PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「人が集う心地よい体験」

Puddle代表/建築家

加藤 匡毅 氏Masaki Kato

PROFILE
工学院大学建築学科卒業後、隈研吾建築都市設計事務所、IDÉEを経て、2012年にPuddle 設立。これまで15を超える国での建築・インテリアを設計。各土地で育まれた素材を用い、人の手によってつくられた美しく変化していく空間設計を通じ、そこで過ごす人の居心地良さを探求し続ける。主な作品として「TSUCHIYA KABAN KYOTO」「DANDELION CHOCOLATE」「AGNÈS B. JAPAN Head office」「sequence MIYASHITA PARK」「IWAI OMOTESANDO」等。「カフェの空間学 世界のデザイン手法」を出版。

第1部:講義「人が集う 心地よい体験」

講義1

本日はPuddle代表で建築家の加藤匡毅さんにお越しいただきました。加藤さんは隈研吾建築都市設計事務所、IDÉEを経て、2012年に建築事務所「Puddle」を設立。国内外の様々な建築・インテリアを手掛け、居心地の良い空間を生み出し続けています。今回は加藤さんがどのように空間づくりと向き合われているのか、詳しくお話を伺っていきます。

講義2

「幼いころから絵を描くことが大好きで、それを続けていたら自然と建築家になったような気がします」と加藤さん。これまでの仕事を通して、いまあるモノを再生させていくリノベーションや、様々な人々との出会いが大きな影響を与えたといいます。「改めて振り返ってみると、大好き!という想いを糧に『空間を作ること』と『生活を作ること』を行ってきたというのが自分なんだと思います。」

講義3

今日のテーマは、加藤さんがいつも考えているという「心地よい体験」。これを実現するためには、【人の営み】【3つのあいだ】【不可逆的体験】【図と地】【異なる視座】という5つの要素が必要になるそうです。【人の営み】とは、国・宗教・性別・年代問わず、人間であれば心地よく過ごす場所の共通点があるのではないかという視点。【3つのあいだ】とは、空間(Place)・人間(People)・時間(Periods)の3つの要素をバランスよく取り入れること。

講義4

【不可逆的体験】とは、心揺さぶられる本を読んだ後の「読後感」のようなもので、後には戻れない体験のこと。空間に足を踏み入れたことで、感じ方やモノの見方が変わること。【図と地】とは、ビジュアル・形・デザイン(図)、土地・風土・文化(地)のこと。デザイン戦略の裏に潜んでいる大切な想いも教えていただきました。【異なる視座】とは、富裕層もバックパッカーも国籍が違う人も、その場所を好きになってもらえるような街づくりをすること。

第2部:ワークショップ「ショップハウスの展開をデザインする」

ワークショップ1

加藤さんが手掛けた瀬戸田のショップハウス(店舗付き住宅)の事例をもとに、チームでショップハウスの展開を考えるワークショップです。まずはそれぞれのチームで身近な場所を選定し、そこで発生する課題や問題を挙げていきます。それらの課題を解決し、かつ居心地の良い空間にするためのショップハウスとはどのようなものでしょうか。

ワークショップ2

学生が考えたアイデアを何点か紹介します。◆静岡県富士山空港周辺→人が集まりづらい→ここでしか買えない農産物の専売所を設置し、観光客に集まってもらい地域の活性化につなげる。◆東京・谷中→地元の人、新しい住人、観光客が交わる場所がない→地元の食材を使った料理を提供するレストランをつくり、人が交流しやすい場所を提供する。

ワークショップ3

◆埼玉県南栗橋駅→終電を逃した人が途方に暮れるということで有名→終電を逃した人が集える場所や宿泊所を作り、終電逃したけどいいことあったなと思い出になる場所に。◆神奈川県川崎市→坂道がとても多く、坂の上に住む高齢者が出かけづらい→坂の上に世代問わず集まりやすい和な雰囲気のお店をつくる。

総評

「課題と解決との間に『建築』があるということを、楽しんで考えてくれて嬉しく思います」と加藤さん。すべてのチームの提案に対し、とても丁寧に感想を述べてくださいました。学生たちはワークショップを通して身近な地域を見つめ直し、デザインの可能性を改めて感じた時間となりました。加藤さん、本日はありがとうございました。