断すると視点が偏ったり保守的になったりするため、外部のデザイン事務所とも意見交換を重ねながら進めたといいます。ロゴデザインが完成してから発表するまでには、約1年もの期間がありました。「ロゴを商品にどのように展開するのか、また、“なぜこのロゴなのか”をどのように伝えるのかなど、デザインそのものだけでなく、それ以外にもすごく時間をかけました」と振り返ります。

第2部:ワークショップ「FOUND GRAPHICS」
ワークショップ1
後半は、「FOUND GRAPHICS」と題したワークショップが行われました。佐々木さんは、「海外のホームセンターのECサイトを見て、商品の色・形・レイアウトなどを純粋にグラフィックとして捉えてみてください。そこから面白いと感じるものやディテールを探しましょう。“自分の引き出しにはない、でも何か気になる要素”を発見することが目的です!」と説明。見慣れないものの中にある「気になる」を発見することで、自分の引き出しが増えていくと話されました。学生たちはそれぞれ商品ページを閲覧し、気になった画像を収集しながら、その面白さについて考えます。

ワークショップ2
学生たちが選んだ画像の中から、佐々木さんが気になるものをピックアップ。スポンジや照明器具、工具、インテリア用品など、日本ではあまり見られない形や色使いに注目が集まりました。「その国では普通かもしれない形やデザインが面白いと感じるのは不思議ですよね。あまりデザインされすぎていないものにも独特な魅力があったり、不格好さが残るデザインに愛着が湧いたり。このように、意図していない面白さを見つけることが、自分なりの視点や引き出しにつながると思います。」

総評
最後に、佐々木さんから総評をいただきました。「今まで知らなかったことを知ったり、いろいろなデザインに出逢ったりして、それを面白いなと思う瞬間が結構好きで。気づきや出会いを面白がれることは、デザイナーにとってすごく大事なんじゃないかなと思います。」異なる領域や立場を行き来し、迷いや発見を楽しむことで広がっていくデザインの可能性。佐々木さんの言葉から、日常の中の「気になる」を大切にし、自分なりの視点を育てていくことの大切さを学ぶプログラムとなりました。
