PROFESSIONAL MESSAGEプロフェッショナルメッセージ

中野 一男Kazuo Nakano

PROFILE
「SONY」「TOYOTA」「富士通」など、多くの企業のポスター、CI/VIなどプロモーションツールのデザインを担当。紙媒体を中心に、グラフィックや3DCGデザイン、写真、映像と様々なメディアでの表現を行っており、また、Webコンテンツのプランニング、電子書籍のプランニング、空間デザインなど各種プランニング業務やクリエイティブソフトのチュートリアルの執筆やデモンストレーションなども行なう。フリーランスのクリエイターによる制作組織である『Project BB』を発足および運営し、様々なメディアで活動しているクリエイターとクライアントとのマッチング業務も行なっている。東京デザインプレックス研究所講師。

デジタルに頼らず、デザインの本質を楽しんでもらいたい。

絵を描くことが好きだったので、高校卒業後の進路は美術を勉強したいという気持ちがありました。アートやデザインといえば藝大しかないと考えてたから、そこ1本で受験したんですが、結局受からなくてね。泣く泣く普通の大学に通うことにしたんですよ。そのかわり、大学1年から知り合いのアートディレクターの元でバイトを始めて、そこで表現のノウハウを学びました。当時はまだモノクロのMacで、主にアナログで切ったり貼ったりの仕事が中心でしたが、その時の経験は、今思うとかえって良い勉強だったと思います。怒ると手が出るような、厳しい先輩の下で7年くらい...辛かったですけどね。僕が独立するときは、色んな人に「今度仕事があったら中野にお願いします」って紹介してもらって。今考えると、良い先輩でした。

僕の仕事のジャンルは、グラフィックに3DCG、Web、映像、空間デザインと、幅広いですが、それは独立後、とにかく仕事を取るために何でもやってきたから。例えば、まだ3DCGも禄に知らない状態で、クライアントに「できます!」って大見得きって、帰りにソフトを買って必死でやる(笑)。Webも、そんな感じで仕事とった後に、徹夜でプログラマーにコーディングを教わったりして。そして、後日、何事もなかったようにプレゼンに臨む。追い込んだほうが覚えるのも早いから、自分にとっては、それが一番いい技術習得方法でした。

デザイン業界を目指している人の多くは、IllustratorやPhotoshopを操作することがデザインと思っているのではないでしょうか。皆、デジタルに頼りすぎてしまって窮屈そうに作っている感じがするんです。デジタルは、道具です。だから、僕が人に教える際は、わざとアナログワークを入れて、あえて「失敗して覚えさせる」ことを大事にしています。デザイナーはアーティストと違って特殊性や才能を持っていることが全てじゃない。むしろ、商品を買うのは普通の人ですから一番普通の人であるべきだと思っています。さらに、その普通の感覚を遊べる人が良い。行き詰まったときは一旦モニターから離れること。そして、面白いと思うことに食いついて、デザインをもっともっと楽しんでもらいたいと思っています。