PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「To be is To do」

プロジェクトデザイナー

金山 淳吾 氏Jungo Kanayama

PROFILE
1978年生。電通、OORONG-SHA/ap bankを経てクリエイティブアトリエTNZQを立ち上げ、広告、エンタテインメント領域にとらわれない幅広いプロジェクトを構想し、組織単位でオーガナイズ。2016年に渋谷区観光協会の代表として、渋谷区の観光戦略のプランニング、観光都市としてのプロジェクトデザインを実践。2018年には、渋谷区の都市成長をリードする組織として一般社団法人渋谷未来デザインを設立。2020年よりEVERY DAY IS THE DAYフェローとして参加。クリエイター、企業、行政を横断し、社会の可能性を拓くプロジェクトを多数推進中。一般財団法人渋谷区観光協会代表理事、一般社団法人渋谷未来デザイン 理事、一般財団法人Tokyo Art Acceleration 理事、一般社団法人シェアリングエコノミー協会アドバイザー、株式会社ラフアウト取締。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「To be is To do」

講義1

本日のプレックスプログラムは、初の登壇となる金山淳吾さんを迎えてお送りいたします。金山さんは幾つもの肩書きを持ち、その経験の豊富さが伺えます。そして自身の本業を「自分の好奇心」と表現しています。まずキャリアの最初は大手広告代理店にてテレビ番組制作に従事します。衛星放送という比較的小規模なメディア局だからこそ、自由度の高さを売りにできるのではと考え始めます。そしてコンテンツの面白さを前に出すことで、周りを巻き込む求心力がついていったと金山さんは言います。

講義2

衛星放送は若者が観る番組が少なく、苦心していた状況もあり、金山さんは「楽しいだけじゃ物足りない」というキャンペーンを立ち上げ、次の時代を切り開くポテンシャルのある人たちに取材し番組を作成します。そしてその際、取材した中の一人である音楽プロデューサーの小林武史さんと意気投合をし、OORONG-SHA へ転職することになります。当時、金山さんは広告の仕事におけるクリエイティビティやアイデアに対して、ノルマがあることに大きな疑問を感じていたと話します。お題を与えられ、そこから考え出す商業的なものではなく、音楽のようなパッションを基に制作をするリアルクリエイティブサイドに舵を切ったと語ります。

講義3

リアルクリエイティブでは「ひらめく力」と「好奇心」が大切であると金山さんは話します。クリエイティブワークでは「スキルを理解しようとする意志」と「なるべく情熱的な気持ちを忘れないようにする生き様」を両立させるのですが、その際に「ひらめく力」と「好奇心」がアイデアを生み出す源泉になるそうです。「Tobe is To do」なにより実践的行動に移すことが大事。本などで得られる知識(Book Smart)を、人が生活するためによく考えられてアウトプットされている街という場で得られる知恵(Street Smart) へとシフトさせることが、アイデアを形にするのだと金山さんは熱心に学生に伝えていました。

講義4

金山さん自身が行っているプロジェクト「SIW」を事例としてダイバーシティ、コレクティブインパクトという言葉を軸に講義は続きます。金山さんは大切なこととして「文明は進化していく」ことを皆が心に刻み、「文化は深化していく、深まっていく」というこの両方を踏まえることが未来に向けて豊かな街づくりを進めていく要因になるとのこと。そして「クライアント= 社会課題」として捉えることが社会に適切にコミットできる大きな要因であると言います。お話の中でクリエイティビティとは「Tobe is To do」、アイデアが出たら実践することの大切さを繰り返し説いている姿が印象的でした。

第2部:ワークショップ「ドラえもんの次のひみつ道具を発明する」

ワークショップ1

ここからはワークショップのスタートです。キーワードは「1812」。この数字はドラえもんのポケットに入っている道具の数だそうです。そしてお題は「ドラえもんの次のひみつ道具を発明する」です。学生たちは「ネーミング」、「機能」、「デザイン」を考えていきます。足し算、引き算、割り算、掛け算を使い考えていくとアイデアが出やすいとのアドバイスを受け、シンキングタイムに突入です。各チームに分かれ、アイデアを出し合ってもらいます。学生たちは皆に愛されるような新しいドラえもんの道具を生み出すことができるのか。期待が高まります!

ワークショップ2

シンキングタイムが終わり、各チームの発表に移ります。最初のチームは「モナカ割り」という道具の発表です。このモナカを2 人で分け合って食べるとお互いの感情が逆転するというもので、価値観が合わない時にお互いの気持ちを理解し合えるようになるという道具。金山さんからは、これを食べれば仕事が楽になりそうで良いね、との講評をいただきました。次のチームの考えた道具は「いやイヤフォン」です。自分の聴きたい情報と聴きたくない情報を、ダイヤルにして聴きわけることができる道具です。金山さんからは、ドラえもんに頼むほどではなく、より社会課題に即して深堀できれば面白い、との講評をいただきました。

ワークショップ3

次のチームの道具は「ご都合キャンディ」です。2 種類のアメがあり、1 つは「他人の見「ドラえもんの次のひみつ道具を発明する」083た目や発言が自分の都合の良いように見えるし聞こえるもの」、もう1 つは「自分の見た目や発言が他人の都合の良いように見えるし聞こえる」というものです。この案は今の社会をしっかり観察している良い案だという講評をいただきました。次のチームの道具は「ベッパー君」です。こちらの道具は食べたいものが表に写るT シャツで、これを着るとその食べたいものが別腹として食べられるようになり、太らず料理を楽しめるといった案でした。この案に金山さんはとても感心しており、優しさを感じるとても良い案との講評をいただきました。その他にも各チームが面白い案を発表し、学生たちの熱気が伝わってくるワークショップとなりました。

総評

ワークショップが終わり、最後に金山さんからの総評をいただきます。「『To be is To do』ということで、本当に行動しかないと思います。学んで学んで学んで、学んだことをアウトプットしないことは学んだことに対する罪だと思います。本や授業や日常空間から学んだことを自分の仕事や誰かのために活かすためのアクティビストになっていただけるといいのではないかと思います。いつか皆さんとお仕事ができるのを楽しみにしています。」今回の授業は学生にとってデザインに対するアプローチを再考する良い機会になったと思います。