PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザインイノベーションの手法」

ツクリビト株式会社代表

小野 ゆうこ 氏Yuko Ono

PROFILE
日本大学大学院藝術学研究科修士課程修了。企画コンテンツ制作会社で1年間のサラリーマン経験後、2006年、ツクリビト株式会社(旧社名:株式会社つくるひと)を創業。オリジナル思考ツールを使った問題解決力が認められ、商品、サービス、事業開発、業務プロセスの改善現場に入る。考え方の仕組みを整えることで、 変革が起きるプロジェクト現場を創業以来800以上経験。「考え方を変えれば世界が変わる」をあらゆる仕事の軸としている。明治大学サービス創新研究所客員研究員。International Forum of Visual Practitioners会員。東京デザインプレックス研究所講師。

第1部:講義「イノベーションの手法」

講義1

今回お越しいただいたのは、当校のデザインストラテジー専攻の講師でもあるブランディングディレクターの小野ゆうこさんです。ご自身の会社、株式会社つくるひとでは課題解決のためのフレームワークを用いて、業種・業態問わず様々な企業とのプロジェクトを行っています。今日は「言葉とフレームワークと美意識」をテーマとして、小野さんのお仕事や「人生を愉快に過ごすコツ」についてお話ししていただきます。「母でもある自分でもキャリアを伸ばすことができるのは、クリエイティブの業界にいるから。特に女性たちは応援しています。」との心強い言葉から、講義のスタートです。

講義2

東京日本語学校長沼スクールの事例は「WEBリニューアルをしたい」という依頼から始まりましたが、クライアントとの対話によりブランド開発から進めることに。「ブランディングの仕事はブランディングとして来ない」とのこと。講師陣全員を巻き込んで学校のコンセプトを探った結果、校内で自主的なプロジェクトがいくつも立ち上がりました。小野さんの「困ったことを全部クリアにしたら何がしたい?」との問いかけや「それいいですね!」との共感の言葉が、講師陣の意識を変える対話を作り出したのです。インナーブランディングといって、ブランドの価値に携わる人たちの考え方や行動が変わるのも、ブランディングのひとつの成功の姿です。

講義3

旧ライフプラザ横浜の事例では、社員主体の社名変更からはじまり、社員全員で企業理念をつくる対話型プロジェクトも推進。さらには小野さんが独自の人事評価制度まで作成。前々から勉強していたからこそ、できたことだそうです。「お客さんは仕事の領域に関係なく、その人を信頼します。自分の好奇心の領域を決めないで色々なものを見たり、人の話を聞くことが大切です。自分は変わらないと思っていても変わっていきます。」この話で特に印象的だったのは、興味の幅を決めてしまわないために、嫌いなものにこそ興味をもつということ。小野さんは、心の中の嫌いなものに立ち臨む「克服道場」をもち、日々苦手克服に臨んでいるのだそうです。

講義4

講義の最後に、小野さんの3つの仕事道具「言葉・フレームワーク・美意識」についてお話しいただきました。まず、言葉の達人になって共感と納得をつくること。相手の頭の中に感情やロジックを展開させるにはどんな言葉を使えばいいのか、相手に興味をもって思いやることが小野さんの言葉のベースになっているそうです。次に「フレームワークを使うことに慣れる」こと。フレームワークを用いて情報を整理し、対話をつくることで、過去の延長線上から脱却する「創発」を起こします。そして、美意識を磨くこと。周りからいろいろなことを言われても、最終的に自分で決めるために、よりどころとする言葉をもつ大切さをお話しいただきました。

ワークショップ「パーソナルブランディング入門」

ワークショップ1

後半はワークショップです。テーマは「パーソナルブランディング入門」。パーソナルブランディングとは自分と一致して生きているということ。その人らしさを発揮することは、自分に矛盾や葛藤がない状態だといいます。小野さんが作成したフレームワークを使って、学生たちが自分の好き嫌いを見定め、自分自身で決めるためのよりどころとなる言葉を見つけます。自分と対話するときに大事なことは「感じることを優先する」「直感など根拠がないことを生かす」「必ず自分の内側に答えがある」ということ。この3つをマインドセットとして進めていきます。

ワークショップ2

1つ目のワークでは、まず自分の長所を8つ書き出します。そして、長所の右側に、その要素が良い方向に強く出た場合、左側には悪い方向に作用した場合にどうなるのかをそれぞれ書き出します。次に8つの短所を書き出し、同様に左右の欄に書き込みます。このワークで大事なのは何事も善用することができるという気づきです。「私たちは自分の要素を良い悪いで考えてしまいますが、何事も良いはたらきに変えていくことができます。」と小野さん。ワークで書き出したもののなかで「こういう自分でいたいなあ」という要素3つに丸をつけて、1つ目のワークは終了です。

ワークショップ3

2つ目は小野さんが学生たちに絶対やってほしい!というワークです。まずは、プリントに書かれたたくさんの職業の中から気になる職業に丸をつけます。次に丸をつけた中から3つだけ「絶対に惹かれる」職業を選びます。それらを選んだ理由を書き出し、その文章を使って紹介文を書きます。このときの主語は「彼」または「彼女」にすること。その文章を一言でいったら何なのかを書き出します。そして、近くの人と用紙を交換し、相手にも用紙の文章から考えた一言を書いてもらいます。「相手から言葉をもらうのは嬉しいですよね。この言葉を支えにしていきましょう。」と小野さん。

総評

最後に講評をいただきます。「ワークショップでやったように、フレームワークの良いところは、思考のレイヤーを揃えて、具体化と抽象化の行ったり来たりをしやすくすることなんです。自分との対話がしやすくなる。これはただ漠然と考えるよりずっといいんですよ。」渡されたプリントの最後には、思い出の掛け算から考え方のくせを見つめ直す3つ目のワークが。これは授業後に各自で取り組みます。3つのワークは、学生たちの自己アピールやキャリア形成の軸を見つけるための重要な手がかりとなるのではないでしょうか。「人生はなるようになります。深刻に考えすぎずに、軽くいきましょう!」