PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「パッケージとブランディングデザイン」

cosmos代表/アートディレクター

内田 喜基 氏Yoshiki Uchida

PROFILE
1974年静岡生まれ。博報堂クリエイティブ・ヴォックスに3年間フリーとして在籍後、2004年cosmos設立。広告クリエイティブや商品パッケージ、地場産業のブランディングにとどまらず、ライフワーク「Kanamono Art」ではインスタレーション・個展を開催。その活動は多岐にわたっている。受賞歴:D&AD銀賞/銅賞、Pentawards銀賞/銅賞、OneShowDesign銅賞、London international awards銅賞、Red dot design award、NYADC賞、日本パッケージデザイン大賞銀賞など。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「パッケージとブランディングデザイン」

講義1

本日のプレックスプログラムの登壇者は、アートディレクターの内田喜基さんです。昨年12月に初めて講義を行って約1年、再び東京デザインプレックス研究所に来てくださいました!今日は、内田さんが手がけたパッケージデザインや、商品ブランディングに携わったものの実物を直接持ってきて下さいました。会場に並べられたたくさんの商品に、参加した生徒たちも講義が始まる前から注目しています。今回の内田さんの講義はデザインを勉強する生徒たちにとって、特に気になる分野である、「パッケージデザイン」「ブランディング」の内容を主にお話されるそうです。期待が高まる中、講義はスタートします。

講義2

誰もが一度は目にしたことのあるパッケージや、デザイナー就職希望の学生にとって憧れの分野であるブランディングの案件を数多く手がけている内田さん。デザイナーになるまでの経歴も華やかだろうという予想に反して、内田さんの口からはこんな一言。「僕はそんなにエリートではなくて…運良くこの世界で働けていると思っています。」幼少期から中学2年生まで勉強はほとんどせず、田んぼで珍しいドジョウを捕まえる日々だった…という、今の経歴からは予想できないような意外な過去を語ります。高校入学からデザイン業界に入るまでの経緯も赤裸々に話して下さいました。

講義3

「ここに参加している人で、自分はデザイン業界に行くには遅いと思っている人がいたら、僕みたいな人もいるということです。僕自身もまさに、今頑張っている最中です。」内田さんのこの言葉に、参加した多くの学生たちは勇気をもらった様子でした。その後、実際の案件の紹介と、その時の制作のアプローチについて話は進みます。「今回パッケージの実物を持ってきたのは、雑誌やWebの画面上では表現できないところ、ちゃんと見えてこないところを、実物をみて体感して欲しかったためです。そういうところがデザインで大事なところなので、細かいところを見てほしいですね。」学生たちも実物を手に取って、素材感やディティールを真剣に見つめています。

講義4

特に現在注目されているブランディングという言葉について、内田さんは次のように話します。「今はこの言葉はブームのように使われています。ですが、このブランディングというものは表層的なデザインよりももっと深い設計の部分を指します。今まで自分がやってきたキャリアの中でも、これらを扱う際は違う脳みそを使うような感覚で、クライアントとコミュニケーションしていかなければならないと感じて仕事をしています。」より長期的な思考が必要になるため、内田さんはブランディングの案件は、農作物を作ることに似ていると表現しています。1年先、3年先、さらに先のことを考えてデザインすることの難しさや、やりがいを講義ではお話ししてくださいました。

第2部:ワークショップ「パッケージブランディング」

ワークショップ1

今回のワークショップは「和菓子屋のパッケージ・ブランディング」の提案です。内田さんから、クライアントとなる和菓子屋さんの概要をまとめた資料が配られました。コンセプト、ターゲット、クライアントが商品を通して伝えたいこと、デザインの要望、商品写真がその資料に記載されています。学生たちは、実際の仕事のように取り組めるこの課題に気合が入る反面、「この短時間でかたちにできるのか…?」という不安な様子も伺えます。デザイナーとして企画提案するためのトレーニングになる課題とも言えます。制限時間は約20分、アイデア出しから提案に落とし込むまでのスピード感が求められます。

ワークショップ2

「ワークショップの時間は、せっかくなので楽しんでもらえたらいいなと思います」と、内田さんから一言。あまり硬く難しく考えすぎないようにと、励まして下さいます。「和菓子のパッケージ・ブランディング、とテーマを挙げましたが、短い時間なので自分たちの好きなところから考えてもらえるといいです。パッケージが好きな人はパッケージを考えて、キャッチコピーやコンセプトを考えることが得意な人はそこから決めていくといいです。」とアドバイスをいただきました。まずは個人でアイデアを出し、その後グループになり各アイデアをまとめて提案内容を仕上げていきます。

ワークショップ3

開始から20分が過ぎたところで、いよいよ提案内容の発表です。先に内田さんがお話しされたように、各グループの発表はそれぞれ違ったアプローチから提案がなされました。最初にキャッチコピーを考えた後にパッケージへ落とし込んだものや、まずパッケージから考えて商品がより際立つような仕組みを考えたもの「パッケージブランディング」など、デザインに落とし込むまでのプロセスがグループによって異なりました。発表した提案の中には、思わず内田さんも「とても素晴らしいです」と絶賛したものもありました。デザイナーとしての活躍を目指す学生たちにとっては、嬉しいお褒めの言葉。一歩前進です!

総評

それぞれの発表に対し内田さんは、学生たちが見落としていた視点や改善点を丁寧に説明してくださいました。全てのグループの発表を終え、内田さんから本日のプレックスプログラムの総括です。「今回の講義は『パッケージとブランディング』というテーマで話しましたが、僕が今までやってきたことをできるだけ包み隠さず話しました。ワークショップは、20分という短い時間でしたが、そんな中でも発表でいいなと思うものがあったので良かったです。大変ではあったと思いますが、これからも考える筋肉をつけて、それぞれの課題に向き合ってもらえればいいなと思います。」