PROFESSIONAL MESSAGEプロフェッショナルメッセージ

坂本 紫穗Shiho Sakamoto

PROFILE
オーダーメードの和菓子を作品として制作・監修。日本国内および海外で和菓子教室やワークショップ・展示・レシピの開発を行う。「印象を和菓子に」をコンセプトに、日々のあらゆる印象を和菓子で表現し続ける。2014年映画『利休にたずねよ』公開記念、公式タイアップ茶会にて和菓子監修。 2016年ミラノ・サローネ、サンワカンパニー社の展示ブースにて和菓子のデモンストレーションを行う。2017年New York, Food Film Festival 2017にて和菓子制作映像『WAGASHI』がBEST FOOD PORN AWARDを受賞。2019年創作和菓子の宗家 源 吉兆庵よりコラボレーション和菓子をシリーズで発売。2021年Louis VuittonのVIPイベントにて和菓子制作。2021年毎日放送『情熱大陸』出演。

仕事に相応しいのは、課題があって、居心地がよくて、続けられるか。

私は、子供の頃も20代も、好きで没頭できることがほとんどありませんでした。学校も部活も何か違って、取捨選択の捨てる作業をずっとしていた感覚です。強いて言えば、実家にいた頃は母とお菓子作りをすることが、数少ない楽しみでした。

社会人になりIT業界でバリバリと働いていたのですが、その仕事がなんとなく自分には向いていないという感覚はずっとありました。そのうちに、私が心惹かれる仕事は、こぢんまりとしていて個人的なものだと気づいたんです。それでお料理や写真の学校に通いました。30歳になる前に自分の進む方向を決めないと、と焦っていたんですね。しかし、どれもしっくりきませんでした。そんな時期に和菓子の夢を見たんです。それがきっかけで、和菓子に光るイメージを抱き、素直に作り始められたことが最大の転機。

今思えば、食べ物が好きで、せっかちで、心配性という私の性格は、和菓子作りのプロセスとすごく相性がよかったのだと思います。また、田舎育ちで、草木の香りや季節の風情に親しんでいたことが、都会での活動の強みになりました。今でこそ、和菓子作家として少しずつ認めてもらえてきていますが、駆け出しの時はとりあえず名刺を作って、恐る恐る「和菓子の作家をしています」と自己紹介してました。コツコツ投稿していたSNSを見て「お茶会にお菓子を作って」と、チャレンジする機会を与えてくれた方々もいて、そうしたご縁のおかげで諦めないでこられたと思います。

自分を知っていただくために、地道な活動をするしかありませんでしたが、そのやり方に大きな恵みがありました。今、私は和菓子作家として活動することにある種の使命を感じています。和菓子作家の仕事の在り方については、いつも悩んでいますが、誰も答えをくれない中で、揺らぎながら珍道中を楽しむのは人生の醍醐味だと思えるようになりました。

仕事を決める際に重要なのは、そこに課題があって、自分にとって居心地が良くて、かつ続けられるか、ということ。仕事にするには安定しなそうだとか、個人の趣味の延長かもしれないと思うことでも、自分が「これだ!」と思ったら、まずはやり続けて、少しずつ認められて、信頼を得て、次なるチャレンジをして。そうした自然な循環を作っていくことが大切だと思います。将来のためにデザインを勉強しようと思うのであれば、「いつかこうなれたら…」という理想のイメージを持って、コツコツ真っ直ぐに続けてほしいです。

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