PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「ストリートメディカルについて」

横浜市立大学 先端医科学研究センター 教授

武部 貴則 氏Takanori Takebe

PROFILE
1986 年生まれ。横浜市立大学先端医科学研究 センター教授、東京医科歯科大学統合研究機構 教授。2010 年米コロンビア大学研修生を経て、 2011 年、横浜市立大学医学部医学科卒業。同 年より横浜市立大学助手に着任。電通×博報堂 ミライデザインラボ研究員を併任。独立行政法 人科学技術振興機構さきがけ領域研究者。2014 年スタンフォード大学幹細胞生物学研究所客員 准教授、2016 年より T-CiRA 研究責任者、2017 年よりシンシナティ小児病院オルガノイドセン ター副センター長を兼務。2018 年より横浜市 立大学先端医科学研究センター教授、東京医科 歯科大学統合研究機構教授を兼務。WIRED Audi INNOVATION AWARD 、文部科学大臣表彰若 手科学者賞、第 1 回日本医療研究開発大賞日本 医療研究開発機構理事長賞など受賞多数。専門 は再生医学・広告医学。東京デザインプレック ス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「ストリートメディカルついて」

講義1

本日の講師は横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター長の武部貴則先生です。武部先生は再生医学の分野で世界的に著名な方ですが、TDPでは「こころまちプロジェクト」を皮切りに、医療のコミュニケーションの課題解決を目指す人材の教育プログラムStreet Medical Schoolを立ち上げるなど、病院やヘルスケア分野にクリエイティブが当たり前にあるような新しい医療のアップデートを推進しています。「今日はStreet Medicalという言葉とぶれとずれという考え方を覚えて帰ってほしいと思います。」武部先生、よろしくお願いいたします!

講義2

Street Medicalの考えでは「ぶれとずれ」を重視しています。「自分の世界だけで考えることは思った以上に狭いです。得意だなと思った領域から思い切りぶれてください。また、自分ひとりでできることはすでにやりつくされているので、自分とずれた領域にいる人たちとぶつかってください。この境界領域にブレイクスルーが起きることがよくあります。」武部先生自身もシンシナティ小児病院、東京医科歯科大学、横浜市立大学コミュニケーション・デザインセンターそれぞれで専門性や国籍も含めてずれたチームを横断して活動されています。

講義3

武部先生のStreet Medicalな取り組み「クリエイティブ・ホスピタル・プロジェクト」の事例を紹介していただきます。「TETSUJIN-AUDIO VISUAL」ではアートユニットとコラボして、院内学級の清掃用具を楽器にして演奏会を行いました。制限が多い小児病棟の入院生活を豊かにするため、病院内にあるものを使って…と企画されたプロジェクトです。他にもナイトアートミュージアムやこころまちプロジェクトも振り返りながら、「院内に観葉植物ひとつ入れるにも、衛生やメンテナンスの面での説得に3ヶ月かかりました」と実現までの苦労話も聞かせていただきました。

講義4

この100年、50年くらいで医学が進歩して、たくさんの病気が克服されるようになり、病気の種類が変わってきたといいます。「例えば今問題になっている“SNSで受ける心のつらさ”などは医学部では学べないし、COOVID-19対策にしてもマスクをつけてもらうための方法ももっていないんですよね。」今までの科学的・実践的な医療を基礎としながらも、患者の感受性や生活に訴える医療に拡張していく必要があると武部先生は話されます。身近な要素から医療につながる事例として、メタボ対策をファッションで行う「アラートパンツ」や、認知症を診断する探検ゲームなどを紹介していただきました。

第2部:ワークショップ「〇〇したくなる△△」

ワークショップ1

講義の後半は学生たちに事前課題で出されていた「〇〇したくなる△△」を発表してもらいます。「嫌いな野菜も食べたくなるスプーン」は食べる部分に野菜のイラストが描かれていて、形から好き嫌いを克服していけるというアイデア。そして、美味しそうなにおいのする紙に印刷された「食べたくなる広告」。こちらも好き嫌い解決のためのアイデアです。「何かのアクションで食事の時間ににおいが発動するメカニズムがあるといいですね。病院ではどうしても味気なさそうなものを食べさせなきゃいけないので、栄養士のチームですごく考えています」という現場の様子も含めて武部先生にコメントしていただきました。

ワークショップ2

熱のあるアイデアだったのが「ラーメンの汁を残したくなるラーメンどんぶり」です。どんぶりの内側の目盛りにコメントが書かれていて、汁が減っていくにしたがって「まさか汁飲むつもりっすか?」「まじっすか」「やばいっすよ」、底には「知らんぞ」と警告ワードが現れます。「っすよ」といった後輩言葉のほうが罪悪感を感じると言葉選びにもアイデアが光ります。他にも、スマホ使用の長時間化対策の「スマホを置きたくなるランプ」、紫外線で色が変わる「外出したくなる靴紐」、ユニークな形で視覚情報がなくても触覚で色の話ができる「話したくなるクレヨン」など個性豊かなアイデアが発表されました。

ワークショップ3

本日はもうひとつワークショップを行いました。テーマは「重度の肝臓病の患者に、その人がしたいことに対してどのような処方をするか」というもの。それぞれに渡された患者役の年齢、職業、好きなことが書かれたカードをもとに処方を考えます。もともとは中学生向けのワークショップで、実際に行うと大人が思いもよらない自由な処方がたくさん出るそうです。TDPの学生のアイデアも様々で、チームラボプラネッツが好きだという女性には病室で影が楽しめるコンテンツを、フェスが大好きな女性には病棟フェスを開催、会津若松好きな男性には会津若松をモチーフにしたVRゲームを、といった処方があげられました。

総評

武部先生は最後に病室の壁全面をスクリーンにして世界中の場所を体験できる「Dream Adventures」を紹介されました。「みなさんのアイデアにも多かった旅行体験の処方は、実際に実現され、絶賛されているアイデアです。みなさんがぶれをもって考えてくれたアイデアは誰かにとって価値があるものだと思います。次のステップで、アイデアを実現するときに意識してほしいのは“ずれ”です。アイデアは自分ひとりでは実現しません。自分の領域を超えてずれたプレーヤーと組むことで実現していただけたらなと思います。Street Medicalは誰にでもできます!」武部先生、本日はありがとうございました!