PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「私事(わたくしごと)から仕事は始まる」

リ・パブリック共同代表

内田 友紀 氏Yuki Uchida

その他担当講師
フューチャーデザインラボ カタリスト 山本 尚毅 氏
ヘアーラウンジエゴ代表 丸山 裕太 氏
PROFILE
メディア企業勤務を経てイタリア・フェラーラ大学大学院にてSustainable City Designを専攻。イタリア・ブラジル・チリなどでの地域計画プロジェクトに参画。現在はリ・パブリックにて福岡市・福井市などで都市型の事業創造プログラムの企画運営や、企業の研究開発領域での人材育成・環境構築などに携わる。2017年、内閣府より地域活性化伝道師に任命される。

第1部:講義「私事(わたくしごと)から仕事は始まる」

講義1

今回の講義は次の3名をお迎えしました。国内外のデザインと社会課題の接点を創る活動を行ってこられた、当校フューチャーデザインラボ カタリストの山本尚毅さん。もう1名は「文化起業家」「都市デザイナー」「内閣府地域活性化伝道師」等々、多くの肩書きをお持ちの内田友紀さん。地域や都市のデザイナー・イノベーター的な観点からお話しいただきます。最後は美容室を数点経営しながら、カンボジアなど東南アジア諸国で美容専門学校を立ち上げ、現地で講師の養成等を行うNPO法人を運営されている丸山裕太さん。自らの興味やきっかけから、キャリアを築いてきた3名から多くのことを学ぶチャンス。ぜひ学生たちにはこの機会を活かして欲しいと思います。

講義2

さっそく、今までの活動についてご紹介いただきます。はじめに丸山さんから、カンボジアでの活動についてのエピソードです。ご自身が美容師という丸山さん。現地でのボランティア・カットをされていたそうです。活動を通し、現地の要望に応えていくなかで本格的な美容師養成のスクールを設立するに至ります。「やりたいことをやる」から始まり、人のニーズを聴きながら徐々に今の形へと広がってきたのだそうです。そんな丸山さんが特に意識していることは「100戦1勝」「話す・やる」「固定観念をとる体験をする」というキーワード。人との繋がりを大切にしながら実践を重視する。実際にプロジェクトを運営している丸山さんの思いが込められたお話に学生たちは真剣に聴き入っています。

講義3

続いて、山本さんから「自分ごと」をテーマにお話しいただきます。一緒に起業した仲間と話す中で、「デザインを通じて、生活者の向上ができるんじゃないか」と考えたことをきっかけに実現したのが「世界を変えるデザイン展」。途上国などの現場にあって生活を変える可能性を持った様々なプロダクトやサービスを発信する場となりました。企画の実現に向けて訪れたフィリピンでは、資源になりそうなものを廃棄場から集める人の1人に目が止まったそう。それは埋もれている金属物を拾いやすい道具を持ち、明らかに素早く集める姿でした。1つの道具が生活を変えるかもしれない。可能性を感じたその光景がとても印象深いものだったと話されました。

講義4

最後に内田さんからです。大学で建築を学び、次第に「創造的で自律的な都市の姿」というものに強く関心を持つようになったそうです。イタリアへの留学を経て、帰国されてからは人の変化が街の姿に影響していくことに注目し、複数のセクターを繋ぐ必要性を感じ「RE:PUBLIC」の設立に参加したそうです。様々な分野の人達が持つ強みを活かせる環境をデザインする活動を起点に、人が挑戦できる場を地域に作る活動などへ精力的に活動されています。「共に学んで変化していく共同体みたいなものが生まれつつあって、私が身に付けるべきスキルやアプローチも変わってくると思っていて、今ももがいています。」と内田さん。3名からお話いただいた後、皆さんにQ&A形式で質問に応えていただきした。前半はここで終了となります。

第2部:ワークショップ「自分の強みを仕事にしてみよう」

ワークショップ1

後半はワークショップを行います。チームに分かれ「メンバーの強みを仕事にする」というプロセスでプロジェクトを立案してもらいます。各チームはやることが書かれたプロセスカード(例:発信・旅に出るなど)を3枚選んでもらい、自分たちで1つ考えたものと合わせて4つのプロセスから成るプロジェクトを練っていきます。メンバーの個性を活かせるテーマは何か、「プロセスカード」をどの順序でプロジェクトに反映させるか、チーム毎にどんな案が出てくるのでしょう。自由度の高い課題に学生たちは悩みながらも楽しみつつ、アイディアを詰めていきます。

ワークショップ2

各グループの発表です。「本気で遊ぶ」をテーマにしたチームは町全体を使ってゲームを考えるというプロジェクト。情報収集やSNSを活用した発信に加え、企画自体を繰り返す事で、プロジェクト自体が成長していくという仕組みまで考えられていました。山本さんはカードを使ってのプロジェクトの流れがスムーズでまさに模範例と絶賛です。「新しいアートの発信」プロジェクトのチームではメンバー同士の特技を掛け合わせた新しいアートを発信するというコンセプト。発信する際には街中や自然といったフィールドを上手く使い、発信方法そのものが面白い表現となっている企画でした。テーマが素敵だと内田さん。誰に届けたいのかを決めることでより具体的な展開へ広がっていくのでは。と自らの経験を元にアドバイスをいただきました。

ワークショップ3

個性的なプロジェクトの発表が続きます。自分と共通の趣味などを持つ人同士が知り合うきっかけを作るもの、旅を通じての経験から自分自身についてじっくり考える機会を作る企画、海外の人と文化を含めた日本のローカルとを繋ぐといったプロジェクトが発表されていきます。どのチームもメンバーの強みを活かしながら、スタートから企画が広がっていくステップまで、筋道を立てた案を展開しています。登壇された3名からはリサーチやプロジェクトを動かす人のエネルギーの大切さといったものから、何を企画の軸に据えるべきかなどより具体的なアドバイスをいただきました。

総評

最後に山本さんから「自分ごと」をキーワードにメッセージをいただきました。普段から接している中高生を例に「彼らは刺激に囲まれて、同じことを続けるのに困難を感じている。自分ごとでなければ続かないからこそ、そこに対する強い信念を持っていると思うんです。人を巻き込むのではなく、続けるための戦略としての新しい「自分ごと」が始まっている気がしています。」若い世代の新しい感覚はこの先の企画をする上で重要になりつつあるのではないでしょうか。数多くのプロジェクトの中心で活躍されている方々から貴重なお話をいただき、とても充実した時間となりました。皆さんありがとうございました。