PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「まんなかのデザイン」

ライオン株式会社 デザイナー

斉藤 純一 氏Junichi Saito

PROFILE
1994年、東京藝術大学大学院(美術研究科 ビジュアルデザイン専攻)修士課程を修了。同年、ライオン株式会社に入社。広告制作部デザイン室への配属以来、30年以上にわたり一貫してパッケージデザイン開発に従事。2026年現在 コミュニケーションデザイン部クリエイティブ開発室パッケージデザインチームリーダー。2021〜長岡造形大学 非常勤講師。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。 【制作履歴】クリニカ、システマ、NONIO、キレイキレイ、バファリン、NANOX、などのパッケージデザイン制作、ディレクション 【受賞歴】グッドデザイン賞、KIDS DESIGN AWARD、ジャパンパッケージングコンペティション、日本パッケージデザイン大賞など

第1部:講義「まんなかのデザインについて」

講義1

本日は、デザイナーの斉藤純一さんにお越しいただきました。今回は「まんなかのデザイン」をテーマに、パッケージデザイン全般に関わるお話をしていただきます。講義冒頭では、これまで手掛けてきたハンドソープやボディソープ、衣料用洗剤など、身近な日用品のパッケージ事例をご紹介いただきました。「生活者に商品の価値を正しく伝え、購買・使用を促すこと。そして、快適な使用体験を通じて継続利用を生み、習慣として定着させること」が斉藤さんのデザインポリシーだといいます。

講義2

パッケージデザインは、食品・日用品・医薬品・ペット用品など幅広いカテゴリーに分かれており、カテゴリーが変わればデザインの文法もまるで違うと話す斉藤さん。「今回のテーマの“まんなかのデザイン”とは、各カテゴリーにおける定番に近い存在であり、多くの生活者に共通認識として受け入れられているデザインのことを指しています。その背景には、生活者が無意識に期待している”カテゴリーらしさ”が存在しており、これは長い年月をかけて自然に形成されてきたものです。」

講義3

ここで例として紹介されたのは、歯磨き関連の商品です。「売り場を想像したとき、全体的に清潔感や爽快感を想起させる色や表現が思い浮かびますよね。これこそが、生活者が無意識に期待している“カテゴリーらしさ”です」。そのイメージから大きく外れたパッケージは売り場で見過ごされてしまうこともあるため、「カテゴリーらしさとは比較検討の土俵に立つための入場資格のようなものであり、まず生活者に認識してもらうために必要な要素であると語られました。

講義4

しかし、時代とともに生活者の感覚が変化することで、かつての“まんなか”も古いものとして認識される日が来ることもあるといいます。つまり、“まんなか”とは固定されたものではなく、変わりゆく時代の中で、そのカテゴリーにおける“今”の定番を指す概念なのだそうです。「しかし、“まんなか”から変えすぎれば既存顧客が離れ、変えなさすぎれば新規顧客を取りこぼしてしまうという難しさもあり、適切なアップデートが必要です。ブランドには、『変える勇気』と『変えない勇気』の両立が求められるのです」と話されました。

第2部:ワークショップ 「お菓子のまんなか」

ワークショップ1

後半のワークショップでは、「お菓子のまんなか」をテーマに個人ワークに取り組みます。数多くあるお菓子のカテゴリーの中から、学生たちはそれぞれ好きなお菓子のカテゴリーを選び、そのカテゴリーにおける「今のまんなか」の分析と、「次のまんなか」になり得るデザインの考案に挑戦しました。「今のまんなか」にある価値やイメージを整理しながら、各商品の持つ課題や可能性に着目して構想を進める学生たち。ポテトチップス、ラムネ、クッキー、グミなど、さまざまなカテゴリーで分析と提案が行われました。

ワークショップ2

ある学生は「たまごボーロ」をカテゴリーに選択。「安全性・健康的・丸い可愛らしさ」を「今のまんなか」と分析し、ひよこのイラストを用いたポップなデザインとして整理しました。そして、味の単調さに着目し、チーズ味や枝豆味など、大人も楽しめるたまごボーロを考案。「次のまんなか」として、「大人もたまごボーロ」というコンセプトのもと、にわとりをモチーフにしたパッケージデザインを提案しました。「にわとりの絵をシルエット表現にするなど、少し落ち着いたデザインで差別化すると、より大人向けの洗練されたパッケージになりそうですね」と評価されました。

ワークショップ3

「うすしおポテトチップス」を選択した学生は、「中身がわかる写真を使用する」「おいしそうな色味を用いる」といった視覚的な分かりやすさを「今のまんなか」として分析しました。また、内容量の表記が強調されていることに気づいたことから、「次のまんなか」として、カロリー表示を強調するデザインや、筒状パッケージに目盛りを付けることで食べる量を調整しやすくするデザインを提案しました。近年高まる健康志向や、それに伴うライフスタイルの変化(持ち歩きボトルやカロリー管理など)とも接続されており、日常の観察から得た気づきをデザインへと落とし込んだ点が評価されました。

総評

最後に斉藤さんから総評をいただきました。「自分にとっての”まんなか”って沢山あると思うんです。世の中は広くて、ものすごい数のカテゴリーもあります。その沢山の要素をしっかりと記憶に留め、視野を広く持つことを忘れなければ、自分の中の引き出しに集めたものをアウトプットしすくなると思います。皆さんそれぞれの世界観をうまく想像し、作品に取り入れていけば良いデザインができていくのではないかなと思います。ぜひお試しください。」斉藤さん、貴重なお話をありがとうございました。