PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「AI時代のデザインを考える」

BULLET inc代表/アートディレクター

小玉 文 氏Aya Codama

PROFILE
1983年大阪生まれ。2007年東京造形大学デザイン学科グラフィックデザイン専攻領域卒業。AWATSUJI designに7年在籍後、2013年株式会社BULLETを設立。現 東京造形大学 准教授。 ブランディング、ロゴ、パッケージなどのグラフィックデザイン全般を手がける一方、〈物質的な魅力〉を追求した制作表現にも取り組んでいる。特にパッケージに造詣が深く、著書に『パッケージデザインの入り口』がある。 主な受賞歴に、One Show(gold)、Pentawards(platinum)、Cannes Lions、D&AD(graphite)、Red Dot、iF Design Award、グッドデザイン賞など。https://bullet-inc.jp/ 東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義 「AI時代の人間の仕事」

講義1

今回は6度目のご登壇となる、BULLET Inc.代表でアートディレクター / グラフィックデザイナーの小玉文さんにお越しいただきました。今回のテーマは「AI時代のデザインを考える」。小玉さんは近年AIについて問われる機会が増える中で、AIには真似できない、人間にしか実現できないこととは何なのかを日々考えていると言います。小玉さんが示した“人間の仕事”は、次の5つです。①気づくこと ②審美眼を持つこと ③決めること ④実現させること ⑤責任を持つこと。

講義2

特に「①気づくこと」が、すべての出発点であり最も重要だとおっしゃる小玉さん。日々のお仕事や自主制作の中で、様々な実験を行い、気づきを得ているそうです。例えば小玉さんは紙ならではの個性「破れる」に着目し、破ることでデザインが完成するカレンダーや、破れを生かしたグリーティングカードなどを制作されました。

講義3

あるプロジェクトでは、いつもと視点を変えて「紙を捉え直す」という試みを実施。小玉さんはこれまで紙の「破れる」特性に魅力を感じていましたが、逆に本来の紙には存在しない特性「割れる」を加えるとどうなるか……という視点から、紙なのに割れている箱「CRACKED PAPER」を制作。このように既成概念からジャンプした発想は新たな価値に繋がります。「前提条件を疑い、疑問を持つことが大事」と小玉さんはおっしゃいます。

講義4

「AIは無限のアイデアを生み出せますが、その中から価値を見極め決めるのは人間であり、人間がその責任を担う必要があります。アートディレクターがデザイナーやカメラマンに『ビジョンや目的』を伝えて具現化することと、AIに画像を生成させることに、本質的な違いはありません。ディレクションの軸を持ち、的確に指示できるのであれば、AIの活用は有効な手段です。」人間が担うべきなのは、方向性を示すことだと小玉さんは話しました。

第2部:ワークショップ 「『ふつう』を疑う商品パッケージ」

ワークショップ1

今回のワークショップでは、「『ふつう』を疑う商品パッケージ」をテーマに、学生たちは15分でグループワークを行いました。「既存の商品パッケージの在り方を疑い、こういう形ならもっと可能性が広がるだろう、という視点で考えてみてください」と小玉さん。アイデアが選ばれたチームには、小玉さんが紙にこだわって完成させたBULLETオリジナル年賀状が贈られるという特典も発表されました。短い時間ながらも各チームの話し合いは活発に進み、様々な意見が飛び出しました。

ワークショップ2

見事小玉さんに選ばれたのは、『子どもが楽しめる歯磨きセット』を考案したチーム。お菓子のヤンヤンつけボーから着想を得て、主流のチューブ型歯磨き粉にはない「つける楽しさ」を取り入れたアイデアを考案しました。講評では「毎日やらなければいけない歯磨きと、子どもが好きな遊びを組み合わせた点に面白さが光っていた。地続きではない2つの異なるアイデアを結びつけたことが面白く、人間らしい発想だと感じます」と評価されました。

ワークショップ3

他のチームからもユニークなアイデアが発表されました。「他人には見えない、でも自分にはわかる」というコンセプトのカスタマイズできるブックカバーや、戦隊モノ特有のカラーリングでショッピングバックと洗濯ネットの両方の役割を持つ『洗濯洗隊』、さらにコンビニおにぎりという身近なパッケージに海苔の形で表情が変わって見える『福笑いおにぎり』など、“ふつう”を疑う発想を活かしたさまざまな提案が見られました。

総評

「各チームにそれぞれの良さがあり、どのアイデアも工夫や発想の面白さが光っていました。このように人間が考え発想を広げていくことで、日々の暮らしや社会はより良くなっていくと思います。今日のワークショップで得た学びや気づきが、皆さんがこれから取り組む仕事や活動に少しでも役立ち、活かされればと思います。」ワークショップでの小玉さんからのフィードバックは、小さな可能性の種を深掘りし、それを実現へと近づけてくれるようなものばかりでした。貴重なお時間をありがとうございました。