PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「動きのある空間」

スキーマ建築計画 主宰/建築家

長坂 常 氏Jo Nagasaka

PROFILE
スキーマ建築計画代表。1998年東京藝術大学卒業後にスタジオを立ち上げ、現在は青山にオフィスを構える。家具から建築、まちづくりまでスケールもさまざま、そしてジャンルも幅広く、住宅からカフェ、ショップ、ホテル、銭湯などを手掛ける。どのサイズにおいても1 / 1を意識し、素材から探求し設計を 行い、国内外で活動の場を広げる。日常にあるもの、既存の環境のなかから新しい視点や価値観を見出し、「引き算」「誤用」「知の更新」「見えない開発」「半建築」など独特な考え方を提示し、独自の建築家像を打ち立てる。代表作に〈Sayama Flat〉〈HANARE〉〈FLAT TABLE〉〈ColoRing〉〈BLUE BOTTLE COFFEE〉〈桑原商店〉〈お米や〉〈DESCENTE BLANC〉〈HAY〉〈東京都現代美術館 サイン什器・家具〉など。

第1部:講義「動きのある空間」

講義1

本日のプレックスプログラムは、数々の話題の空間やプロダクトを世に送り出してきた、スキーマ建築計画の長坂常さんに行っていただきます。あの「ブルーボトルコーヒー清澄白河ロースタリー&カフェ」を手がけた建築家としても、様々な業界から注目されています。まずは長坂さんが“生きたミュージアム”と称する、オランダのオーダックス・テキスタイル・ミュージアムを紹介。訪れた際、感銘を受けたその「動きのある空間」が、今の自身の作品に反映されているそうです。

講義2

次々と紹介される長坂さんの手がけた店舗は、どれもスタイリッシュ。しかし、そこには客を魅了する“動き”が考えられ、まるで全てが1本の線で繋がっているようなストーリー性を感じられます。「プロダクトは出来上がりしか見ていないことが多いので、内容を十分に理解しようと思ってもできない。そのつくられるプロセスを見て行くことで、モノに対しての理解(善し悪しの判断)がつくようになる。」という言葉に、

講義3

深くうなずく学生たち。いかに魅力的な“動き”で集客をするか。商品に対してお客が興味を持つように棚や配置を考え、建物内で人が動くことによって、その空間が生きてくる。それを見た人がお店に立寄ることで、また新たな動きをつくり出し、結果的にブランドが育つ相乗効果が生まれるのだそうです。見た目の美しさだけではない、長坂さんの考えられたデザインに教室のあちこちから「へえ~」「ほお~」というため息混じりの感嘆の声が漏れます。

講義4

そして、今は「かっこ良い」を提案されるだけでなく、お客側が自分で選ぶ能力がついてきた時代。それをいかに感じ取って無駄なコントロールをしているものを取り払い、“動き”をデザインするか。長坂さんのモノの見方を体感するうちに、あっという間に時間が過ぎ、後半のワークショップが始まります。

第2部:ワークショップ「新しい暖簾( のれん) のデザインを考える」

ワークショップ1

本日のワークショップのお題は「新しい暖簾(のれん)のデザインを考える」です。各自が30分程の時間で、新しいのれんの解釈をデザインに落とします。まずは検索してのれん本来の意味を捉え、B4の用紙にアイデアを描いていきます。「日常当たり前だと思っているモノを丁寧に解釈しなおして、発信してみる。そうすることで新しいモノが生まれるきっかけになれば良いな」と長坂さん。

ワークショップ2

完成した各々の用紙を前に貼り出し、気に入った作品に学生がシールを貼っていきます。投票数の多いベスト5を発表です!まずは、のれんを緑化するアイデア。続いて下着をのれんにするアイデア。そして、買う前にのれん状にしたお菓子の試食ができるアイデアなど、個性的なものがランクイン。中には、軒先から糸をつたって滴り落ちる水でのれんを表現するというものも。

ワークショップ3

一人ひとりに長坂さんからプロ視点のアドバイスが入ります。そして栄えある第1位は「カップのれん」。のれんが汚れている店は繁盛していると言われていたことに着目し、カフェの外に数量限定のカップを設置。そのカップにドリンクを注いでもらうので、残りの数によって店の繁盛具合がわかるというもの。「限定というのは良いポイントですね。数が減るという変化をつくるのも大事。お金を使わなくても毎日継続できる変化のパラメーターをつくれれば、もっと面白くなるかもしれませんね。」

総評

最後に長坂さんからメッセージ。「たかがのれんですが、新しい解釈で見ると、なかなか面白かったです。意外と違うところに視点を置いて、しっかりと紐解くというのが大事です。新しい定義をまた別の人が使っていくという意味で、自分が辞書の1ページを変えられたら良いなと思っています。皆さんも日常のモノを新しい解釈で捉えるきっかけを多く持っていただけたら嬉しいです。」