PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「インサイトガイドという視点」

アートディレクター/エディトリアルデザイナー

岡本 一宣 氏Issen Okamoto

PROFILE
アートディレクター、グラフィック・デザイナー、出版プロデューサー。1951年長崎市生まれ。1974年武蔵野美術大学造形学部卒。1979年グラフィック・デザインオフィス岡本一宣デザイン事務所を設立。1992年にはビジュアル・コミュニケーターズオフィス岡本一宣企画室設立。2010年にはNPO法人ナガサキベイデザインセンター共同設立。事務所設立以来、出版メディアである雑誌、書籍、写真集、企業PR誌、企業のブランディングデザインなどグラフィック・デザインに関わる全て、スタッフとともに制作活動を行っている。著書に「岡本一宣の東京デザイン」「岡本一宣のPure Graphic」(美術出版社刊 現CCC)がある。出版プロデュース書籍として「長崎インサイトガイド」「安藤忠雄インサイトガイド」「直島インサイトガイド」「高野山インサイトガイド」他、インサイトガイドシリーズが講談社から刊行中。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義 「長崎という教材から学んだこと」

講義1

本日のプログラムは、アートディレクター・エディトリアルデザイナーの岡本一宣さんをお迎えしてお送りいたします。岡本さんは、インターネットやアドビのソフトウェアがない時代からデザインに関わってこられ、当校の学生にもファンが多いことから今回のプログラムが実現しました。今回は、岡本さんの地元である長崎の観光名所を紹介している書籍「長崎インサイトガイド」についてのお話を中心に伺っていきます。

講義2

長崎インサイトガイドの企画は16年ぐらい前に始まったと話す岡本さん。「いろんな国に旅をしたり仕事をしてきてから長崎に帰ると、長崎にはたくさんの観光コンテンツがあることに気づかされるんです。ところが、まあ平たく言えばダサいんですね。デザインの力というかメディアの力で、なんとかブランディングできないだろうかと思ったんです。」地下鉄のマップやチケット一つとってもチャーミングでポップでかっこよかったヨーロッパのように、小さいことから何かできないだろうかと考えたのが始まりだったといいます。

講義3

物をデザインして提供する形を変えることによって、人々に感動を与えることができるのではないかと仮説を立てた岡本さんは、2010年に長崎で一般社団法人を設立。そこを拠点に行政に関わる仕事を始めることになります。「せっかくたくさんの観光資源がある長崎なので、歴史の勉強をするみたいな難しいものにするのではなくて、その時代の人間の鼓動を感じることができるような内容にしたくて。インサイトガイドとしてそれらを一冊の本にまとめて、観光客の方々とコミュニケーションを図れるようにしました。」

講義4

長崎インサイトガイドの他にも、様々な施策を通して長崎をブランディングしている岡本さん。その中でも興味深い施策の一つが、長崎のシビックプライドマーク(都市に対する市民の誇りを指すシンボルマーク)の製作です。ニューヨークの「I♡NY」やアムステルダムの「Iamsterdam」を参考にして出来上がった「ngsk♡ai」のマークは、お土産屋さんで様々なグッズに展開されたり、地元の議員の方がバッヂを身につけたりもされているそうです。

質疑応答1

ここからは学生から岡本さんへ質疑応答の時間が設けられました。最初の質問は、本日見せていただいた動画について。「いろいろなところから文字が出てきたりして、まるで本を読んでいるかのような感覚になりました。岡本さんは映像を作る際にどのような視点で作られていますか?」「エディトリアルデザインは1枚の絵で感動させる必要もあるけれど、全体の展開や空間で感動させることも重要です。映像で言うと、撮るときにパーンとズームをしない。カットとカットの間を説明しないで行間を想像させるほうが、見る人は想像しながらドキドキできると思うので。面白いマンガにもほとんど説明シーンがないですよね。」

質疑応答2

続いては「レイアウトの引き出しの増やし方はありますか?」という質問が。「何もしない。何もしないで整理をします。整理をすることでレイアウトの間が出てくるんです。あまり勢いをつけようとか感情を盛り込もうとしないで、整理をして綺麗に並べる。完成を予測しないで、ずっと展開だけを考えて、それをそのまま何も飾らないで並べる。ジャンルごとにグルーピングして、例えば写真集だったら人物、景色、動物、食べ物、寄りの写真、引きの写真というように整理整頓して、無責任にいいものを選ぶんです。整理整頓が得意な人はデザインが得意だと思います。」

第2部:ワークショップ 「シビックプライドマークを考える」

ワークショップ

後半のワークショップでは、講義でも話に上がった「シビックプライド」を学生それぞれが考えます。「自分の街でもいいし、国でもいいし、家族でもいい。どんなコンセプトにするかが重要です。」長崎県対馬市出身の学生は、対馬の「馬」と海を組み合わせたマークを提案。他にもドイツの「Germany」の「many」を強調することで多様な文化を表現したり、長崎県佐世保を「葉」の象形文字を使って表現した学生もおり、岡本さんは一人ひとりに対して丁寧に講評をしてくださいました。

総評

最後に学生へのメッセージ。「楽しい仕事にするためには結構やることがたくさんあって、1つのアイデアを通すのに50件もの使えるアイデアを出さなければいけないっていう辛い仕事もあるんだけど、ただそれが出来上がってクライアントや仲間と喜びが共有できた時は本当に幸せで疲れも吹っ飛びます。是非そういう機会を見つけて仕事になっていくといいですね。頑張ってください。」丁寧にデザインと向き合い続けてきた岡本さんの言葉に、教室は大きな拍手に包まれました。岡本さん、ありがとうございました!