PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「空気感をデザインする」

画家・アーティスト

はやし まりこ 氏Mariko Hayashi

PROFILE
画家・アーティスト。インテリアデザインの仕事からレンダラーなどの経緯をたどって壁画の道に。1990年、株式会社エーアンドエムの壁画部門設立。当時はまだ作家個人だけで制作していた壁画の世界だったが、会社単位で請け負うという形態で成立させることに成功した。2000年より抽象画、タブローも制作するようになる。2003年~パリ、サロンドトンヌ入選。パリ、東京、上海などで自身の作品を発表しながら、ホテル、オフィスなど様々な空間の中にアートワーク、壁画を制作。ホテルコンラッド東京、ホテルオークラ、ロイヤルパークホテル、新宿高島屋、新日本製鐵株式会社・役員室、JALファーストクラスラウンジなど…。2010年より上海と日本とを行き来するようになり、作家活動をメインに活動している。

第1部:トークショー「空間の役割性」

講義1

今回のプレックスプログラムは、主に海外を拠点に活動するアーティスト、はやしまりこさんにお越しいただきました。 インテリアデザイナーから壁画家へと、キャリアチェンジをする経緯を、過去に手がけた作品と共に紹介いただきました。華やかしい作品とは裏腹に、果たしてこの道が自分にとって正しいのだろうか、自信が持てず、自問自答を繰り返した胸の内を明かしてくれました。

講義2

“トロンプルイユ”(だまし絵)や“エイジング”(時代の変化を色で表現する技法)など、装飾美術の仕事をするため、株式会社A&Mに壁画部門を設立。ホテルオークラ福岡、有明ワシントンホテル等の壁画を手がける中で、人とのつながりの重要性を再認識します。依頼を受けると、まずは誰が見てもわかるコンセプトを立てます。そこから画づくりをし、工程別のサンプルを作っていきます。画を入れることで、その空間にどんな意味が生まれるのかを考えるのです。

講義3

昨年から行き来している上海での作品や、今も飯田橋のフレンチレストラン「エドモン」に残る壁画などに加え、新宿高島屋の天井に貼った3x10メートルの作品は、目を見張るものでした。スタッフと協力し、奮闘した様子を楽しそうに話すはやしさん。また、母校ではステンドグラスの制作を行い、イメージを形にする小学生の創造性に触れていました。

講義4

初めての依頼内容に試行錯誤しながらも、パリのサロンドトンヌで入賞、作品を買ってもらったことが徐々に自信へとつながります。それでも個展や10年間の仕事をまとめた自費出版本「壁画と装飾美術」などを通し、今でも自分の在り方を確認していると言います。
「ぜひ海外へ!」。最後に、海外で暮らすことにより培われる異文化の知識が、今後の日本を変えていく、ワールドワイドな人になって欲しいと、はやしさんは呼びかけていました。

第2部:ワークショップ「空気感をデザインする」

ワークショップ1

ワークショプでは「つながる」というテーマで、まずはイメージを文章にしました。10分間で自分が思い浮かべる単語や文など、今までに体験した感情や記憶をリンクさせ、書き出しました。受講生は6~7人のグループとなり、各自のイメージを発表。手をつなぐ物理的なつながりや、心がつながる精神的なつながり、または、逃げられない恐さがあるネガティブなつながりなど、様々な意見が飛び交いました。

ワークショップ2

次に紙を使い、このイメージを表現していきます。絵の具や雑誌、色ペンなどを使い、グループごとに制作を行いました。いち早く作業に取りかかるグループや、意見をまとめてから動くグループなど、それぞれの個性が出ていました。中には直接手に絵の具を塗り、スタンプをしているところもあり、童心に返った受講生の夢中な姿が見られました。

プレゼンテーション

そして、各グループの代表が、プレゼンテーションを行いました。人がつながる欲求(エンドレス)をメビウスの輪のように表現した立体的なオブジェや、紙を数カ所くりぬいた、まさに「空間の中に風を起こす」表現をした作品など、時折、生徒から驚きの歓声が上がっていました。どのようなコンセプトで制作にあたったのか、はやしさんは興味深く一人一人の意見に耳を傾けていました。イメージを表現する、その難しさと楽しさに加え、コンセプトを入れることよって、空間がどのような役割を持つかを体感できるワークショップでした。

講評

最後に講師から「漠然とした言葉を形にするのは難しいが、一つの言葉を経験などに基づいて、読み砕いていくことが大事。紙だけを見てしまうと、その上だけの表現になってしまうので、紙は空間をつくるための道具と考え、アイディアを発展させていくと簡単なキーワードが素敵な空間に変わる」と、はやしさんにまとめていただきました。
本日はありがとうございました。
Text by 編集&ライティングコース
矢田貝恵