PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「続7・LOVE ♥人間」

資生堂アートディレクター/アーティスト

成田 久 氏Hisashi Narita

PROFILE
1970年生まれ。アーティスト、資生堂宣伝制作部アートディレクター。資生堂の様々なブランドのアートディレクションを経て、現在はUNO、SHISEIDO、THE GINZA、インテグレートなどを担当、またフリーペーパー「ギンザドキドキ」の編集長でもある。NHK大河ドラマ「八重の桜」のポスタービジュアル、「ただいま、東北♥」キャンペーン企画も。雑誌「装苑」にて「舞台 JAM PLAY」を連載。展覧会も多数開催。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「LOVE 人間」

講義1

今回の講師は、資生堂のアートディレクターの成田久さん、今年で8回目のご登壇です。成田さんは、誰もが見たことがあるCM やポスターなどの広告のクリエイティブを手がけられています。「僕は入社当時から自分の職種をひとつに決めたくなくて、上司にCMをつくりたいんです!と言ってやったり、服が好きなのでスタイリストにもビジュアルからイメージを伝えたり、講師や司会者として自分をディレクションしたり、といろいろやっています!」イントロダクションムービーでは、成田さんの広告に起用された著名な俳優・モデルの方達も一緒に紹介されます。鮮やかに記憶に残る広告をどう作り上げているのか、学生は興味津々です。

講義2

はじめに、資生堂でのお仕事を紹介していただきます。TSUBAKI のリニューアルの広告では福山雅治さんを起用しました。「人に髪を洗ってもらうのは気持ちいい」というイメージからスタートしたキャスティングは、凛とした佇まい、ターゲット層、椿の生産地である長崎との関係など、様々な要素において福山さんが「どんぴしゃ」だったそうです。女性陣は、各シリーズのイメージに合わせて、正統派な美しさの杏さん、美しい少女性をもつ三好彩香さん、気品のある美しさの鈴木京香さんを起用しました。制作では商品もコピーもしっかり伝わる広告としての機能と、優しさと本質感という商品イメージを兼ね備えた広告を目指したそうです。

講義3

資生堂の枠の外でも多様な女性像をつくりたかったという成田さんは、ご自身の会社キュキュキュカンパニーを立ち上げます。PARCOの「夏の欲」は、スイカやアイスをファッションの一部として携えるモードな優香さんが印象的な広告です。当時お茶の間で親しみのあるキャラクターだった優香さんがモデルとして注目されるきっかけとなりました。成田さんが初めてご自身で撮影に関わる全てのスタッフを集めたお仕事で、全員にソウルがある現場でのやりやすさを実感したそう。「撮影では、すいかをクラッチバッグのように持ってもらって、ちょっとSっ気がある、女の子がなりたい女性像を目指しました。」と成田さん。

講義4

大河ドラマ「八重の桜」のメインビジュアルのお仕事は、資生堂で一緒に働いていたNHKのプロデューサーに大河ドラマをずっと見続けているという話をしたのがきっかけでした。「NHK にもディレクターさんがいるし、女性が主人公でもあるこの年を逃したら、もう一生できない仕事だと思ってやりました。好きなものは言っておいたほうがいいです。」他にも、タイトルと一編のエッセーからスタートする劇団はえぎわの舞台のアートディレクションや、テキスタイルからリボン作りをしたハローキティ40周年を記念したアート作品など、好きと結びついたお仕事についてお話ししていただきました。

第2部:ワークショップ「ラブレターを書こう!」

ワークショップ1

後半のワークショップは恒例の「LOVE ♥人間」。学生には事前課題として、好きな人、ものに宛ててラブレターを書いてきてもらいました。好きな人やものと仕事をすることを、ワークショップの限られた時間だけで終わらせずに、1回1回真剣に考えてほしいという意図があるそうです。「好きな気持ちは言霊にして伝えていいと思うし、僕はそれでいいことしかなかったから」と成田さん。くじ引きで引かれた順に発表していきます。「クリエイターはプレゼンテーションをしてお仕事をゲットしていくんだからね。」学生たちもクリエイターとして将来好きな人・ものとの仕事をするために、照れてはいられません。

ワークショップ2

学生のラブレターを紹介します。トップバッターの学生は、誰に宛てたのかあえて言わずにラブレターを読み始めました。「なんでも起用にこなすあなたを尊敬しています。ーとっても大好きドラえもん。」なんと、漫画のキャラクターに宛てたラブレターでした。小さい頃から見続けて、大人になった今もヒーローだと学生は話します。ある書籍に向けてラブレターを書いた学生もいました。その本を読むことで、人と自分を比べたとき、辛い日々が続いたときも頑張れたといいます。学生のLOVEを聞いて、成田さんは「20代は大変だよね、嫉妬で苦しいし。でもそれがあるから次の30代があるんだからね。」とエールを送ります。

ワークショップ3

LOVE の発表は続きます。引退したサッカー選手に愛を伝えたいという学生は、ラブレターだけでなく、サッカー観戦ができるライブハウスの空間デザインも持参しての告白です。「ここまでしてきたのは初めて!」と成田さんも驚いていました。その後も音楽や言葉を通じて励ましてくれたアーティスト、成長を見せ続けてくれるアイドル、なぜかずっと夢に出てくるハムスターなど、個性的なLOVE が発表されました。どの学生も、写真集やライブグッズなどの宝物を紹介しつつラブレターを読み上げました。それぞれのLOVE の熱量に、成田さんは本人に届くように送ってみることを勧めます。

総評

最後に総評をいただきます。「今年はみんなキラキラ度が高くて、8年でいちばんクールでした。何かについて書くことはそのことに集中して真剣に考えることだから、その癖をつけるといいと思います。みなさんに好きな人がいてよかった。憧れの人はいつまでもいるとは限らないので、今すぐは実現しなくても、いつかできると思って動いた方がいいです。僕は自分が小さいときに見ていた、きらきらしていた人やものを今のお客さんやテレビの視聴者さんに届ける仕事をする側になりました。みなさんもできると思うので、がんばってください!」