PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「枠組みを問い直すデザイン」

TAKT PROJECT代表/デザイナー

吉泉 聡 氏Satoshi Yoshiizumi

PROFILE
TAKT PROJECT代表。東北大学工学部機械知能工学科卒業。2005年より2008年までデザインオフィスnendoに、2008年より2013年までヤマハ株式会社デザイン研究所に在籍。2013年にTAKT PROJECT株式会社を共同設立。感性と理論をつなぐことに深い興味があり、ロジカルな思考だけでは到達できない仮説を構想する「新しい知性」としてのデザインを志向し、実践している。世界で最も影響力のある建築・デザインメディアの1つDezeen(英)が主催するアワードDezeen Awards2019にて「EmergingDesigners of the year」に選出。2021年イギリス発の国際的なカルチャー誌Wallpaper*(英)にて「25 creative leaders of the future」に選出。また国内外のデザイン賞を多数受賞している。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「枠組みを問い直すデザイン」

講義1

本日はデザインチームTAKT PROJECT から代表の吉泉聡さんをお迎えして行っていきます。Nendo出身の4人で結成されたTAKTPROJECT、まだ設立間もない会社ですが、デザイン領域の広さと深さで大注目です。代表の吉泉さんは大学の工業学部を経て、「小さい頃大好きだったプロダクトを作れるようになる為には、デザインを知らないといけない!」と思い、社会人デザインスクールに半年通った後、Nendoに入社します。その後「多くの人に使ってもらえるものにも携わりたい」と思いYAMAHAに転職します。そしてTAKTPROJECT を設立、そのきっかけの一つは当校にも来ていただいたグランマさんが行った「世界を変えるデザイン展」だったそうです。

講義2

「PROJECT DESIGN ~ プロジェクト全体をデザインする~」「 DESIGN the Next role ofDesign ~デザインの新しい役割をデザインする~」この二つをコンセプトに掲げたTAKTPROJECTのプロジェクト紹介です。売れる物をデザインして欲しいという依頼に対して、職員の方々が魅力的な製品開発を持続的に行えるように提案した「ONE STEP project」。発展途上国のトイレ問題を解決するプロジェクトでは上記のグランマさんとも一緒にお仕事をし、新たな電動車椅子をデザインする企業WHILL のデザインサポートも行っています。

講義3

「所謂ソーシャルデザインと枠組みされるお仕事を行う中で、自分なりにソーシャルデザインの考えを再定義する必要性を感じて、グッと考えてみました。以前は社会課題を解決するのがソーシャルデザインと考えていたのですが、今はかつてのソニーやホンダのように社会全体を明るくするようなこと全てがソーシャルデザインと考えています。Design for 90%からDesign for All が今の心境です」と楽しそうにそう語られます。

講義4

「クライアントがいないデザインに挑戦してみたい」そんな想いで立ち上げたプロジェクトが「3-pring product」。3Dプリンタを使い無印良品の商品に新しい価値を与えるプロジェクトです。この遊び心満載のデザインワークに吉泉さんのエッセンスが隠れています。前半の最後は吉泉さんが大切にしているデザインするプロセスをご解説いただき、終了となりました。

第2部:ワークショップ「3-pring productワークショップ」

ワークショップ1

後半はワークショップに突入します。今回は上記で解説があった「3-pring product」を題材としたワークショップです。各グループで無印良品の商品を題材にアイデアを考えて発表する形式です。議論する前に吉泉さんから「境界を横から見る。境界を壊してみる。境界を引き直してみる」という手順で考えてみて下さいと説明がありました。この言葉を頭に入れて、さあワークショップです。

ワークショップ2

商品を決めて、そこからアイデアを考えるチーム。各自アイデアを出しあって、多数決で良かった案をブラッシュアップしていくチーム。様々なスタイルで議論は進んでいきます。30分ほどしか時間がないため、自己紹介もせずにスタートするチームが多い中、あっという間に議論はヒートアップしていきます。そして30分が経過し、チームごとの発表となります。幾つか紹介します。シンプルなプラスティックの箱に穴あきの蓋を3Dプリンタで作成して、中にティッシュを入れる「アマッタティッシュ」。

ワークショップ3

アクリル素材の棚を自由に繋ぎ合わせるキットを作ることで、透明な仕切りや柱や棚にすることができる「クリスタルウォール」。丸い樹脂性の鍋敷きに凹凸キャップが31個あるのに気がついたチームの「キャップカレンダー」。シンプルな箱の凹凸のキットを取り付けることでレゴブロックと同じ機能を持たせる「レゴボックスキット」。実現可能で吉泉さんからお褒めをいただくもの、発想が突飛すぎて会場に爆笑が巻き起こるもの、様々です。

総評

最後に吉泉さんからメッセージ。「今日はテーマにある“ 枠組みを問い直すデザイン” のワークショップを行いました。このように既存の価値観を認め、疑い、壊し、再構築してみるのもデザイン思考と言われているものの一つだと思います。このプロセスはものづくり以外でも十分役に立つ内容かと思いますので、ぜひ参考にしてみてください」。