PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「 パッケージデザインの入口 」

BULLET inc代表/アートディレクター

小玉 文 氏Aya Codama

PROFILE
1983年大阪生まれ。株式会社BULLET代表。「物質的な魅力をもつデザイン」に魅せられ、素材や印刷加工を駆使した制作を多数行う。特にパッケージに造詣が深く、著書に『パッケージデザインの入り口』がある。東京造形大学 専任教員。主な受賞歴に、One Show (gold)、Pentawards (platinum)、Cannes Lions、D&AD、iF、グッドデザイン賞など。https://bullet-inc.jp/

第1部:講義「パッケージデザインの入口 」

講義1

本日のプレックスプログラムの講師は、株式会社BULLET代表/アートディレクター・デザイナーの小玉文さんです。小玉さんは株式会社粟辻デザインに在籍したのち、30歳でご自身の会社を設立されました。小玉さんが特に得意とされているのが、多様な素材と印刷加工を用いて作る唯一無二のパッケージデザインです。「様々な素材や印刷加工の研究・実践の舞台としているのが、毎年自主制作で行っている年賀状です。一般的な印刷では難しい厚みのある素材や印刷加工を駆使することで、受け取る相手の印象に残る1枚が完成します。」

講義2

小玉さんがデザイナーになったきっかけは、イギリスのメーカーから発売されたミネラルウォーターのボトルでした。「どんな仕事に就いたらこういうものを作れるのだろう」と考えたことが小玉さんのデザインの原点です。立体物に憧れたこの体験から制作したのは、紙製の立体プロダクト「CRACKED PAPER」でした。まるで石や卵のひび割れのような質感が表現され、まさに多彩な素材と印刷方法を熟知する小玉さんにしかできない表現です。

講義3

木桶仕込みの日本酒「人と木とひととき」は、木目柄のラベルデザインが印象的です。小玉さんは、木桶仕込みによって木の色がうっすらと移っている日本酒の色を楽しんでもらえるように、中身の色が透けて見えるラベルを考えたそうです。この時にラベルの素材として提案したのが「パチカ」です。パチカは、型押しした部分が熱で透けて、色が透明に変化する特殊な紙です。型押しについても、単純に木目模様の通りに押すのではなく、透けの強弱を表現するために2段階に設定しました。小玉さんのアイデアと印刷職人の方の技術が融合したこの作品は、アジアのパッケージデザインアワードである2019 Topawards Asiaを受賞しました。

講義4

パッケージデザインの目的は、「大事にしたい」「魅力的にしたい」「良さを伝えたい」「便利にしたい」の4つのカテゴリーに分けられるそうです。小玉さんの著書である『パッケージデザインの入り口』では、ポチ袋の由来や、ブランドカラー、ネーミングの影響、ライフスタイルの提案などの様々な事例を通して、パッケージデザインを多角的な視点で分析されています。また、最近では「包む」デザインの技術や魅力を伝える活動も行っているそうです。「包み方次第で面白い価値が出てきたり、新しい人に届けられたりと、パッケージデザインの可能性を感じることができます」と小玉さん。

第2部:ワークショップ「包む可能性を考える」

ワークショップ1

講義の後半はワークショップを行います。テーマは「包む可能性を考える」。包む対象は自由で、新たな包み方のアイデアを考え、商品名とラフデザインを発表します。普通に包まれている状態を分析した上で、新たな価値や思わぬターゲットを生み出すパッケージデザインを探ります。「包むだけがパッケージではありません!」と小玉さん。考えるポイントは、パッケージの4つの目的と関連付けて分析し、方向性を1つに絞ること。学生たちは何をどんなデザインで包むのでしょうか。

ワークショップ2

最初に発表したグループは、『スパークリング』という商品名でシャンパングラスを模した指輪のパッケージを提案しました。本物のグラスに入れると底から取り出しにくいという問題も、底上げパーツでカバーします。「ギャグで出すのか、カッコつけて出すのかがポイントですね。パッケージがあることで思い出になるところが良いと思います!」と小玉さん。またあるチームの『ことツボ』は、骨壷をモチーフにした遺言を包むパッケージです。言葉をオブラートに包むという表現から着想したとのこと。小玉さんは「伝統的なものを組み合わせたサービスは、カジュアルなデザインだと抵抗がある人もいるので検討が必要ですが、発想が面白いですね」とコメント。

ワークショップ3

他にも、「包装紙をただ捨ててしまうのがもったいない」という想いから発想したチームは、紙で出来ているお香を包装紙にして、開ける瞬間から開けた後も楽しめるパッケージを提案。小玉さんからは、「うまくやると商品化できそうですね。サイズ感や香りを楽しむ破り方ができるミシン目のデザインなども工夫しがいがありそう」と具体的な講評がありました。全ての発表を終えて、小玉さんが特別賞として選んだのは、骨壷をモチーフにした遺言を包む『ことツボ』でした。「デザインは検討の余地がありましたが、言葉を包むという発想が良くて、包むことの本質を捉えていた気がします。」

総評

最後に総評をいただきます。「私が学生の時は、就職といえば広告代理店が花形でしたが、今はパッケージデザインやブックデザインなど、手で触れるものを作りたい!という学生が多くなったように感じます。パッケージは日常生活に不可欠なものだからこそ、制限もあったり、庶民的なものからコンセプチュアルな高額なものまで作ることができる奥深い世界です。パッケージを見た際には、どうやって作っているのかなと思いながら見ていただけるといいなと思います。」この講義を通して、学生たちはパッケージデザインや印刷加工の大きな可能性を感じたのではないでしょうか。小玉さん、ありがとうございました!