PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「コミュニケーションのルールを変える」

PARTY/クリエイティブディレクター

中村 洋基 氏Hiroki Nakamura

PROFILE
1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKETV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著)上梓。

第1部:講義「コミュニケーションのルールを変える」

講義1

本日のプレックスプログラムは、クリエイティブラボPARTYの中村洋基さんに登壇していただきます。一度は目にしたことのあるCMやSNSを使ったキャンペーンなどに携わり、現在では世界で使われる「Web広告」の作品を多数生み出しています。インターネットや3Dプリンターなどの最先端技術を効率よく利用し、柔軟な発想で話題になる「広告クリエイティブ」を作る中村さんから、世界でも通用する創造の仕方を少しでも学ぼうと多くの学生が集まりました。

講義2

会社設立前に在籍していた電通で、2007年に行われたインターンシップ募集のために制作されたツールを使い「広告の本質」である「表現を世の中に出すこと」の難しさを説きます。「僕らの仕事には正解がありません。大事な時間を割いてもらうために、どんな魅力的な言葉やビジュアルで人がふりむいてくれるのか、これが一番難しいコミュニケーションを考えるということです。好きな子にちょっと振りむいてもらう行為に似ているかもしれないですね」と学生にも分かりやすい、噛み砕いた表現で丁寧に説明していました。

講義3

今現在、一定の間、知らぬうちに人が享受する情報の量は、ネットやスマホなどの情報の通信の発達により約10年間で約530倍になっています。一方で、記憶に残り認知されている情報量は、約33倍と増えてはいますが、その格差が徐々に広がっているのが現状です。「僕らが作る表現や情報は、認知してもらえるほど面白いものじゃなければいけません。だからこそ“見たことがないもの”“面白いもの”を至上命題にしなければいけない」と広告業界の難しさを説きます。

講義4

「記憶に残る広告」を作るとき、「コミュニケーションを変えて、コミュニケーションをデザインする」ものが一番の近道と言います。自身が手掛けた、日本の匿名性を利用した「ホンダ」のキャンペーンやUKの「ユニクロ」でSNSを利用し行われたセールキャンペーンにおいても、「召集させる方法をひとつ変える」ことによって、「認知」に繋げることがポイントだそうです。「世の中はどういうふうにコミュニケーションをとるのか想像して作ることは、爆発的な「広告効果」を得られる可能性を秘めています」と熱心に語りかけていました。

第2部:ワークショップ「元からある商品にコミュニケーションできるツールを付け加える」

ワークショップ1

後半はワークショップです。本日のお題は「元からある商品にコミュニケーションできるツールを付け加える」。既存の商品に新たなコミュニケーションの観点やツールを加えて、商品に対する付加価値をデザインしていきます。指定された9つのグループに分かれて、元から世の中にある商品を決め、考えつくアイデアをブレーンストーミングしながら、実現出来そうな案を代表者が発表します。

ワークショップ2

約40分という短い時間の中で、それぞれのグループが思考を凝らします。「些細な困ったことをプラスに変えるコミュニケーションなら」や「いつもの行動を、SNSを使って共有してみたら」などと、「コミュニケーション」を大事にしたアイデアやイメージを交換。ネット検索やグループで共有した情報を基に、膨らませたイメージを実際の会議のようなディスカッションで、より良いアイデアへとブラッシュアップしていきます。

ワークショップ3

お互いの気持ちを連動させた「乾杯グラス」や動かすと音が出る「歯ブラシ」など、想像力豊かなアイデアが出ました。「技術的に実現できるってすごく大事だなって僕は思うんです」と語る中村さんがインスパイアされたと選んだアイデアは、「字幕サングラス」でした。言語の違う人達が、その場ですぐコミュニケーションが取れるというもの。実際に開発されているGoogleGlassを例にあげ、「すぐの未来に現実になりそうなものですね」と高評価を得ました。

総評

限られた短い時間の中、あまり見たことがないアイデアでも現実的にテーマに落とし込んだ学生たちにメッセージをいただきました。「みなさんが何かを表現する仕事に就いたら、どこかで繋がるといいなと思います。僕の仕事は広告の側面が多いように見えますが、表現して世の中に出していくというのは、おおまかに同じだと思っています。ちょっと見た目が違うものではなく、根本から発想や視点を変えるという考え方は、どの仕事でも有効な考え方です。そういう面白いものがもっと出てくるといいなと思います。」と締めくくっていただきました。