MEDICAL DESIGN LABOメディカルデザインラボ

メディカルデザインラボは、東京デザインプレックス研究所が企画・運営するラボラトリーで、2019年に始動した「Street Medical School」を長期的に継続・発展させることを目的としている。Street Medical Schoolは、横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)と東京デザインプレックス研究所が共創。試験により選抜されたメディカルデザインラボの研究生は、Street Medical Schoolに優先的に参加可能で、ソーシャルデザインに繋がる多彩な学びの場が提供される。

Street Medical School

Street Medical Schoolは、医師をはじめとする医療従事者と、デザイナーをはじめとする様々な業界のプレイヤー・クリエイターとが共に、新しい医療を学び創る場です。横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)と東京デザインプレックス研究所が運営しています。Street Medical Schoolでは、デザイナーの卵たちと医療従事者、医療従事者を志す者たちが集い、広告・デザイン・医療など各界のトップランナーを講師に迎えて特別授業を行います。その中で、自ら課題を発見し、現代医学の科学性を踏襲しつつ、さまざまな発想・手法でその解決策を確立・実践することのできる人材を育成します。

カリキュラムの流れ

※LECTURE(講義)抜粋。武部貴則「Street Medical」、山本尚毅「未来洞察とデザイン思考」、井上祥「医療情報発信の今」、中邑賢龍「デジタル時代のアナログ教育の意味」、稲森正彦「便にまつわる医療」、今井裕平「Flagship Design」、佐藤夏生「Branding 課題から可能性へ」、古川裕也「Creative Direction」。

医療×デザインを繋ぐ、新しい医療・医学のカンファレンス「Street Medical Talks」

横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)と東京デザインプレックス研究所は、2020年2月11日、東京都千代田区にある東京ミッドタウン「日比谷BASE Q」で、医療×デザインをテーマにした新しい医療・医学のカンファレンス「Street Medical Talks」を開催。本カンファレンスでは、YCU-CDCと東京デザインプレックス研究所が運営する次世代の人材育成プログラム「Street Medical School」の受講生らによる卒業発表(右ページ8つのプレゼンテーション参照)を中心に、医療者や広告クリエイティブおよびメディア関係者をコメンテーターとして招致し、ディスカッションも行われました。また、YCU-CDCのセンター長・特別教授である武部貴則氏による新しい医療の概念・分野である「Street Medical School」について詳しい解説がありました。本カンファレンスでは、「Street Medical School」の受講生がチームで取り組んできた新しいアイデアが多くの人たちにシェアされ、医療者や広告、デザインの交流が生まれる場を作ることができました。今後、医療や広告、そして企業や自治体など、様々な分野や領域を横断し、「Street Medical」のアプローチによる新しいアイデアを社会実装する担い手を創出する大きな一歩となりました。

学生による8つのプレゼンテーション Street Medical Talks(2020.2.11 日比谷BASE Q)

香りで神経疾患開発や健康意識向上を促す

〜“Scent”チョコレート〜

パーキンソン病とアルツハイマー型認知症は、先行症状として数年前より「嗅覚障害」が認められることが複数の研究により示唆されていることを踏まえ、様々な香りのフレーバーチョコレートを顧客に提供するプロダクトを提案しました。パッケージには何の風味かを記載せず、ユーザーはチョコレートの香りを楽しみ、風味を推測しながら、実際に味わって風味を知ります。ユーザーは買う、開ける、嗅ぐ、何の風味かを推測して当てる。その一連のプロセスをゲーム感覚で楽しめ、大切な人とのコミュニケーション手段にもなるのが特徴です。

病室での「多様なすごす」をデザインする

〜ホスピタリティ空間・家具〜

(株)乃村工藝社のプロジェクトメンバーは、病院待合におけるホスピタリティ空間と家具を提案。きっかけは、小児科入院病棟の待合室。家族でお見舞いに来ても、入院中の子に会えるのは親だけのケースもあり、兄弟姉妹は長時間、待合で待つという課題を抱えています。家具はパーツを組み合わせることで、病院を改装しなくても、一人になれるプライベート空間「Personal」や、会話ができる「Communication」、参加型の楽しい時間を過ごせる「Active」の3通りの空間を導入できるように設計。全ての人へのホスピタリティ実現を目指す構想です。

緩和ケアのための患者=患者家族=医療者間コミュニケーション・デザイン

緩和ケア病棟における「看取りを待つ場所」というイメージを一新し、コミュニケーションが活発にできる場所に変える施策を考案。横浜市内の緩和ケア病棟を訪問し「がん患者の辛さを和らげ、“生きる”をささえる」という理念の一助になる2つの施策を提案。1つ目は「病室カスタマイズ」で、病室の壁の一面を患者の部屋のようにカスタマイズできるサービス。2つ目は「アロマ・コミュニケーション」。看護師が患者にサービスで実施しているアロマオイルのマッサージの知識や技法を家族に伝えることで、家族も緩和ケアに関わることが可能となります。

救急判断に迷った時に!「#7119」の認知度向上のための自動販売機施策

救急車は5秒に一度の頻度で出動要請されるが、搬送者の約54%が軽傷の現状を踏まえ、119番を呼ぶか迷った時の相談ダイヤル「#7119」の認知度向上の重要性を唱えました。具体的に、熱中症を例に、駅やバス停、野外イベント会場での救急シーンを想定。全国の自動販売機を利用して、スポーツ飲料や塩分入りタブレット、冷却材などの熱中症対策商品を展開し、各商品に「#7119」の紹介や、熱中症や救急に関する情報を掲載。その他、季節ごとに増加する病気や体調不良を引き起こしやすい環境などで、同展開のシリーズ化を考案しました。

「AMR対策×ボードゲーム」を用いてのエデュテインメント

AMR(薬用耐性)とは、抗菌薬の不適切な使用により抗菌薬が細菌に効かなくなること。世界でもAMRによる死亡者数が2050年には1000万人になると予想され大きな課題に。AMRの拡大を防ぐためには、教育(Education)×娯楽(Entertainment)=エデュテインメント(Edutainment)の取り組みが効果的と考え、現在の小・中学生を対象に予防啓発のボードゲームを考案。イラスト中心の基本セットからカードの種類を増やす拡張パックまで難易度の調整ができるように設計。将来的には開発途上国における教育活動も視野に入れています。

学校での近視発見からの受診

〜Hybrid Imageを用いて〜

近年は日常習慣を要因とする中高生の近視が深刻化しています。そこで、年に一度の健康診断を補うため、学校内に「Hybrid Image」を取り入れて、生徒自身による視力の自認に繋げる取り組みを考案。「Hybrid Image」とは、視力によって見えるものが変わる画像のこと。学校の階段の踊り場に、アインシュタインとマリリン・モンローの「Hybrid Image」ポスターを掲示する案を発表(他にも様々な掲示案が楽しめる)。QRコードと組み合わせ、コミュニケーションアプリのLINE BOT機能を追加することで、定期的に視力に関する啓発を行う構想です。

お母さんのための駅ビル・ショッピングセンター「フリーダム育児」施策

子どもの虐待通報件数は年々増加。核家族化やワンオペ育児が課題となる中、母親の約半分が孤独感を感じています。そこで、駅ビルやショッピングセンターを活用し、母親が外出して他者とコミュニケーションをとりながら育児ができる「フリーダム育児」環境を整える施策を発案。母親の状況に合わせて、買い物ついでにコミュニケーションが取れる施設や、ベビーカーOKの飲食店やホコ天スペースなど具体的な施策を考案。店舗入口には「フリーダム育児」のステッカーを貼り、テナントやデベロッパーなどの協賛を広げていく構想です。

小児の入院中の食事体験に楽しみを増やす食器カバーとカトラリー

入院中の食事は、小児にとっては制限が多く、満足できる体験ではないのが現状です。そこで、小児のために2つのプロダクトを考案。1つ目は、食器カバーとランチョンマットのパッケージで着せ替え遊びができてテーブルセッティングを楽しめる施策。2つ目は、温度によって発色するインク(メタモカラー)を活用したカトラリーで「手に取る」「食べ物をすくう」「口に入れる」などの動作を視覚的に楽しめる施策。これらの施策を通して、小児の孤食の寂しさを軽減して入院中の食事を楽しくすることで、積極的な食事行動に繋げる構想です。