PLEX PROGRAM REPORT

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「タイポグラフィ的思考」

2019年6月30日(日)

グラフィックデザイナー

梅津 直之 氏

Naoyuki Umezu

<PROFILE>

グラフィックデザイナー/プロダクトデザイナー。1977年生まれ。ニューヨーク州立F.I.T(Fashion Institute Technology)卒業。2012年に世界中のグラフィックデザインとタイポグラフィの歴史的アーカイブを共有するためSPREADを設立。ヨーロッパを中心としたデザインスタジオとのネットワークを構築することで現代におけるデザイン教育の在り方を探求している。

梅津 直之 氏

第1部:講義「タイポグラフィ的思考」

講義1

本日のプレックスプログラムは、今回が3回目のご登壇となるデザイナーの梅津直之さんをお迎えしてお送りします。梅津さんのお仕事は、世界的ファッションブランド・シューズメーカーでのデザイン提案や、タイポグラフィのデザイン書籍を評価・販売する「page-spread.com」の運営、海外に向けて子供服のデザイン・販売など。ジャンルレスで、国内以上に海外への影響力を持っています。当校のグラフィックデザイン専攻の主任講師として、カリキュラム開発にも携わっている梅津さんに、その豊富な経験と幅広い知識で、今回は”タイポグラフィ的な思考”ついて講義をしていただきます。それでは梅津さん、よろしくお願いします。

講義2

梅津さんが運営する「page-spread.com」ですが、自分が勉強したかったというのが立ち上げの一番大きな理由なのだそうです。古いタイポグラフィの書籍を買い漁って、売って得た利潤でもう一回高いものを買う。その繰り返しを7年も続けています。「デジタルを勉強してる人は新しいものを追いかける傾向があるんだけど、美意識って観点でいうと、新しいものって流行や一過性なことがよくあって、振り返ってみると何でもないことってよくあります」新しいものには不確定要素が多く、逆に古いものは、良いものは良い、悪いものは悪いとしっかり語り継がれているので、多少古いものを追いかけた方が美意識が研ぎ澄まされるんですね。

講義3

タイポグラフィのデザインにおいて、日本人は苦しんでいる人種なのだと梅津さんは言います。アルファベットは大文字・小文字合わせても52文字、1文字1文字に意味はなく、その組み合わせでコミュニケーションを取っていくのでとてもシンプルです。比べて日本語はひらがな・カタカナ・漢字のように何千字もの文字を使用し、漢字には文字ごとに意味があるため非常に複雑な言語です。それ故に日本人は文字のデザインをする際、その文字に意味を見出そうとしてしまい、無理な意味付けが結果としてデザインの質を落としてしまうことが多いのだそうです。プレゼンテーション重視の意味付けより、感覚を大事にした作品重視の考え方が必要なんですね。

講義4

“タイポグラフィ的な思考”とは何なのでしょうか。アルファベットの文字は誰でも形をわかっていて、それがどのように組まれるかによって、与えるイメージを変えることができます。つまり、ありきたりな書体であっても何がユニークなのか、すごいのかをしっかり伝えられるということです。「何が結局タイポグラフィの考え方なのかというと、自然を受け入れるってことなんです」前提条件(自然)を受け入れ、その中で何ができるのかを考える。その考え方を磨いていけば、与えられた条件の中で感動できるもの・びっくりさせるものを作っていける。その結果を担保できるのがタイポグラフィ的な思考なのだと、梅津さんは言います。

第2部:ワークショップ「◯◯ない■■」

ワークショップ1

後半はワークショップを行なっていきます。今回の課題は、「『読めない本』の次にくるような『〇〇ない■■』のタイトルと商品企画を考える」です。「読めない本」とは、まだ文字が読めない幼児のために作られた、”自分でめくりながら色や紙の質感などを感じて想像力を育む”ための本で、「本」の本来の目的である”印刷して伝える”というところから外れた所にある珍しい商品です。この「読めない本」のように、本来のものとは少し思考の角度を変えた商品企画を、学生たちには課題として考えてきてもらいました。班に分かれて特に良かったものを選抜・発表してもらいます。どのような企画が飛び出すのでしょうか。

ワークショップ2

学生たちの企画からいくつかご紹介します。「読まない路線図」東京オリンピックに向けて、色と線だけで伝わる路線図を作る。「映像のない映画」視覚的な印象が大きい映画ですが、当然音にもこだわって作られている。その音を主役にして楽しめる映画。 「色がない色鉛筆」塗っても色が出ない色鉛筆。後から熱や水など、何らかの方法で色を出すことができる。そうすることで固定観念にとらわれず色を塗ることができる。 他にも「写らない鏡」や「読めないラブレター」など、タイトルだけでワクワクしてしまうような、キャッチーな企画がたくさんあがりました。

ワークショップ3

ワークショップを終えて梅津さんから講評をいただきました。「皆さんタイトルが面白くて、商品企画としてもそういうアイデアを取り扱っているところに持っていけば、通りそうなものもいくつかありました。大事なことは、みんながそのコピーを聞いただけでわかるってこと。アルファベットと同じで、前提条件が一緒。皆さんその辺はすごくいい思考回路というか、いい考え方を持っているんだなって思いました。その考え方をビジュアルにもそのまま繋げてもらえれば、しっかり前提条件が揃ったコミュニケーションデザインというか、グラフィックもウェブもすべてできると思うので、活かしてもらえたらと思います」

総評

最後に梅津さんから総評です。「今日これを聞いて明日から変われるなんてことはなくて、僕の言ってること本当かよって疑ってほしいんです。そういう引っかかることがあったら、今後5年10年ずっと引っかかったままで、答えを早く出そうとしないでほしい。正しいのか正しくないのかってことをずっと答えに出さないで、今の自分はこう思う、だけどひょっとしたら正しくないかもしれないってずっと考えていくと、今の自分は別に間違えてもないけども、変わってもいいかなってぐらいに思える。そうやって5年間ぐらい、センスがいいって何だろうって悩み続けたら、センス良くなると思います」梅津さん、本日はありがとうございました!

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