自ら行動し、人とつながる姿勢をもって。
僕は東京生まれですが、父の転勤があり群馬や新潟の自然豊かな環境で育ちました。田んぼでオタマジャクシやドジョウを捕まえたり、食虫植物を絵に描いて図鑑みたいに本にしたり。絵を描くことと、生き物が大好きでしたね。大学は生物学を専攻しましたが、生き物と触れあいながら学ぶわけではないことを知り、卒業後はもう一つの好きな分野である絵を仕事にしようと、イラストレーターを志しました。しかし、趣味で描いていた程度では歯が立たなくて、本格的に絵を学ぼうと思い切ってアメリカ留学を決意したのです。在学中は、とにかく課題をこなすのが大変で、寝ずに絵を描くような日々を過ごしましたね。英語が堪能ではありませんでしたが、絵が良いと周りの人たちが話しかけてくれたり、学科長が仕事を紹介してくれたり、自分の描く絵で、人とつながる原体験がありました。
帰国後も仕事が仕事を呼ぶようなことがありましたが、今思うと10年ほどは軌道に乗らず、辛い時期を過ごしました。しかし、"辛さ"よりも「絵を描くことが好き」という気持ちがいつでも勝っていたように思います。「描くことが何よりも楽しい」「自分にはこれしかない」、だから続けることができ、そんな時期を乗り越えることができました。
転機となったのは、画風の転換です。アメリカで学んだ油絵のタッチは、日本の市場に合わないと気づき、デジタルで版画のような質感を表現する画風に辿り着いたのです。そこから仕事が一気に増えたような気がします。表現の視点にも変化がありました。そのヒントになったのが俳句の考え方です。西洋では作品に理由や意味の説明を求められますが、日本はもっと感覚的。特に俳句は余計な言葉をそぎ落とし「五・七・五」に凝縮する潔さがあります。その精神を絵にも取り入れ、「単純で客観的に、見たままが伝わる表現」を追求するようになりました。
実際に俳句の句会に参加するようになったのですが、そこで出会った作家や装丁家など多くのクリエイターとのつながりも、また仕事のご縁となっていきましたね。仕事のつながりは、「人とのつながり」です。運も同じで、人とのつながりが良い運を掴むきっかけになります。良い運を待つのではなく、自ら行動してチャンスに出会う確率を上げる。クリエイターには、そんな姿勢が必要です。なるべく多くの人に出会い、そのつながりをどうぞ大切にしてください。



