PROFESSIONAL MESSAGEプロフェッショナルメッセージ

柴田 映司Eiji Shibata

PROFILE
テコデザイン有限会社代表。セールスエンジニアとして自動車、家電製品等の設計に携わった後、(株)テコに入社し、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、ディスプレイ等の設計に携わる。2004年、TEKO Design設立。2007年Tokyo Desigers Week Design Premio授賞。2008年、100%Design London招待出展。2009年、One Good Chairコンペティション(ラスベガス)ファイナリスト。2011年、グッドデザイン賞受賞。書籍「VW Designs」。東京デザインプレックス研究所講師。

デザインを始めるのに遅いなんてない。今の仕事はデザイナーとしての個性になります。

デザインに目覚めたのは、実は遅くて20代後半の頃、施工の仕事をしている時でした。もともと作ることは好きだったのですが、デザインそのものを考えることに興味を持ち始めたのです。「自分が作っている現場をデザインした人がいる。ならば今度は自分がデザインを考える立場になってみたい」、そう思いデザインの学校に入ったのです。スタートが遅かった分、枠に捉われないで何でもやろうと思っていました。気になるクリエイターがいれば、ジャンルを問わず講演会に通い、質問も積極的に行いましたね。「自分はまだまだだ」、「何にも知らない」、という意識が常にあって夢中になって学びました。そして、そのことは今でも変わりません。少しでも自分のデザイン力に繋がるなら、なんでもチャレンジしたいと今も強く思っています。そして、自転車のデザインをしたことがない自分が、ハンドバイクをデザインをすることになったのです。

人の人生に大きく関係するデザインだけに悩むことや困難ももちろん多かったのですが、たった一人のためのものをつくるというデザイナーとしての貴重な経験ができて、嬉しかったですね。そしてその人ひとりのためのデザイン事例が、多くの人にとっての有益なデザインに変わっていくことを実感できたのです。僕は、常に客観的に今の時代を観るようにしています。インテリアやプロダクトをデザインする際にも必ず、今の時代にとって最適なものは何か、ということを考えるのです。また、企画の段階で、完成して人の手に渡るまでのコストや、ものづくりに携わる職人さんのことまでも自然に考えています。そう考えるのは、僕が施工現場で働いていたサラリーマン時代の経験があるからです。そして、その経験こそが、僕にしかできないデザインに繋がってるのかもしれません。

デザインは、社会や人と関わりあうものです。ですから、社会人として身につけた知識や経験、学生ならば専門領域や趣味に至るまでの体験を大切にしてください。デザイナーとして社会に出た時、それらが誰のものでもない個性になるでしょう。特にキャリアチェンジを目指す方は、今の仕事にいかにデザインを絡められるかを考えてみてください。きっと繋がるものがあるはずです。遅すぎるなんてことはありません。僕も少し回り道しましたが、逆にそれが良かったと思っています。