クリエイティブなものに隠れる一篇の詩。
言葉を扱う仕事に就きたいと、学生の頃から考えていました。きっかけは長くやっていた音楽活動での作詞。法律とアメリカ文学を専攻し、大学を出て広告代理店のコピーライターになりましたが、1年半で独立。フリーで仕事をしながら、音楽活動を中心に、詩を書いて過ごしていました。
書き溜めていた詩がアメリカで出版されることになり、逆輸入という形で日本でも詩人として活動するようになりました。詩を書いて暮らしていこうと思った大きなきっかけはスターバックスコーヒーのWebマガジンでの詩の連載。毎日一篇の詩を書いて暮らせるというのは自分でも驚きでした。詩のないところに詩を運びながら、今後も様々なことができるのではないかと。
コピーライター時代には最終決定を他人(クライアント)に委ねるということに、どこかフラストレーションを感じていました。今は誰かに作品を委ねることがないので、最後まで創作に責任を持てるという充実感を感じています。
詩を書いていて面白いのは、毎回自分でも想像もつかない仕事が入ってくること。お酒を飲んで詩にしたり、香水の香りを詩にしたり、逆に自分の詩が絵になったり立体作品になったり。異分野の組み合わせほど面白いと感じます。
クリエイティブなモノやコトの裏側にはすべて、一篇の詩が隠れています。自分はそれを言葉にしていますが、ある人は音楽に、ある人は造形物にするかもしれません。隠れている詩情(ポエジー)を探り、それを表現したいという気持ちは他の作家さんたちも同じだと感じます。
同時に「もしも詩が水なら、どんな器に注ぐことができるのか」と考えています。本も紙でできた器であり、インターネットもデジタルの器。さまざまな作り手たちとコラボレーションすることで、詩を音楽の器に注いだり、街やデパートなどの建物に注いだり、天気予報という情報の器に注ぐこともできる。詩を書くだけでなく、どうみせるか、どうパッケージングするかまで考えていけることが自分の強みかもしれません。長きに渡る音楽活動や、広告業界で働いていたことも今に活かされています。やってきたことは、すべて糧になっていますね。