PROFESSIONAL MESSAGEプロフェッショナルメッセージ

久能 真理Mari Kunou

PROFILE
言葉になる前のものを、形にする。ブランドの核をつくるアートディレクター。まだ見えていない本質をすくい上げ、静かな必然性を持つデザインへ翻訳する。CI、パッケージ、エディトリアル、web、空間など、領域を横断しながらブランドの世界観を立ち上げている。千葉県生まれ。武蔵野美術大学 造形学部 空間演出デザイン学科卒業。 yotsugi yasunori incorporation を経て、水野学氏率いるgood design company入社。2011年独立。これまでの仕事に、台湾の漢方医院・薬局「意一堂中醫診所」リブランディングプロジェクト、文具ブランド「grand jeté」(マルマン)商品企画を含むブランド立ち上げ、ラフォーレ原宿「LAFORET PRIVATE PARTY」、ANNA SUI「ANNA SUI × 7MANGA」商品企画を含むアートディレクション、写真集『forward』装丁デザイン(世界で最も美しい本コンクール選出)など。日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)会員。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

経験したことは全て今の自分の糧となります。

両親の教育方針で、幼稚園の頃からヴァイオリンの教育を受けていたんです。そのままいけば当然のように音大へ進学する道を歩みながら、「周りにはかなわない」と劣等感を抱きながらレッスンに通っていましたね。中学生の時に親に反抗して音大進学のためのレッスンを辞めると同時に自分の好きなこと、将来のことを考え始めました。物作りが好きだった事もあり、どうせ学ぶなら好きな事を、と美術大学に進学しました。空間デザインを専攻していましたが、非常勤講師としてアートディレクターを招く授業もあり、それを受講したりするうち、徐々にグラフィックデザインに方向転換していきました。

今まで自分が女性デザイナーであるということを特別意識してデザインしてきたという自覚はありません。その都度、担当する案件に対して最も適した解決方法を提案してきたということの積み重ねですが、比較的依頼内容が女性向け商品や企画ということが多いので、必然的にアウトプットも女性的な表現のものが多いということはあるかもしれませんね。男性の場合、女性向けの商品を作る際、”ピンク色”とか”お花”とか「男性から見る女性の好み」という発想でデザインしがちなのかもしれませんが、女性が作る場合、そこまでしなくても「女性らしさを感じる」ものがデザイン出来ているなら、それは逆に女性だからこそ固定観念に捕われずに表現出来るということなのかもしれません。

また、私が制作を進める中で心掛けていることの一つに”モノ感”があるかどうかということがあります。ビジュアル面に加え、素材感や重量感などの総合的なたたずまいも含めて「手に取ってみたい」「側に置いておきたい」という気持ちに引っかかるような、存在感のあるものを目指しています。そういうアプローチは、もしかしたら空間デザインのプロセスから引っ張られてきているのかもしれません。振り返ってみると、音楽や空間デザインなどまわり道はしたけれど、その全てが今の自分の糧になっていると思います。

アートディレクターの仕事は、華やかそうな印象とは裏腹に、気力も体力も必要な厳しい世界です。それでもなぜこの仕事を続けるのかといえば、好きだからこそ頑張れるということに尽きます。これから学ぼうとしている方々にも恐れずに飛び込んで欲しいですね。

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