テーマ:「言い換えから生まれる新しい価値」
method代表・バイヤー
山田 遊 氏Yu Yamada
- PROFILE
- 東京都出身。南青山のIDÉE(イデー)SHOPのバイヤーを経て、2007年methodを立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役、武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科客員教授、TOKYO MIDTOWN AWARD審査員。国内外の店づくりを中心に、あらゆるモノにまつわる仕事に携わり、産地や教育機関での講演など多岐に渡って活動を続ける。「別冊Discover Japan 暮らしの専門店」が、エイ出版社より発売。「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」が、誠文堂新光社より発売。 これまでの主な仕事に、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」、21_21 DESIGN SIGHT「21_21 SHOP」、「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」、「made in ピエール・エルメ」、「燕三条 工場の祭典」、「NOT A HOTEL」などがある。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「言い換えから生まれる新しい価値」
講義1
今回のプレックスプログラムでは、初めてのご登壇となるmethod代表・バイヤーの山田遊さんをお迎えしました。methodは、「物にまつわる仕事なら何でもやる」という考えのもと、店舗づくりや商品開発、展示企画、イベント運営など、多彩な活動を展開しています。講義の冒頭では、ご自身の経歴やフリーランスバイヤーという働き方を確立した経緯を紹介。さらに、独立のきっかけとなった国立新美術館のミュージアムショップ『SFT/スーベニアフロムトーキョー』の立ち上げ事例をもとに、お店づくりで大切にしている考え方を語られました。

講義2
『SFT』の立ち上げでは、「ミュージアムショップらしくないミュージアムショップをつくる」というテーマを掲げ、美術館そのものを捉え直すことからスタートしたそうです。山田さんは「言い換え」という手法を用い、美術館を別の言葉で表現。チームで大喜利のようにアイデアを出し続けた結果、「美術館=観光地」という発想にたどり着き、「観光地なら売るものはお土産」という考えから、「東京土産」をテーマにしたミュージアムショップが誕生しました。このように、試行錯誤を重ねながら本質を探る姿勢がお店づくりには欠かせないと話されました。

講義3
methodの仕事は、「店をつくる」「モノをつくる」「イベントをする」「モノを見せる・並べる」「モノを選ぶ」の五つを軸としています。山田さんは、これらはすべてショップ店員時代に培った経験の延長線上にあると話します。「イベントや展示、ホテルの仕事など、一見すると異なる仕事も、本質的には人を呼び、モノの魅力や背景を伝え、最終的に購買につなげるという点で店での仕事と変わらないと思います。僕自身は、これまで培ってきた経験を足し算や引き算のように応用しながら、さまざまな仕事へと展開している、というのが今の実感ですね。」

講義4
また、バイヤーやデザイナーは「センスがなければできない仕事」と思われがちですが、それだけでは成立しないと話す山田さん。自身も仕事を始めてからデザインを学んだ経験があり、天性のセンスや右脳的な感覚だけがすべてではなく、経験やロジックを積み重ねることでデザインの世界に関わることができると考えているそうです。講義後半には、商品の魅力の伝え方やバイヤーの選定基準、イベント企画、伝統工芸の継承などについて活発な質疑応答が行われ、山田さん自身の経験をもとにしたエピソードが多く語られました。

第2部:ワークショップ「新しく魅力的な業態(店)を考える」
ワークショップ1
ワークショップでは、「新しく魅力的な業態(店)を考える」をテーマにグループワークを実施。山田さんは企画を考える手法として、「言い換える」「加える」「省く」の三つの視点を紹介しました。「まずは正解を求めるのではなく、大喜利のように自由な発想でたくさんの案を出してみてください。その中にきらっと光るアイデアがあったりします!」学生たちはグループで意見を交わしながら発想の幅を広げ、新たな価値を探るプロセスを通して、山田さんが提案した三つの視点を活用する手法を体験しました。

ワークショップ2
アイデアを発表する場面では、ユニークな企画が数多く提案されました。『水族館×お寿司屋さん』という案では、食育や滞在時間の向上につながる新たな楽しみ方が提案され、山田さんは「斬新で面白い案です(笑)。発想のきっかけとして勉強になりました」と講評。また、一見交わらない『お好み焼き屋さん×性格診断』を組み合わせた新しい食事体験や、高級レストランでの食事をあえてすっぴんで楽しむ『飾らない贅沢』など、既存の枠にとらわれない多彩な発想が披露されました。

ワークショップ3
山田さんは各グループの発表に対し、「ここにもう一つ要素を加えたらさらに面白くなるのではないか」といった視点から講評。例えば、人目を避けるために送迎付きで提案されたすっぴんで訪れる高級レストラン『飾らない贅沢』の企画には、宿泊(オーベルジュ)の要素を加えることで、「ありのままの姿で過ごせる」というコンセプトがより強固になると助言されました。アイデアは最初から完成形を目指すのではなく、人との対話や試行錯誤を重ねながら磨き上げていくものだと語られ、企画を深めるための考え方を学ぶ時間となりました。

総評
企画は一人のひらめきだけで生まれるものではなく、多くのボツ案や仲間との対話、試行錯誤を積み重ねる中で形になっていくと話す山田さん。「いろいろな人の意見を聞く中で、新たな気付きや発想が生まれることは多くあります。一人で考えることも思考訓練として大切ですが、まずは頭を柔らかくして、気軽に企画を考えてみることが、デザインにまつわる仕事をする上でも非常に大事なことだと思っています。」山田さん、貴重なお話をありがとうございました。
