PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザインでものがたる Vol.3」

カニカピラ代表/アートディレクター/アーティスト

姉川 たく 氏Taku Anekawa

PROFILE
KANIKAPILA DESIGN Inc. 代表、 アートディレクター、アーティスト。 ポンキッキーズの「なぞのやさい星人あらわる」や「あらびき団」がお茶の間で話題に。 2012年から NHK「バリバラ」のアートディレクションを担当。Web を中心にクリエイティブディレクションを手がける他、 刺繍など糸を用いた手法で作品制作を行うアーティストとして国内外で活動。ギャラリーNANZUKA 所属。 http://kani-design.com プレックスプログラム講師実績 2013.06.22 デザインでものがたる 2014.09.23 デザインでものがたるVol.2

第1部:講義「デザインでものがたる」

講義1

本日のプレックスプログラムは、カニカピラ代表の姉川たくさんに行っていただきます。姉川さんは、プレックスのご登壇はこれで3 回目となります。「基本的に、つくることが好きなんです。」そう話す姉川さんは、アートディレクター、デザイン事務所代表、そして、刺繍を使ったアーティストという多彩な顔を持ったクリエイターです。「いろんなことを楽しみながらやっています。」そんな姉川さんの明るい人柄や雰囲気に、受講生もこれから始まる講義に期待が高まっているようです。まず始めに、現在のカニカピラ立ち上げまでの経緯から講義はスタートです。

講義2

社会人として最初に入った会社は大阪のインテリアデザイン会社。そこでIllustrator で図面を引いたりしていたそうです。会社で働く中で、社長やその他関わる人たちの人間味に触れながら仕事をしていました。昔からずっと可能な限りものづくりをしていきたいという思いが強かった姉川さんは、その後2000年に独立した後は、人からお願いされることはなんでもやったそうです。そのようにフリーランス時代での仕事が少しずつ大きくなり、株式会社カニカピラは設立。会社を立ち上げた後は、「自分は経営者に向いていない」と思う場面もあったそう。様々なことを乗り越えながら現在に至る様子をお話くださいました。

講義3

その後、これまでの事例に沿ってお話を進めていきます。姉川さんが仕事をするときに常に意識するのは「デザインでものがたる」というキーワードです。「現在の仕事は基本的に受注仕事、クライアントの話をよく聞いてこちらでちゃんとストーリーにしてから見せてあげなければいけません。」そう話す姉川さんが今回特に詳しくお話くださったのは、障がい者情報番組「バリバラ」についてです。番組立ち上げ時に提出した企画書と、2016 年の番組リニューアル時に提出した企画書についてそれぞれ触れられていました。企画書の説明の中でも常に意識しているのはやはり、デザインを行うことでどんなストーリーが描けるか、という点であることを姉川さんは語ります。

講義4

また、自身のアーティスト活動についても触れ、刺繍の作品を実際に受講生に見せてくださいました。アーティスト活動とクライアントワークをどのように分けているか?という質問に対して、「個人的にそれらに境目はありません。」と話す姉川さん。それぞれの活動は、世の中に普段隠れているものに対してストーリー付けをしていく作業で、ものづくりのステップとしては同じ扱いとして捉えています。「何もないところからその場にある空気感をつかんで作っていったり、未来を作っていくようなそういうものづくりが好きです。相手のことをよく考えて、楽しみながら見つけてものづくりをしています。」姉川さんの思いが溢れる講義はここで終了です。

第2部:ワークショップ「物語をデザインする」

ワークショップ1

姉川さんから発表されたワークショップのテーマはずばり、「物語をデザインする」です。グループのうち1人だけクライアントとして選び、他のメンバーはクリエイターとなって、その人自身のもつ物語をデザインしていきます。つくるものは、クライアントを表す「表紙・ジャケット(ヴィジュアル)」、クライアントを表す「タイトル・キャッチフレーズ」をそれぞれつくります。ワークショップに参加している受講生の中には、この場で初めて顔を合わせる人もいます。さて、みなさんはこの課題をどのように仕上げていくのでしょうか?

ワークショップ2

姉川さんから冒頭に、「まずはクライアントに自分の物語を語ってもらってください。また、浅い情報ではなくより深い所まで話して欲しいです。」と指示がありました。クリエイターはクライアントが持つ個性や特徴を引き出さなければなりません。情報を整理し、その中でキーとなる視点や切り口を見つけていきます。また、クライアントになった受講生は、いろんな自身の赤裸々エピソードを話しています。意外な一面、恥ずかしい場面など、話す中でその人柄が垣間見えるとグループのメンバーも楽しそうに聞いているようです。たくさん赤裸々に話したことをうまく整理、表現できるようにみなさんまとめていきます。

ワークショップ3

いよいよ、発表の時間となりました。各発表では、個性的なキャッチフレーズやストーリーが飛び交いました。クライアントの人となりやその人自身が持つストーリーを、聞く人を惹きつけるように工夫する様子が見えます。クライアントになった人から発表を終えた後に感想を聞かれると、「今まで自分の嫌なところだと思っていたけれど、ここで話したらみんながそのことを褒めてくれたのでうれしかったです。」という声もありました。また、別の発表では高校時代の恋愛ストーリーを語った人もいました。思わず聞く人が感情移入をしてしまうほどのプレゼンに、会場全体がストーリーに引き込まれた場面もありました。

総評

すべてのグループが発表を終え、今回のワークショップのまとめとして、姉川さんからコメントをいただきました。「この短い時間、30分ちょっとで素晴らしい楽しいものを見せてもらいました。なかなか30分で結果を求められることってないので、皆さん集中してやられたと思います。あがりも楽しくみれて良かったです。普段仕事をしていると忘れがちになってしまいますが、ものづくりの根本的なところは、誰かのために一生懸命考えて作ることです。ものづくりの根本の楽しさはそこです。今回のワークショップでそれを感じてもらえたら幸いです。」