PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザインのルール」

groovisions代表

伊藤 弘 氏Hiroshi Ito

PROFILE
東京のデザイン・スタジオgroovisions代表。グラフィックやモーショングラフィックを中心に、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッション、ウェブなど多様な領域で活動する。 1993年京都で活動開始。PIZZICATO FIVEのステージヴィジュアルなどにより注目を集める。 1997年東京に拠点を移動。以降、主な活動として、リップスライム、FPM(Fantastic Plastic Machine)などの、CDパッケージやPVのアートディレクション、100%ChocolateCafe.をはじめとする様々なブランドのVI、CI、『Metro min』誌などのアートディレクションやエディトリアルデザイン、メゾンエルメスのウィンドウディスプレイのディレクション、『ノースフェイス展』など展覧会でのアートディレクション、EXPO 2005 AICHI JAPAN 愛・地球博や農林水産省の映像資料でのモーショングラフィック制作など。2016年には京都の品々を販売するセレクトショップ「三三屋(みみや)」をオープン。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「デザインのルール」

講義1

本日のプレックスプログラムはグルービジョンズ代表でアートディレクターの伊藤弘さんです。当校では2回目の登壇になります。グルービジョンズに憧れてデザインの道を目指した方も多く、伊藤さんの話を聞きたいと本日も多くの学生が集まりました。それでは前半の講義からスタートです。本日のテーマは「デザインのルール」。POPで楽しく都会的なグルービジョンズのデザインにどんなルールがあるのか、興味津々です。

講義2

伊藤さんの言うルールとは、予算やレギュレーション等の与えられたルールではなく、自ら作るルールを指します。作品を見ながらどこにそのルールがあるのか解説いただきます。グルービジョンズの代名詞の一つとも言えるCDジャケットにもアーティスト毎のルールが定められています。それは時にはイラストや色の使い方だったり、時には印刷方法もあります。雑誌では置く場所を想定して、本来の表紙デザインのルールではない手法でデザインを行っています。

講義3

続いては展覧会でのルールです。元々が展覧会使用ではない広告グラフィックが比較的主流なグルビの展覧会では、床に並べるルールを設けているそうです。また、カラフルな作品が多いこともあって、色ごとに並べるルールで展覧会を構成しています。顔のパーツの元はすべて同じですが、髪形や性別・服装で変化をつけていくCHAPPIEはルールの集大成ともいえます。

講義4

今回はルールを中心にお話しいただきましたがルールと同時に対象そのもののトーンも大切にしている一つの要素だそうです。時にデビューから長年携わっているアーティストのアートディレクションに関してはあえて細かいルールを設けずに、その時々のトーンでデザインを構成しているとのことです。またアートディレクションを行う際には、デザイナーがおしゃれやカッコいいと言った基準を先ず外すという、伊藤さんなりのデザインへの向き合い方を細かく解説いただき前半が終了です。

第2部:ワークショップ「世の中にないモノやコトをデザインする」

ワークショップ1

後半のワークショップのテーマは「世の中にないモノやコトをデザインする」。このテーマは伊藤さんが日頃デザインを行う際にベースにおいているものだそうです。チームに分かれ、約30分のディスカッションタイムです。ほとんどが初対面のメンバーですが、皆でいきなり話し合うチームやまずは個々人で考える時間を作るチームと様々です。集中したディスカッションタイムが終了し、発表と講評の時間になりました。いくつか紹介していきます。

ワークショップ2

まずは「電気の無い電車」。電力のエネルギーの代わりに人が動力源になります。エクササイズルームも兼ねている車内では自然とエネルギーを確保することができます。「暗闇で行う陶芸」。手の感覚のみでモノをつくるアイデアです。「音の無いダンスクラブ」。光や揺れに合わせて踊るクラスです。「ない食堂」。具の無い餃子等、当たり前の調理ではないことで、新たな食べ方を考える食堂。もう一つは料理が出ない食堂、その分空間のバリエーションを提供するアイデアです。

ワークショップ3

「本体の無いタイマー」。花の蕾スタンプが一時間後には満開になるなど、時間が進むにつれてデザインが変わっていくというアイデア。伊藤さんからは、このアイデアには聞いているだけで楽しくなり、アイデアがどんどん浮かんで来ますねと絶賛。ここで伊藤さんから講評です。「アイデア的に面白いのがたくさんありました。でもアイデアには企画と同時に哲学が必要です。アイデアが面白いだけでは人は動いてくれないんですね。なので、そこにはなぜそれを行う必要があるのか?を含めた哲学が必要になります。」

総評

最後に伊藤さんからメッセージです。「デザインは、なくてはならないエンジニアリングに比べれば、なくてもいいモノもあると思っています。だからこそ、そのデザインやアイデアには思想や哲学などのあるべきコアな理由が必要となります。どんな小さいデザインでもわかる人には分かります。皆さんにはアイデアと同時に信念や哲学のあるデザイナーになってもらいたいです。」