PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「子供たちにドキドキワクワクをデザインしよう」

こどもデザインプロデューサー

日比野 拓 氏Taku Hibino

PROFILE
1972年神奈川県鎌倉市生まれ。株式会社日比野設計/取締役専務/兼幼児施設担当統括責任者を務める。幼児施設に特化したブランドYoujinoShiroを立ち上げ、関わった幼稚園、保育園、こども園、こども関連施設に関する設計は540を超え、更にヨーロッパやアジアでの計画も進行している。またデザイン以外にも、ワークショップや講演会、国内外の子どものデザイン視察ツアーの企画などを行い、子どもを中心としてデザインや環境の大切さを啓蒙し続けている。2015年「はなぞのこどもえん」「小浜こども園」「第一幼稚園」他9プロジェクトが第9回キッズデザイン賞受賞(他受賞多数)。著書「愛される園舎のつくりかた」「世界でたった一つの園舎づくり」等

第1部:講義「子供とデザイン」

講義1

本日のプレックスプログラムは、子どもデザインプロデューサーの日比野さんです。日比野さんは幼稚園、保育園をはじめ、数々のこども関連施設に関する設計を行っています。現在注目を集めている、幼児施設に特化した設計事務所で幼児施設担当統括責任者を務める日比野さんは、今回初めての登壇ということもあり、参加者の期待も高まります。まずはスライドで様々な画像を見ながら、「これは何に見えるか?」という質問をしていきます。「おしり」「扇風機」「トイレ」等、いくつかの画像を見て、頭をほぐしながら、少しずつ本題に入っていきます。

講義2

昔は「やりたい」と言うことに対して、ダメという親は少なかった。今は「大人の都合」でダメという事が多くなったという日比野さん。園舎内の柱をゴムでカバーしたり、階段に滑り止めを付けている写真を見ていきます。確かにこうして様々なものに安全な取り組みをしていくことによって、園舎にいる時は怪我をする可能性が低くなる。しかし、結局「何かあっては困る」という、大人の都合で作られているものが多いと感じたそうです。逆に、何かにぶつかって「これは危ない、気を付けよう」という意識が芽生える機会を失ってしまっているとのこと。“ 過保護” と“ 安全” は違う。“ 怪我は成功のもと” という日比野さんの考えを、参加者も真剣に聞いています。

講義3

ここで逆に、ノコギリを使って実習を行う幼稚園や、自分の自己責任で登る壁など、一見危ないと思えるものこそ、子供達は様々なことを学び取るという例を紹介していきます。そして、こういった例や日比野さん自身の幼少体験を元に、「子供の可能性を生かす空間」を考えるようになったそうです。次は実際に日比野さんが手掛けた、長崎にある『小浜こども園』の動画や、“ 雨の水たまり”を屋内に再現させた熊本の『第一幼稚園』を見ていきます。 ※小浜こども園⇒ https://www.youtube.com/watch?v=yzUzhAoe_4E 子供の好奇心を大いにくすぐる様々な空間の工夫に、大人も夢中になってスライドに見入っています。

講義4

次は今、日比野さんが非常に大事にしているという「食の空間」について。海外の幼稚園の事例をいくつか見たあと、日比野さんの手掛けた園舎の食事風景を見ていきます。茨城の保育園では、庭に面した開放的で気持ちの良い空間でご飯を食べることによって、親御さんから「好き嫌いが減った」という感謝の手紙もいただいたそうです。最後に「トイレ」。幼い頃、トイレは「暗くて、臭くて、行きたくない」と思った方は多いのでは?という問いかけに、皆大きく頷きます。そこで、日比野さんはトイレに大きな窓をつけるなど、明るく開放的なトイレ作りを心がけているそうです。「好奇心を奪わない事」「失敗することを恐れない事」「挑戦する事」この3つが非常に大事であるという話で前半を締めくくります。

第2部:ワークショップ「保育園のトイレを創る」

ワークショップ1

後半のワークショップは、前半のトイレの話を踏まえて「保育園のトイレを創る」というテーマです。まずは日比野さんからヒントも兼ねて、ご自身が手掛けた茨城県の保育園のプロジェクトを説明します。茨城県神栖市にある波崎という“ 風の強い地域” という特性を生かし「かぜのように、うごき、あそぶ」というコンセプトメーキングを考えたそうです。コンセプトをきちんと決めてあげないと、クライアントから「好き、嫌い」が出てしまう。そこで「コンセプト」と「ストーリー」を具体的に考えることで、相手が受け入れやすくなるそうです。ということで、まずは各チームでコンセプトメーキングから取り組んでいきます。

ワークショップ2

早速、各チームのコンセプトを発表していきます。子供が楽しく用を足せる「段差を生かしたトイレ」、シャボン玉など遊び心にあふれた「風と水と友達になるトイレ」、茨城県のシンボルである鳥をイメージした「ひばりのとまり木」というコンセプトのトイレ、体感を活かした「五感で感じるトイレ」、鳥の巣をイメージした「巣のトイレ」、高低差があって自然を感じられる「見晴らしの良い丘トイレ」、開放的なトイレをイメージした「つながるトイレ」、「子供は風の子トイレ」といったアイデアに、日比野さんも興味深く反応しています。

ワークショップ3

まずは「五感で感じるトイレ」。水の流れを視覚で感じ、壁に空いた穴で外の音を感じる空間です。コンセプトに忠実で良いとコメント。「段差を生かしたトイレ」では、階段をトイレに用いたというプレゼンとラフに、段差の工夫を評価していました。「子供は風の子トイレ」は、風のスピード感をイメージして、滑り台で入るというアイデアに、「漏らしそうな時ないよね」と、笑いも交えて講評していただきました。他にも、天井をガラス張りにして、巣や切り株の形をしたトイレを配置する「巣のトイレ」も、開放感が良いという講評をいただき、「見晴らしの良い丘トイレ」は、水は高いところから低いところに流れていくという、自然の法則を利用した点を高く評価していました。

ワークショップ4&総評

自然や友達と繋がる、コミュニケーション型のトイレ「繋がるトイレ」では、大胆だけど良いアイデア、とコメントをいただきました。「ひばりのとまり木」トイレは、とまり木をイメージした段差型トイレ。デジタルサイネージを使ったハイテク案も織り交ぜた発表では、「一番役割分担も的確で、良いアイデアとプレゼンでした。」と、上々の評価をいただきました。一位から三位のチームは、日比野さんからオリジナルのステッカーが配られました! 最後に、日比野さんからの総評です。「全体的に良い企画だったと思います。子供の目線で考えることを、今後も是非やってみてください!」