PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「住宅の設計」

建築家

長谷川 豪 氏Go Hasegawa

PROFILE
1977年 埼玉県生まれ。2002年 東京工業大学大学院修士課程修了後、西沢大良建築設計事務所勤務。 2005年 長谷川豪建築設計事務所設立、現在同代表。2009 ~ 11年 東京工業大学ほか非常勤講師。現在 スイス・メンドリジオ建築アカデミー客員教授。主な作品:桜台の住宅、練馬のアパートメント、森のピロティ、駒沢の住宅、日本デザインセンターなど。 主な受賞 :SD レビュー2005 鹿島賞、平成19 年東京建築士会住宅建築賞金賞、第24 回新建築賞など。

第1部:講義「住宅設計のプロセス」

講義1

本日は、住宅建築をはじめオフィス等も手がける建築家、長谷川豪さんをお迎えしての講義です。普段はスイスの大学でも教鞭を取る長谷川さん、独立し住宅を多く手掛けるようになった経緯やご自身の建築に対する考えから今までに手掛けた建築の紹介へ。「家としての機能はもちろん外さないようにしているけど、それだけでは窮屈に思う所がある。建築というのは自分たちの身体感覚を拡張するような役割が持てるんじゃないかと考えたい」と語る長谷川さんの建築は一体どのようなものなのでしょうか。

講義2

まずはいくつかの邸宅の紹介から。どの住宅の説明でも周辺の地図、街の写真、平面・断面図、建物の写真とスクリーンに順を追って映し出される為、街と家との関係を明確に意識でき「街の中に自分の身体感覚が広がってゆく」という言葉が強く印象に残りました。中でも東京のごみごみした街の風景というマイナスの側面を、外に張り出した階段で家の延長的な感覚として利用した建築は「ヨーロッパではできなくて、東京だからできること」という多くの分野のデザインで参考になる発想だったと思います。

講義3

続いて集合住宅設計の紹介です。集合住宅の問題点をバルコニーに見い出したこの建築は『バルコニーを住人の為に取り戻す』というプロジェクトでした。色々なタイプのバルコニーを設定することで、集合住宅は設計者から住人が見えないという問題や、建築を成立させる為に付いているだけという問題を、独自の角度から解消されています。この建築でも街と部屋との関係が意識され、バルコニーという外部空間を通して部屋の中にいながら街と動的な関係が生まれる設計がなされていました。その結果、不思議な奥行きのある集合住宅となったそうです。

講義4

解説の中で大量の模型の写真も紹介されました。「決めるのが嫌いで、比較するのが好き」という長谷川さんにとって模型は「日々違うことを考える自分たちの思考の記録として残っていてくれる、非常に頼りがいのあるパートナーになってくれる」とのこと。最後に二つの別荘建築の紹介です。一つ目は新しい小屋裏の使い方を提案した家の中に家型の部屋が詰まった別荘。二つめは湿気対策の高床を6.5 m の高さで作り、それ自体を森に囲まれた新しい空間とした別荘。どちらも身体感覚と自然の関係を最大限に引き出した長谷川さんらしい設計となっていました。

第2部:ワークショップ「小さいをテーマにした住宅の設計」

ワークショップ1

ワークショップは『小さな家を考える』です。各々の作品に対して受講者が投票し、人気の高かったものを長谷川さんに講評していただきます。「小さいからこそできること」というテーマに沿って発表された作品は、自分の家に欲しいアイデアだったり、とにかく小さくしようとしたりと個性的なものばかり。いくつもの小さな家を集め、キッチン等のスペースを共有するという家には「ひとつの家の中で全部を満たそうとすると大したことはできないけど、みんなで共有すると考えると色々と省けてリビングなんてほとんど都市のような空間になる」との講評が。

ワークショップ2

次に発表された、小さな家の隙間に小さなスペースを沢山作った家については「こういう考え方は結構好きで、建築が絶対持ってしまうものをちょっと操作して、部屋よりも重要な物になってしまうような、価値の転換が起こると面白い」というのをご自身のピロティの建築で設計した空間を例にして講評されていました。続いて部屋を二段ベッドにし、二階をまるごとベッドにしてしまうという作品。トルコなどのベッドは実際にそれに近いアイデアがあると長谷川さんから紹介されます。「広さでいえば一畳でも、100 % 布団って楽しい。100 %はやっぱりすごい。デザインできてないと若干貧相だけど」というコメントに教室が沸きます。

ワークショップ3

その後も発表が続く中、いくつかの作品にあった指摘が「建築っていうのは一点豪華主義では面白くない」というもの。プッシュしたいアイデアは魅力的でも、家全体で見た時にそれを生かしていない作品も多かったようです。「建築は意味を重ねていくのが大事。意味が重なってくるとちょっとしたことが起きてもびくともしない、しなやかさを持った空間になる」という言葉が、講義で紹介されたご自身の建築から何度も見て取れました。一方でミシンを踏んで縫った布が滑り台を落ちて行くという家は「絶対自分では思いつかない。面白い」との評価も。

総評

作品の講評の後、「家の設計というと、中からまたは外から考える人が多いけど建築はそれを同時に考えるのが大事。中と外の調整をするのが一番面白い」という総評をいただきました。「家というのは、みんな自分のイメージがあって、家をイメージできない人間はいないと思う。みんなが建築に進むわけではないと思うけど、家について妄想するのは、絶対に楽しい」という長谷川さんの言葉は、依頼主にとってもご自身にとっても『面白い』を追求する、一貫した思いが詰まっていると感じました。