PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「クリエイティブを武器に働く 」

&Co.代表

横石 崇 氏Takashi Yokoishi

PROFILE
1978年生まれ。大阪府出身。多摩美術大学卒。日本初のクリエイティブエージェンシー「TUGBOAT」グループにおいて役員を歴任。2016年に&Co.,Ltd設立。国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」代表。テレビ局・雑誌社・ポータルサイトをはじめとするメディアサービス開発を手がけるほか、企業の組織開発や人材育成など、さまざまな場の編集に携わる。「六本木未来大学」講師を務めるなど年間100以上の講演やセミナーを実施。鎌倉にオープンしたコレクティブオフィス「北条SANCI」のプロデュースおよび支配人。編著に「これからの僕らの働き方 〜次世代のスタンダードを創る10人に聞く〜」(早川書房)がある。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「クリエイティブを武器に働く」

講義1

本日のプレックスプログラムの講師は、5回目のご登壇となる&Co.代表の横石崇さんです。横石さんはプロジェクトプロデューサーとしてご活躍の傍ら、キャリアデザインの非常勤講師やシェアスペースの運営など「働く」ことを軸とした多角的な活動もされています。2013年には「働き方に明るい話を」と渋谷区に提案し、働き方にフォーカスをあてたイベント『Tokyo  Work  Design  Week 』を開催。今や日本各地のみならず韓国でも開催されるほど、多くの注目を集めるイベントとなっています。今回は進路に悩む学生に向けて、クリエイティブを武器に働く方法についてお話しいただきます。

講義2

横石さんの書籍『自己紹介2.0』から、自分の働き方のヒントを可視化するワークを紹介していただきます。まずは「偏愛マップ(自分の好きなことやものを1枚の紙に書いたもの)」を手に、隣の人にその内容を伝えていきます。横石さん曰く、このワークを企業で実施すると、その企業の雰囲気が大きく変わることがあるのだそう。あまり普段話すことのない話を同僚にすることで、組織の暗黙知を共有することができ、それが組織の強さに比例するといいます。「雑談できる組織は強い。エネルギーが溢れる話ができる仲間づくりができるといいですよね」と横石さん。

講義3

クリエイティブという言葉は、創造性、広告物、産業など、幅広い意味を持ちます。どのような意味においても、クリエイティブで働くということは、誰かの救いや希望になることだと横石さんは仰います。多様なクリエイティブの手段がある中で、困っている人や何かを求めている人の思いを掬い取って形にすることが重要です。また、クリエイティブ職は新しいものを生み出す魔法使いのように例えられることがありますが、白魔法のように人を幸せにするクリエイティブもあれば、黒魔法のようにネガティブな気持ちに加担させるものもあります。どのようなクリエイティブをするのかによって、キャリアは大きく変わっていくのだそうです。

講義4

成長社会から成熟社会に切り替わりつつある今、仕事をする人の価値は真面目さや正確さから人間らしさに移行しています。CMH(クリエイティビティ、マネジメント、ホスピタリティ)の能力を使う仕事は、たとえAI時代が来てもなくなることはありません。人間らしさや人との違いが価値になる時代では、自己紹介で自分の価値を伝えることも重要になるといいます。今までの自己紹介のセオリーでは、現在(会社名や肩書き)、過去(経歴や実績)、未来(情熱や問いかけ)の順番で話していましたが、横石さんの提唱する「自己紹介2.0」では逆の順番で伝えます。未来を先に話すことで思いが伝わり、より人間的な関係を築くことができるそうです。

第2部:ワークショップ「クリエイティブを武器に働くワークショップ」

ワークショップ1

横石さんは、これまでに聞いた中でビールメーカーのヤッホーブルーイング社長の「ビールでノーベル平和賞を狙っている井出です。」という自己紹介が最高だと思ったそうです。仕事に対する想いは人それぞれですが、井出さんはビールメーカーの仕事を世界を平和にする仕事に変換したことで、相手の印象に残り、自分の仕事をどう捉えているかも端的に伝えられています。このように自分の仕事の言い換えを考えるワークを、学生たちもチャレンジします。周囲の人とのフィードバックを挟みながら、自分だけの仕事観を形にしていきます。学生たちからは、デザインコンサル→立体的にものを見る彫刻師、空間デザイナー→360度デザイナーというような言い換えが発表されました。

ワークショップ2

次は、相手の脳内検索に引っかかるためのキャリアタグのワークです。自分に仕事の指名をもらうために、相手に発見されやすいタグを作ります。「皆さんは自ら仕事を探しに行くことが多いと思いますが、今回は誰かに呼ばれて仕事をするという感覚を体験してもらえたらと思います」と横石さん。タグは所属するグループから連想したり、得意なスキルを書いてみたり、敢えて自分の弱みにふれた内容でもよいとのこと。横石さん曰く、活躍している人は自己内省ができている人が多く、弱みも昇華することができているそう。学生たちは、一度考えたタグを周りの人に紹介し、反応を見ながらさらにブラッシュアップしていきます。

ワークショップ3

学生たちは1人あたり3つのタグを考えました。Webディレクターと専門店の仕事を両立している学生は#Web体験設計士、#接客大好き、#まじめに聞きます というタグを発表。横石さんからは「Webの仕事って人間から離れて捉えられるけれど、人となりは見られているし、お店の理解もあるということが伝わるので、信頼できるタグですね」とコメント。ある学生は、#カメレオンガール、#笑顔で帰れる秘密基地、#欲張り専門店 というタグを発表。カフェのアルバイトをしながら感じた自分のつかみどころのなさをアピールしたそうです。「コーヒーをやりながらデザインもやるようなスラッシュキャリアを積み重ねたときに、他の誰とも違うものになっていくと思います」と横石さん。

総評

最後に総評をいただきます。「今日やったワークは全て自分を知る行為の一環です。これで全部知れたという訳ではなく、ワークで知った自分の要素を線でつないで、星座が出来上がるように、自分のことを知っていくと良いと思います。ワークの途中で人に相談したりフィードバックをもらうことで、自分のやったことがアップデートされた感覚があったと思いますが、クリエイティブの仕事はそれが醍醐味だと思っています。その感覚で、仕事のパートナーとフィードバックし合って、クリエイティブキャリアを積んでもらえればなと思います。」横石さん、本日はありがとうございました!