PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「“エシカルクリエイティブ”を考える~Part3~」

株式会社THINKSTHINKS代表/プロジェクトマネジャー

島野 麻里 氏Mari Shimano

PROFILE
株式会社THINKSTHINKS 代表取締役、プロジェクトマネジャー、中小企業診断士。ブライダル、クリエイティブエージェンシー、ジュエリーブランド等にて、セールス、デザイン、プロジェクトマネジメント、ブランディング、PR、マーケティング経験を積んだ後、2018年独立。中小企業診断士登録。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:「“エシカルクリエイティブ”を考える~Part3~」

講義1

本日のプレックスプログラムは、株式会社THINKSTHINKS代表の島野麻里さんにお越しいただきました。今回、クリエイティブディレクター兼スタイリストの石井なお子さんにもご同席いただき、「エシカル」なクリエイティブについてお話を伺います。「エシカルというと倫理的と訳されることも多いですが、私たちは何かに対してやさしさと思いやりをもつ、というものだと思っています。そちらを踏まえ、本日のテーマは、「“サステナブルにおしゃれであること”の民主化を考える」です。サステナブルでおしゃれなものは、人々に公平に届いているのかを検証し皆さんと考えたい、と島野さん。

講義2

「サステナブルなおしゃれ」であることから排除されてきた人達は誰なのか?人が持つ権利と資本主義の歴史を紐解きながら、島野さんは以下の5点の要素を大切にしているものが「サステナブルなおしゃれ」であると言います。「長く使えるもの」「世代を超えて受け継がれるもの」「生産や使用時また廃棄時に環境や他の動物に影響を与えず、健康的なもの」「すべての人がアクセスできる開かれたもの」「ハンデのある人たちを支えることができるもの」。これらの要素を一つでも多く満たすほど、その製品やサービスの社会的価値は高まります。現在、多くの企業がこの価値観を実現するために、日々取り組みを続けています。

講義3

近年「サステナブル」という言葉が広まった背景の一つとして、2013年にバングラデシュの首都ダッカ近郊で起きた縫製工場崩落事故「ラナ・プラザの悲劇」が挙げられます。この事故によって、安価な衣類の大量生産・大量廃棄、そして過酷な労働環境などが世界的に深刻な問題であることが広く認識されました。さらに2015年には、国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、先進国・途上国を問わず「誰一人取り残さない」という理念のもと、貧困、環境問題、経済成長など社会・経済・環境の3側面を統合して課題解決を目指す世界共通の行動指針が示されました。

講義4

世界的な行動指針が示されたことで、グローバルブランド(世界市場で展開)が担う義務は明確になりつつあります。その上で、グローバルブランドの資本力が負うべき責任は何か、またインディースブランド(小規模で生産)だからこそできる取り組みはどんなことがあるか、島野さんは学生たちに問いかけます。そして、デザイナーが日々直面する「美しさとわかりやすさの対立」であるアクセシブルのジレンマから逃げず、「“誰もがアクセスできる入口”と、“知る人が気付く深み”、この二重構造こそがエシカルクリエイティブの本質である」という結論と、それは「社会全体に興味を持ち“読み取る”ことからはじまります」というメッセージをいただきました。

第2部:ワークショップ「“おしゃれからの排除”をリストアップし、“でも本当はこうありたい”という願いを想像しよう」

ワークショップ1

前半の講義を踏まえ、後半はグループに分かれてワークショップを行います。課題は、「社会から『サステナブルなおしゃれの権利』を奪われている人々に、美しさとアクセシビリティを同時に届けるプロジェクトを企画せよ」です。 経済的・身体的・社会的格差などによっておしゃれから排除されているケースを見つけ、それらを解決するサービス・プロダクトなどのアイデアを出し合います。グループに分かれ、プロジェクト名とタグライン、ストーリーテーリング、さらにそれがもたらす社会的インパクトを考えて発表します。

ワークショップ2

あるグループが考えたプロジェクトは、「ロミオとジュリエット」です。足の大きさが左右で違う方をペルソナに設定し、サイズの異なる靴の片方を探すことができる、モノの片方だけを売り買いできるアプリを考えました。ユーザーが探しているもう片方に出会えた時の感動を想像し、このようなユニークなプロジェクト名になったそう。なくしたモノの片方を探すという使い方も可能なため、「モノを長く使うことは素敵なことだという文化」、さらに「色違いを履いてもおしゃれという文化」などをつくり出したいと発表していました。

ワークショップ3

別のチームは「就活ポイネット ~就活が誰かのためになる~」というプロジェクトを発表。奨学金の返済が必要な学生が、就活期間は思うようにアルバイトができずに困っている状況を踏まえ、就活中は企業からの支援を受ける代わりに、就職後は就活生のメンターとなって恩送りをする仕組みです。企業は・就活生のリアルな声を直接聞き継続的な関係性を築けるなどの様々なメリットがあり、社会全体には奨学金制度への理解促進や、就職活動そのもののイメージ向上にもつながる可能性があります。

総評

各グループの発表に対し、丁寧にフィードバックをしてくださった島野さんと石井さん。最後にコメントをいただきました。「お互いの価値観を話したり、アイデアを出したりする時間は、今の時代はなかなかハードルが高いかもしれません。しかし本日このような話す場を持ったことで、皆さんがクリエイターとして明日から何ができるのか、わくわくしながら考えるきかっけに繋がったら嬉しいと思っています。これからの皆さんのご活躍を期待しています。」この度は貴重なお話をありがとうございました。