思いやりがあり、寛容な社会を実現する。
大学時代、1年間休学し、バックパッカーをしていました。インターネットもスマホもない時代だったので、情報は本か、現地で出会った人の言葉だけでした。そこで気づいたのは、自分は結局、食べることと飲むことに強く惹かれているということでした。そして何より、おいしいものを誰かと分かち合う時間が好きだということ。それが、今の仕事の原点です。
帰国後は大手企業に就職しました。組織の一員として働いている自分も決して嫌いではありませんでしたが、どこかで「肌触り感」のある仕事がしたいと思っていました。
20代後半で友人たちと起業し、カフェをつくりました。今となってはスタートアップやカフェで独立というのも珍しくはありませんが、当時はまだその風潮が弱い時代でした。当初は未熟で、理想通りにはいきませんでした。それでも、カフェは人が集まり、人と人が触れ合う機会をつくる場所である、ということを学びました。
現在はWATとして、地域や公共施設、オフィス、文化施設などでカフェを企画・運営しています。私たちが目指しているのは、「思いやりにあふれた寛容な社会を実現する」こと。そのために、誰もが自然体でいられる居場所をつくり続けています。
お洒落だと言っていただくこともありますが、そこが目的になることはありません。強い主張や排他的な美しさではなく、そこにいる人が肯定される空間を目指しています。過剰な演出よりも、ほどよい余白。特別扱いよりも、誰にでも開かれていること。小さな積み重ねが、社会の寛容さにつながると信じています。
AIが進化する時代だからこそ、人間そのものの在り方が問われると思っています。アイデアは誰でも手に入れられる時代です。だからこそ、何を選び、どう続けるか。その姿勢そのものが価値になる。振り返ると、ヒントは常に自分の原点にありました。何に心を動かされてきたのかを見つめ直し、それを信じて積み重ねること。それが遠回りのようで、最も確かな道だと感じています。



