PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザインワークについてⅦ」

FLAME 代表/アートディレクター

古平 正義 氏Masayoshi Kodaira

PROFILE
アートディレクター/デザイナー。2001年FLAME設立。主な仕事に「ラフォーレ原宿」 広告・CM、「BAO BAO ISEEY MIYAKE」とのコラボレーション、パワーコスメ「oltana」パッケージ・広告、「Fender」広告・フリーペーパー・VMD、「HOTEL GROOVE SHINJUKU」ブランディング、日本ペイント「AYDA Awards」ウェブサイト・ポスター、「アートフェア東京」ロゴ・広告(2005〜2017)、「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」ロゴ・ポスターなど。ONE SHOW ゴールド・シルバーペンシル、D&AD イエローペンシル、東京ADC賞など受賞。大阪芸術大学客員教授。http://flameinc.jp/

第1部:講義「最新デザインワークの解説」

講義1

本日のプレックスプログラムは、FLAME代表でアートディレクターの古平正義さんをお迎えします。古平さんには学校開校時から毎年プレックスプログラムにお越しいただき、今回で12回目のご登壇となります。圧倒的な作品力で業界内のファンも多く、日本を代表するアートディレクターの一人です。今回も数多くのデザインエッセンスをお話ししていただきます。

講義2

まずお話ししていただいたのは、ラフォーレ原宿のセール時の広告デザインにおける興味深いエピソード。「ラフォーレのバーゲンじゃないとできないビジュアルとは何か」と考えた古平さんは、来店人数が日本一のバーゲンという特性を富士山というモチーフで表現されました。また、東日本大震災後の広告には日の丸をモチーフに採用するなど、社会状況を捉えモチーフに新たな意味を与える挑戦についてもお話しいただきました。

講義3

続いての話題は、価値の発見と具現化について。東京クリエイティブサロンのポスター制作では、ファッション業界の課題である廃棄布に着目し「捨てられてしまう布でポスターを作るのはどうか」と提案した古平さん。「捨てられちゃう布を使って、捨てられない・捨てたくなくなるようなポスターを作ろう」というコンセプトで、廃棄されるはずだった布に新たな生命を与え、社会貢献とデザインを両立させました。

講義4

西武鉄道のレストラン列車「52席の至福」のデザインでは、数字の52をただカッコよくデザインするのではなく、52という数字からトランプのモチーフを採用したといいます。またISEEI MIYAKEのBAO BAOのバッグのデザインでは、ビートルズの歌詞から着想を得たアイディアで、既存の価値を尊重しつつ新たな付加価値を加えることを目指したというエピソードも話してくださいました。

講義5

「最近では、プログラミングの力を使って新たなビジュアルを作りたいという想いがあります」と話す古平さん。建築デザインのコンペAYDAのWebサイトは、印刷のドットをモチーフに、3つのレイヤーが動いたりゆがんだりして人が動いているように見えるビジュアルをプログラミングで製作。「同コンペのポスター制作では、逆に印刷でないとできないことをやろうと思って、穴をあけたデザインにしました。ポスターをガラスに張った時に裏からもみえるように裏面にも印刷しました。」

第2部:ワークショップ「笑いをテーマにしたポスター制作」

ワークショップ1

現在、古平さんは大阪芸術大学の客員教授として2025年大阪・関西万博の吉本パビリオンのプロジェクトに携わっていらっしゃいます。後半は、それにまつわる「笑い」をテーマにしたポスター制作のワークショップを実施。学生たちは限られた時間内でポスターのアイデアを出し合います。「屋外での展示を想定されているため、シンプルで視覚的に分かりやすいデザインが欲しい」と古平さん。

ワークショップ2

水の波紋に目を加えるアイデアや、ほっぺたに注目した表現、ひょっとこをモチーフにした楽しげなデザインなど、個性的な作品が生まれました。古平さんからは「誰かとアイデアが被るのは前提に、他に違うポイントがあれば良い。もう一つ何かを乗せることを考えてみて」などのアドバイスが。さらに、投票で上位に選ばれた学生には古平さんから賞品が贈られました。

総評

「制約があった方がやりやすく、自由すぎると逆に困る」「理屈っぽく考えることで納得できるデザインが生まれる」と繰り返し話されていた古平さん。デザインは単なる美的創造物ではなく、論理に基づきクライアントの課題を解決し、人々に新たな価値を提示する多角的な活動であることを改めて実感させられる講義となりました。古平さん、ありがとうございました!