PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「スタイルのある空間」

インテリアデザイナー/リラクゼーションプランナー

山口 麻希子 氏Makiko Yamaguchi

PROFILE
インテリアデザイナー、リラクゼーションプランナー。HEADSTARTS代表。2003年株式会社ワンダーウォール入社。プロジェクトリーダーとして商業施設の設計・デザインに従事。2010年に独立しHEADSTARTSを設立。「オアシスは砂漠にあるからオアシスであるように、都会にオアシスとなるようなリラクゼーション空間を、環境を含め、トータルでデザインする」ことをテーマに、商業施設、ホテル、スパ、サロン、レストラン、カフェ、ラウンジ、医療機関、個人宅やオフィスなどのインテリアデザイン。また、AFTERNOON TEAやJINSなど多数のショップスペースデザインを手掛ける。その他、リラクゼーションイベントのプランニングや企画デザインも行う。2016年「CERSAIE Ceramics of ItalyJournalism Award 2016」受賞。2022年IAUD国際デザイン賞2021 インテリアデザイン部門金賞受賞。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「スタイルのある空間」

講義1

本日のプレックスプログラムは2回目の登壇となるインテリアデザイナーの山口麻希子さんに行っていただきます。山口さんはデザイン事務所ワンダーウォールを経て、2010年ヘッドスターツを設立します。現代を砂漠に例え、都会の中の心を潤すオアシスとなるような気持ち良いリラクゼーション空間を目指し、多方面で活躍されています。未だ女性の活躍が遅れていると言われている空間業界で、立ち位置を築かれている貴重な存在の一人である山口さん。まずは山口さんの学生時代のお話からスタートです。

講義2

幼い頃から絵を描く事や物事を空想する事が好きだったという山口さんは、既に高校生の時にはインテリアデザイナーになりたいと思っていたそうです。そして武蔵野美術大学の建築学科に入学し、インテリアデザイナーへの道を歩んでいきます。そこで、建築についての様々なノウハウを学び、大学4年生の卒業制作では、二階建てのお茶室を設計します。この時山口さんは、設計だけではなく、その空間をもつくりたいと思うようになっていきます。そして同時に、デザインだけをするデザイナーではなくて、ちゃんと裏づけのあるデザインができる人間になりたいという思いから、大学卒業後、家具の職人学校に入り、技術を磨く日々を送ります。

講義3

そして在校中に作った和家具が労働大臣賞を受賞します。その当時の状況を、ここでしか聞けない制作秘話も交えて解説していただきました。その後山口さんは、インテリアのデザイン会社に就職するのですが、この学校で培った製図の授業や物を実際に作ったという経験が強い武器になったそうです。そして世界を舞台に仕事をするワンダーウォールの片山正通さんの元でプロジェクトリーダーとして活躍し、2010年、意を決して独立します。

講義4

しかし、独立当初、社会は不景気で、すぐに仕事を得られることもなく、その道は険しかったと山口さんは言います。しかし、周りの人の助言や山口さん自身のひたむきな努力によって、徐々に依頼が増え始めます。アフタヌーンティーリビングのコンペのお話では、実際に作成した平面図や模型を元に解説していただきました。山口さん曰く、「最近はCGを使用している人が多いですが、私は模型を使います。模型だと否が応でも360度見えてしまうので、想像がつきやすく、打ち合わせもスムーズになる。そして何よりわかりやすいんです。」そう話す山口さんから高いプロ意識がうかがえました。こうして山口さんの現在に至るまでの歩みをたっぷりとお話していただき、後半のワークショップへと移ります。

第2部:ワークショップ「お店の企画デザイン提案」

ワークショップ1

今回のワークショップのお題は「かまくら晴々堂」の企画デザイン提案。鎌倉の「和漢のお茶とかりんとうのお店」という現在のお土産店的スタンスから、もっと幅広い商材を取り扱う、「漢方や自然派のブランドショップ」への転換を狙っています。その店舗の企画デザイン提案を、事前に出された課題を元に発表してもらいます。以前行われたプレックスプログラムでは提案された学生のアイデアが商品化されることになったりと、良い案があれば採用される可能性も大いにあるという事で、学生はどことなしか気合が入っているように見受けられます。

ワークショップ2

観光地の鎌倉長谷にある「かまくら晴々堂」ですが、「観光地のおみやげ屋」ではなく“良いもの(お店や扱う商品)に出会えた喜び”を感じてもらえる店作りをコンセプトに、これまでにない漢方の新しい楽しみ方を提供しています。今回の企画は、そのお店のコンセプトを五坪という限られた空間でどれだけ伝えられるかが鍵となります。それぞれグループで話し合い、案をまとめて代表者が発表します。なんとサプライズゲストとして「かまくら晴々堂」のプロモーションの担当者にも駆けつけていただき、会場は大いに盛り上がります。さて、山口さんや担当の方を驚かすようなアイデアは出てくるのでしょうか。

ワークショップ3

そして、いよいよ発表です。各グループ違った視点や媒体からのアプローチ方法を提案していきます。中でもエンターテインメント性に着目したワークショップ型の漢方セミナーや、若者をターゲットにした漢方入りのコラーゲンBOXの販売といった斬新なアイデアに山口さんも「とても面白いです!」と絶賛されていました。また、今回空間を学ぶ学生が多いこともあってか内装デザインを考案してきた人も多く、それぞれの持ち味を生かした発表になりました。担当の方も「すごく参考になりました。具体的に挑戦してみたい案もいくつかあったので、是非相談してみたいです。」と、とても満足されていた様子でした。みんなの案は果たして採用されるのか、今から楽しみです。

総評

最後に山口さんから総評です。「皆さんのアイデア、すごく参考になりました。こういった閃きやアイデアはとても大切で、日々頭を使って一つのモノを突き詰めて考えるように意識するとさらに力がつきます。ジャストアイデアのままで終わらせず、ブラッシュアップを重ねたり、また、1つのアイデアに固執せず、新しいアイデアを生み出すことにも挑戦していって下さい。そういう作業を繰り返してどんどん自身のデザイン力を磨いていって欲しいと思います。」