PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「スマート化がもたらすデザインバリューチェーンの変化 I I」

amadana株式会社 代表

熊本 浩志 氏Hiroshi Kumamoto

PROFILE
amadana株式会社代表取締社長。株式会社リアル・フリートの創業者で、現amadana株式会社代表取締役社長。1975年宮崎県宮崎市生まれ。電気店の長男として生まれ、自他共に認める家電好き。大手電機メーカーにて、家電商品の販促企画、商品企画を担当。2002年9月に退社後、27歳で株式会社リアル・フリートを設立し代表取締役就任。2003年にはオリジナルブランド“amadana”を立ち上げ、ブランドマネージメントから商品企画、マーケティングを自ら担当する。2014年6月4日に「株式会社リアル・フリート」から「amadana株式会社」に会社名を変更。同年、白物家電世界最大手「ハイアール」のハイアールアジア株式会社とのパートナーシップに合意。同社のチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)を兼務。2015年にはユニバーサルミュージック社と“Amadana Music”を立ち上げ、世界に向けた新たな事業展開を加速させている。プライベートでは過去3度日本一を獲得した野球チームの監督という顔をもつ。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「スマート化がもたらすデザインバリューチェーンの変化」

講義1

本日のプレックスプログラムは、2回目の登壇となるamadana株式会社代表の熊本浩志さんです。普段は経営者向けや起業家向けの講演会などでお話をされている熊本さんから、“デザインバリューチェーンの変遷”についてお話していただきます。デザインを取り巻く価値は時代とともに移り変わっており、「デザインやクリエイティブを仕事に取り入れていく上で、必ず付きまとってくるのが“お金”。つまり、ビジネス抜きでは、デザインは語れない。日本の美大などでも、ビジネスやお金の流れについては教えられていない」そうです。でも、ビジネスとは“心が動けばお金も動く”という非常にシンプルなこと、という核心をついた一言に、学生たちも大きく頷きます。

講義2

ここで一旦、あらためて熊本さんの紹介です。熊本さんはamadanaの代表を務めながら、2014年からHaier(世界165ヵ国以上で生産・販売されている世界最大級の家電メーカー)のCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)も兼任しているそうです。27歳で会社を立ち上げた時の苦労話や、現在ご自身が代表を務めている草野球の強豪チーム(東京バンバータ)の監督業を通して、戦略を立てる力や勝負勘を養っている、という話に学生も聞き入っています。

講義3

更に「仕事は自分と同じ方向を見ている人とするべき」、「ビジネスは直感的に判断できる“即決力”が重要(持ち帰って考えよう、という企画やパートナーシップは大概上手くいかない)」といった、熊本さんのビジネスポリシーの一つ一つが、学生たちの心に響きます。では、いよいよデザインバリューチェーンの変遷についての説明です。熊本さんは会社を立ち上げたとき、「ものさしの競争になるビジネスはしたくない」と思ったそうです。例えばカミソリの○枚刃のように、スペックでの競争は価値がないと思ったそうです。そうでない会社を作るために“デザイン”での差別化を考えるようになったとのこと。ただ、現在は3つの変化(モノのデザインでは完結しなくなった、商品化プロセスが変わった、ツールの変化)が起こっているとのこと。モノのデザインだけではお金が儲けられなくなり、市場調査をしたからといって必ず成功するわけではなく、SNSなどの影響で人の心が顕在化している時代になっている。では、それを踏まえてどうしていくかを考える必要があるそうです。

講義4

昔は商品化⇒プレスリリース⇒市場に出す、というプロセスから、最近はプレスリリースすらしない。なぜなら、情報はこの10年で以前の1,000倍に増え、新商品にワクワクすることが無くなっているから、とのこと。そこで、プロセスそのものを変えてしまおうという“クラウドファンディング”が注目されているそうです。「将来のファンを作って、企画に巻き込んでしまう」クラウドファンディングの2つの例として、amadanaのレコードプレーヤーとモバイルバッテリーの話をしていきます。現在アメリカではアナログレコードが空前のブームになっており、日本でも多くのアーティストがこの時代にアナログレコードをリリースしているそうです。意外にもデジタルネイティブである若い世代にウケているという話に、ビジネスの奥深さを感じます。

第2部:ワークショップ「クラウドファンディングプロジェクトの企画」

ワークショップ1

今回は、前半のトークショーで出てきた“クラウドファンディング”を使ったワークショップです。実際にプロジェクトを企画し、これに対して参加者が欲しいと思ったプロジェクトに、お金に見立てたシール(1万円、5千円、3千円)を貼ることで、いくら集めることが出来るかを競うプロジェクトです。実際のクラウドファンディングでは、出資額に応じたリターンも考えるため、どういったリターンでアピールできるかもポイントになります。

ワークショップ2

学生たちの企画によって、実際にどれだけお金儲けできるかを体験してもらうという、熊本さんらしいワークショップが始まります。早速、各チームに分かれてのディスカッションです。全7チームでそれぞれ企画を考えます。企画がまとまり、各チームのプレゼンが始まります。自宅向けの自販機設置を行う「おうち自販機」、バーチャルで様々な世界を体験できる「DreamMaster」、同様の企画で「バーチャルグラス」という名称にしたチームもありました。更に出先で簡単にスムージーやフラッペができる「デトックスタンブラー」、短~中期的に都会と田舎の住まいトレードを行う「LifeTrading」、様々なワークショップをケータリングできるアプリサービス「ワークショップケータリング」、見栄を張るためのSNSの投稿やつぶやきを自動で行うアプリ「リア充ですけど何か?」という7つの企画が出揃いました。

ワークショップ3

全ての発表が終わり、個人で投資しても良いと思える企画(自身のチーム以外の企画)に、お金に見立てたシールを貼っていきます。全員がシールを貼り終わり、いよいよ一番金額が集められた企画の発表です。結果は、1位:LifeTrading、2位:リア充ですけど何か?、3位:ワークショップケータリングとなりました。熊本さんも、実は一番評価していたのがLifeTradingだったそうです。世界的に見ても、こういったビジネスはトレンドになっているらしく、「世の中にはお金がある」「田舎には空家がある」その余白(空間や時間)を埋める、つまり世の中にあるものを右から左に動かすことで利益が発生するビジネスは今時で良いと高評価をいただきました。

総評

全体的には、“伝え方”が惜しかったそうで、「目的と手段の話しをしっかりすること」「足りないことが何で、それを埋めるピースとしてこの企画がある」という話の組立が大事、とアドバイスをいただきました。ただ「投資してください!」だけでは誰も投資しないので、絶対ダメですとのこと。最後に熊本さんから一言。「ビジネスとは何が正しいのか全く分からない世界、答えが変わっていく世界です。目指すものが常に変わっていく中で生き残っていくことが大事です。ビジネスを是非楽しんでください!」