提供するのは、商売の起爆剤となるデザイン
学生時代は、好きな洋服を買うためにアルバイトを朝から晩までしていましたね。お金を稼いで、お気に入りの服を着て出かけて、その先で交友関係を増やしていくことが楽しくて仕方なかったですね。当時は、自分が行きたいと思うぴったりの場所がなくて、声を掛けてくれた方に提案したら、作ってみたら?といわれ、バーを作ったのが始まりです。
僕自身、店舗のデザインは未経験だったので、ファッション誌のモデルの背景などを参考にイメージしながらデザインしていきました。そもそも、自分はデザインよりも人の流れに興味があって、人が望む場所を作り、人が集まってくるようにしたいと思っていました。格好いいもの、美しいものをつくろう、という発想ではなく、“自分たちが行きたいところ”を作らせていただいたというのが正しい。そのスタンスは、今も変わってないですね。
そうした場所を作っていく上で大切にしているのは、タイムレスなデザインであること。オーナーやクライアントの方々が用意した大切なお金を使うのですから、流行り廃れないものにするよう意識をしています。あとは、周辺のライバルにどうしたら勝てるのかを考える。ライバルにはないオリジナリティをどうやって出していくか、ということに注力します。そして、もう一つはコストパフォーマンス。与えられた予算やスケジュールで、最大のパフォーマンスを発揮するということです。デザインは、クライアントマター。クライアントの店舗・オフィスが繁盛するよう、手助けをするのがデザイナーの役割です。そのためにはクライアントの個性を引き出し、商売の起爆剤となるデザインを提供しなければならないと、常に思っています。
これからデザイナーになりたいと思うのであれば、敢えて違う業界に触れてみるべきですね。意識しないと体験できないようなことを五感を使って吸収し、それをデザインにアウトプットすることが大切です。例えば、グラフィックデザイナーが同じ分野を探っても、それは他人がやったことを見るだけで、正直役に立たない。全く違う世界に飛び込んでいったほうがアイデアは募ります。そして、机・画面にかじりついていないで、遊びに行くこと。実際に自分でお金を使ってみないと、その店の価値や雰囲気はわからないですからね。今の時代、インターネットを見ただけで世界中に繋がれる気になりますが、体感するとしないでは異なります。どんなに遠くても、いろいろな場所に行ってみる。そこで気づくこと、その情報量や体験、費やす時間は将来の財産になると思います。