PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「コンセプト・プロセス・デザイン」

インテリアデザイナー

中村 隆秋 氏Takaaki Nakamura

PROFILE
インテリアデザイナー 1964年東京都生まれ。
高取空間計画を経て、97年ナカムラデザイン事務所設立。
『主な仕事』R25 cafe、ナインアワーズ京都寺町、日産自動車デザインセンター「info.kitchen」、丸善丸の内本店、丸善ラゾーナ川崎店、オムロンヘルスケアショールーム、ナインアワーズ展、変化する本棚、受賞JCDデザインアワード大賞、グッドデザイン賞 金賞、DFAアジアデザイン賞 大賞、DDAディスプレイデザイン賞 優秀賞、照明学会 照明普及賞 優秀施設賞

第1部:トークショー「コンセプト・プロセス・デザイン」

講義1

数多くの商業空間のデザインを手掛けているインテリアデザイナーの中村隆秋さんは、プログラム講義冒頭、デザインにおいて常に心がけていることとして「何を(コンセプト)、どのように(プロセス)、表現(デザイン)するのか」を挙げられました。まず、対象の用途・目的は何なのか、何を意味するものなのか? どういった環境にあるのか特徴を的確に捉えることから始まります。いよいよ講義の始まりです。

講義2

次に、どのように表現するのが最も効果的な手段・方法なのかを探り出し、カタチにしていきます。
つまり、本質を見抜くことが最も重要になってくるのです。では、本質を見抜くためにはどうすればよいのでしょうか? 対象となるものを近くから見てみたり、遠くからみたりと様々な角度から捉え、考察してみることが大事とのこと。すると、何がデザインとして必要なものなのかが見えてくるとナカムラ講師はおっしゃいます。

講義3

2010年のグッドデザイン金賞を受賞した『9h(ナインアワーズ)京都寺町』。柴田文江氏、廣村正彰氏、そしてナカムラ講師がインテリアデザインを手掛け国内外で話題になったプロジェクトを事例にして講義を進めるナカムラ講師。
従来のカプセルホテルというと“どうせ寝るだけだから”など積極的に利用するのではない宿泊施設という、敬遠されがちなイメージが強い。根付いてしまったネガティブなイメージをどのように再構築させ、新たな価値を生み出したのでしょうか。

講義4

まず、カプセルホテルとはどのような機能を持ち、何を行う場所なのか用途の本質を考え抜くことから始まりました。結果、1時間のシャワー、7時間の睡眠、1時間の身支度ができる場所と定義付け、コンセプトを『シームレス』としました。共有スペースからプライベートスペースにかけて照明や色彩設計に変化を施したり、光で目覚めを促す寝室環境システムを導入したり。ホテル全体の統一感を崩すことなく、利用客をスムーズに誘導できるようなオペレーションの流れをデザインすることができたとのこと。

講義5

「最初にコンセプトが明確になっていたため、ゴールへのブレは一切ありませんでした。着地点を定めることができたので、マテリアルやカラースキームの選択というよりは、デザイン的にふさわしい条件を求めると、自然に絞れました」 また、本質が明確になっているため、余分なものを排除することもでき、そのかわりに機能やアメニティの質を高めることができたとのこと。「本質を知ることで表現する方向性も定まり、コンセプトやメッセージといった見えないものが見えるものに可視化され、より効果的で価値のあるデザインとなった」と受講に講義してくださいました。

第2部:ワークショップ「 +αの機能を持つ店舗のデザイン」

ワークショップ1

ワークショップでは、先ほどの講義をふまえ、「空間プロデュース」をテーマに、本質を見抜いた上で、何かをプラスして新しい価値を生みだすという思考を実践的に学びました。
はじめに個人ワークとして、コンセプトを定め、場所やターゲットを決め、どのような空間を展開していくか考えます。限られた時間の中でアイデアを出すことに頭を悩ませ、手が止まる受講生を数多く見受けられましたが、時間が経つにつれてペンが進んできた様子です。

ワークショップ2

次に4~5人のグループになり、それぞれが自らのアイデアをプレゼンした後、最終的にグループの中から代表プレゼンテーターを決め、受講者全員に対してプレゼンするという流れで行います。
代表プレゼンでは、待ち時間を楽しくするために「病院の受付空間内に旅行カウンター」を設けたアイデアや、町の良さを知ってもらうために「地域の不動産屋+観光案内カフェ」など様々なプレゼンを行い、ナカムラ講師にひとつずつ丁寧に評価していただきました。

講評

この日、もっとも受講生から声が上がったのがナカムラ講師の講評。受講生のアイデアに更に付け加える形に出てくるコメントに一同驚きました。
また、当研究所の平川ナオミ学長も参加し、生徒とは違ったプロの視線に裏打ちされたプレゼンテーションに、教室は大いに盛り上がった様子でした。
プログラムの最後に、「見抜いて、考え抜いて、やり抜くことが大切」とおっしゃられた講師の言葉に、多くの受講生が実感したようです。
Text by 編集&ライティングコース
村田知子